キバ(nrt) 2013/10了
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「のぞみー!あんたは彼氏呼んでないのー?」
「呼んでないってーかいないっての」
「愛してるよ親友!」
「調子良すぎなんだけど。つか知ってるでしょーよ。わざわざ聞かないでよ」
文化祭でガヤガヤと騒がしい学校で、粗方の仕事が終えた矢先に友達のイトが話し掛けて来たと思えば、そのままのノリで抱き着いてきた。
周りが彼氏やらなんやら呼んでいるため、彼氏いない組は友情万歳!な変なテンションである。しかしそれも致し方なし。何て言ったって女子学生の本文は勉強より恋愛なのだから。
「でものぞみはなんで彼氏を作んないかなー。こないだ告られてるとこ見たけど断ってたし?」
「覗き魔か」
イトの不躾な発言に対して三白眼で睨みながら、二人で屋上へ続く階段を上る。
屋上は通常通り開放されているが、出し物は何もない。基本的に教室かグラウンドで何かしらの催し物をしているだけで、屋上はいつも通り、人の気もがらんとしている。
屋上がなんの装飾も施されていないのは万が一何かがあったときのために忍の方々の邪魔にならないように、とのことだった。
いつもより騒がしい学校は、少しだけ居心地が悪い。
「違うよ!たまたまだって、たーまーたーまー!」
大きな声で喚くイトは、普段より2割増くらいにテンションが上がっている。
いつもならこんなにバカみたいなテンションで話さないイトを横目で見つつ、屋上に続く重たい扉を開け、フェンス近くに腰を下ろす。
やっぱり見事に誰もいない。
遠く下からは、呼び込みの声が飛び交っている。屋台系は売り切らないと後が怖いから必死だ。
「ああはいはい、そうですか」
ガサガサとビニール袋を漁り、中から板チョコを出して開ける。ふわりと甘い匂いが広がって少しざわついていた気分が落ち着いた。板チョコをまるまるかじるのが最近のマイブームで、ポキリ、とチョコを噛み割った。
元々午後は仕事がなくて好きなように回っていたが、粗方回り終えてしまったためと、少し人疲れしたのもあって屋上でお菓子パーティーをすることにしたが、当たりだったようだ。
火影岩が目前に望める屋上はある意味で秘密の観光スポットでもある。
「でもさぁ?ほんとなんで?好きな人でもいんの?」
イトがイチゴミルクを飲みながら訊ねてくる。パッケージには、火の国一甘い!と書かれているが、基準なんてどう決めたんだろうか。
「んー…?いるねぇ」
イトのいる方からズゾ、と変な音がきこえた。ストローで飲み物がないところを吸ってしまったのだろう。
「げほっ、…おま…ナチュラルに言い過ぎて吃驚だわ」
違った。変なとこに吸い込んだんだ。
イトは一度噎せたせいか、文化祭テンションじゃなくなり、いつものイトに戻った。
煩すぎないし、キャピキャピした感じのノリが嫌いだったからこっちのがいい。
「えーだって隠すことでもないし?」
「そうだけどもそんな簡単に言うとは思ってなかった…私知ってる?」
「んー知らないかなぁ…?あ、忍だよ」
四つの火影岩を見ながら答える。
風が吹いて、心地良い。
校庭では未だに呼び込みの声が聞こえて、少し騒がしい。
「…忍かぁ。私知らないかな…上忍じゃないでしょ?」
「うん、下忍。同い年」
「それはしんねーわ。でも、そっか…忍者ねぇ…」
チラ、と横を見れば何か考えている顔。
アプロチョコを口に入れてから、少し笑ってみた。
「言いたいことはわかるよ、やめといたほうがいい、でしょ?」
「…まあ?一般人よりかは日常的に死ぬ確率数倍高いからねぇ…」
幸せになっても泣くのはあんたよ、なんて諭してくれた優しい友人に、返事の代わりとして五銭チョコを渡しておいた。