男子誕生日で花言葉(アカセカ) 2017/07了
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「定家様、今日は歌会ではなくて?」
のそりと御簾を上げて入って来た定家に、私は驚く。
綺麗な顔は能面の様に表情がない。
全く何があったというのだろう。
無言で私の御簾の中に入り、そうして無言のまま私の隣に腰を据えた。
烏帽子を置いて、はらりと落ちる勿忘草色の髪が顔にかかっても珍しくなんとも動かない。
そっと手を伸ばして、顔にかかる髪を掬い、耳にかけてやるとやっと定家は私の顔を見た。
「先程、客星を見たのだ。大きさは歳星くらいの…」
浅葱色の眼が揺れる。
少しばかり動揺しているようだ。
ちょっとおかしくて、私は思わず笑ってしまった。
すると定家はむすりと口をへの字口にして、口を隠す私の扇を奪い取る。
「何が可笑しいのだ」
「いえ、だって…客星は不吉の予兆だとか言われてますけれど、私にはとても綺麗な物に見えますの」
それにこの前も、客星が見えたと言って定家は大事な会合をすっぽかして私の元へ来たではないか。
私にとっては不吉の予兆ではなく、まさしく吉報。
けれど貴方がその星の流れ落ちるのを怖がるのならば、私は貴方を安心させるためにずっとここにいる。
「流れ落つる星の尾鰭が、私には定家様の涙に見えますれば、私はその涙をお掬いして差し上げますよ。私には流れる星は定家様そのもので御座います」
「…差し詰め、客星はお前にとって私の到来を告げる予言星と言う事か」
「まあ。定家様がそうお思いになられていらっしゃるのであればそうですね。幸せを教えてくれる星で御座います」
歌会にも、会合にも、出席せねばならない場所など沢山あるというのに、その星を見ただけで全てを捨てて私の元へ来ると言う、貴方が愛おしくてたまらない。
「ふふ、前もこんな風に会いに来てくださって。私は星に感謝せねばなりませんね」
「何を…お前が望むのなら、私は毎日通うぞ」
「それは嬉しいお言葉ですこと」
そっと私の扇を離して、私の手を握った定家様は、静かにその綺麗な指を私の鴉色の髪に絡め、浅葱色の瞳を閉じた。
【沢山の小さな思い出の一つずつが星屑となり私に幸せを告げる】