男子誕生日で花言葉(アカセカ) 2017/07了
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「あれ…?」
路地の向こうで見た姿は、よく知る姿。
甘いミルクティーカラーの髪色に、芥子色のカーディガン。
私のよく知る愛しい彼の姿だ。
どうしたってこんなところに?
あの路地の先はバー街しかなかったように思うけれど。
気になった私はそのままこっそりと後をつける。
暫く街灯を反射する石畳を歩いた先、派手でセンスの悪い看板の前で立ち止まった彼の向こうには、見知らぬ女の子が一人。
あっと思った時には既にその女の子は漱石君に抱き着いていた。
「な、に」
漱石君もなんともない感じで受け止め、そうして頭に手まで置いている。
二人はとても仲のいい恋人同士のように見えるではないか。
私は頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受けて、くらくらする。
そのまま、見ていられなくなって足音を立てないように静かにその場を後にした。
路地から足早に大通りへ出て、絡繰り車が走る道。
何もかもがぼやけているが、一切涙の気配はない。
漱石君、私のこと好きって言ってくれていたのになあ。
あの女の子と同じくらい好きと言う事だったのだろうか。
平等に好きなの?
どうしてあんなに穏やかに抱き合っていたの。
どうして頭を撫でていたのだろう。
猫を撫でる手付きで、私の頭を撫でていたその手で、彼女の頭も撫でていた。
「ああ…漱石君も、所詮は男だったのね」
巷で溢れ返る恋多き男たちと同じくして、貴方も所詮、不思議そうな殻をコーティングしただけのただの男だったのだ。
そんな男に騙されて幸せに笑っていた自分にも嫌気がさす。
漱石君から貰った靴を脱いで、ペタペタと石畳の上を歩き、貰った靴を石橋の上から大きな川に向かって投げ捨てた。
「さようなら、可愛い恋人」
【隣にいた美しい乙女に現を抜かすあなたには失望をしましたの】