男子誕生日で花言葉(アカセカ) 2017/07了
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―雪深く積もり足跡が全て産まれては消えていく日。儚くも雪に混じって白い花が顔を出していた。これを摘み取り私の一番大事な人へと思い持ち帰る。
つらつらと可愛らしい文字で書かれている一節を読み、ふふ、と笑みがこぼれた。
定家が「愚記」だと言っていた日記を、私は静かに読み耽る。
30年以上の日常の様々が書き記されているこれは、呼んでいると情景が蘇るものだった。
雪深い日にわざわざ私の所へ来て、何事かと思えば鼻頭を真っ赤にした定家が私に白い花を突き付けたのはなんだかもう恥ずかしいやら嬉しいやらで思わず私はボロボロ泣いてしまったのもいい思い出だ。
―太陽が沈み、二度とその顔を見せなくなって幾年。従兄弟が言うには太陽の巫女が太陽を取り戻す儀式をするために各国を巡っているらしい。太陽の巫女。一度お目にかかりたいものである。
「ふふ、貴方は直ぐにお会いできていたじゃない」
可愛らしい巫女様だった。
そうして巫女様がまたアマツカミ様を呼び戻す旅に出たのも直ぐだった。
定家は、巫女様のお持ちになっていた太陽の御玉に夢中になっていたな。
美しい首飾りであると。
あまりに褒めるものだから、何故だか私、首飾りに嫉妬してしまって機嫌を損ねたこともあった。
慌てて私のご機嫌取りをする定家が可愛くて愛しくて。
「…定家」
つ、と綴られた墨をなぞる私の指先が止まる。
視界がぼやけてしまい、定家の味のある字が読めなくなってしまう。
「…定家…定家…私、幸せよ…貴方が息衝く場所にいられて…けれど定家…ただ一つ不満を言うなら…」
パタ、パタと涙が音を立てて日記に落ちる。
「愛しい」と書かれた文字が滲んでしまった。
落ち着きのある優しい声で、「美しい涙だ」と聞こえた気がする。
ぽかりと胸に開いた小さな隙間を閉じる術を、私は解らないまま泣き続けた。
【あの日私は幸福だった、今は名も知らぬ寂寥感に襲われているの】