キバ(nrt) 2013/10了
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家の前に立って、すぅ、と息を吸う。ちょっとだけ雨上がりの空気が冷たくて気持ちがよかった。
吸った息に声を乗せて、二階の窓へ向けて叫ぶ。
「キーバー!」
私の声で、キバのお家の屋根に乗っていた数匹の雀が飛び去る。
それと同時に、家の中からはなんだか凄まじい音がして数十秒後、窓が勢いよく開いた。
「毎日毎日朝っぱらからうっせーな!」
朝の時間、学校に行く前に犬塚家の前に立って道路からキバの名前を叫べば、道路に面する二階の部屋の窓からまだボサボサの髪のまま、顔だけを出してキバが叫び返してきた。
「おはよー!私もう学校行くよー!」
「勝手に行きゃいーだろーがよ!一々報告しなくていいっつーの!」
キバは超絶不機嫌顔だ。
寝起きの機嫌が最高潮に悪いのは昔からだ。
しかしその不機嫌顔すら格好良く見えてしまう私は、かなり重症で、怒鳴るキバなんてなんとも思わない。
ニヤニヤしながらキバの寝起きの顔を道路から眺めていると、庭から赤丸が飛び出してきた。
「赤丸!」
キバが二階から叫ぶ。
「わん!」
「おはよー!赤丸!あ、黒丸もいるー」
赤丸が飛び出してきた庭先から、遅れてゆっくりと大きな黒い犬が歩いてきた。
「おう、のぞみじゃねーか。朝から元気だな」
「うん、今日は文化祭だからかなりテンション高いよ!…ツメさんは?」
片耳が欠けて眼帯をした大きな犬の黒丸は、キバのお母さんであるツメさんの忍犬というやつだ。
なぜ黒丸が言葉を話せるのか、詳しいことは私にはなんにもわからないけど、兎に角黒丸は渋くてカッコイイ犬なのだ。
もし私が犬ならきっと惚れていた。
「ツメなら報告書を出しに行っている」
「報告書?」
親が忍じゃない分、忍世界の情勢も情報もイマイチわからない。
流石におおまかな力関係はわかるけど。
忍は仕事が終われば報告書ってのを出さなきゃいけないのか。
学生のレポートみたいなものなのかな。
あ、でも、お父さんが仕事でなにか大きなことがあったときなどは報告書を出していた。忍とか関係なく、社会人には必須なのかな。
「昨夜が任務だったからな…でだ、のぞみお前、文化祭とやらの時間はいいのか?」
「え?…うわ、ごめん行くね!キバまたね!任務がんばれ!」
黒丸の言葉に腕時計をちらりと見ると、あと数十分後にHRだ。
さあっと血の気が引く音がして、慌てて赤丸を地面に降ろして鞄を持ち直し、一応キバにも声をかけて踵を返した。
数歩進んでから、ちらりと後ろを見ても、窓の向こうにもうキバはいなかった。
相変わらず素っ気ない。けどやっぱそこがいい。
踊り出しそうな足取りで私は学校へ急いだ。