キバ(nrt) 2013/10了
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
詰まるところ、あの後キバには会えなかった。
日が沈むまで待ってはみたけど、キバどころか、キバの班の人にも会わなくて。
途中でイトは帰っちゃうし、一人虚しくベンチに座っていた。
19時過ぎた頃くらいに任務の終わったいのちゃん達が来て、一緒に帰ることになり、ついでにいのちゃんの家でご飯を頂く事にもなった。
初めて見たいのちゃん家はまさかのお花屋さんだった。
色取り取りの花を抜けて、母屋に入れば綺麗なお母さんが出迎えてくれた。
「今日はすみません、ありがとうございます」
「いいのよー。いっぱい食べていってね?あ、母さん今からちょっと出るけど…」
「あ、うん。大丈夫。行ってらっしゃーい」
「行ってきます。もうすぐ父さん帰ってくるからー。じゃ、のぞみちゃん、ゆっくりしていってねー」
ヒラヒラと手を降り、いのママは出かけて行った。
それを見届けてリビングに行き、出来ている晩御飯を運び机につく。
「なーんか御馳走ーって感じじゃなくてごめんねー」
「え、いいよ!いきなりだったし…寧ろ、普段のご飯のが私は嬉しい」
「ほんとー?ならいいけどー…じゃ、いただきまーす」
いのちゃんが手を合わせたのに倣って私も合わせ、ご飯を頂く。
どれもこれも美味しくて、思わず笑う。
「ふふ…おいし?」
「!、うん!すっごく!ママさん料理上手ー!」
「言っとくわー…で、今日何してたのよー?」
フォークで私を指してクルクルと回す。
グ、とパスタが喉に引っ掛かりそうになる。
でも聞かれるのも当たり前で、いのちゃんと出会って何も聞かれず、成り行きでここまで来たのだ。そりゃ知りたいよね。
「ん、ぐ……待ってたんだ」
「待ってた?誰を?」
「…キ、バ…」
そう言えば、いのちゃんの手が止まった。
と思えば、溜め息ひとつ。
「ほんっとわかんないわー…何処がいいの?」
「…何処……顔?」
「はぁっ?!顔ってあんたー…って言うより、顔ならサスケ君のがいいじゃなーい!」
「うちは君怖い。…いや、顔って言うのは嘘…いやそりゃ好きになるんだから好みの顔ってのもあるんだけど…何だろう…」
グサリ、とフォークでウインナーを刺す。
「ねぇ、何時から知り合いなわけ?私達近所で幼馴染みってしか聞いてないわよー」
「…んー、生まれたときからずーっと一緒。元々お母さん同士が仲良くて、そこから必然的に?キバのお姉ちゃんとも仲良いし…」
「へえ。私とチョウジとシカマルみたいなもんね」
「あ、そうなんだ?それで一緒の班なの?」
「んーん、班はランダムよー。先生達が力とか頭とかで色々均等に振り分けしてスリーマンセルを作んの」
いのちゃんはプチトマトを刺して、クルリと回した。
「ほへー。じゃ、たまたまなんだー凄い偶然…力とか頭って…何か忍も色々ルールあってめんどくさそー」
「…キバに聞いたりしないわけ?幼馴染みなんでしょー?」
その言葉に、フォークを回す手が止まった。
フォークから巻き付けたパスタを外して、具材の茸を先で弄る。
「のぞみちゃん?」
「…そうだ、ちゃん付けやめていいよ?何かいのちゃんにちゃん付けされると違和感ある」
「そう?じゃーのぞみって呼ぶわー。のぞみもいのでいーわよー?」
「わーい、じゃ、いのって呼ぶー」
「で?聞いたりしないのー?」
「…ごまかされたりしなかったか…」
むぅ、と唸れば、いのは笑い飛ばして、当たり前よーとか言ってきた。
それに対して、忍者って卑怯だ、とか思っちゃう私は馬鹿な奴である。
「そうだねー…何時からかなー…。キバがアカデミー入ったばかりの頃はまだ話してたから…それから半年か、それぐらいからあまり話さなくなったんだよね」
「なんでよ?」
「わかんない。私も普通の学校通ってたし、お互いやること出来て忙しかったってのもあるけど…でも私、気付いたらその時位からキバの事好きだったんだよね」
お互い擦れ違う、なんて付き合ってる訳じゃないからそんな言葉似合わない。
でも私は、寂しかった。
小さいときから一緒で、これからもそうだと思っていて、でも物心ついて意思がハッキリしはじめる頃に別々の道に歩いた。
私は離れてから気付いたんだ、物足りない、何か違う、寂しい、ああ私キバが好きだったんだって。
「好きだと気付いてもさ、遅かったんだよ。私にとっては」
「…なんで?まだちっさかったんでしょー?」
「だって、そんな最初の段階で中々会えなかったんだよ?それに私は忍者じゃない、くの一じゃない。…それだけで何処か壁作っちゃってさー」
気付いたら、自分から離れてたんだ。
「まぁ、私が…結局、我慢できなかったんだけどね」
「何したのよ?」
「え、毎朝の挨拶!キバの部屋に向かって叫ぶの。そしたらキバ、窓から顔出すからさ」
いのの顔が憮然とした。
それにケラケラ笑えば、いのはこめかみ辺りを押さえる。
「はぁ…のぞみってー」
「あはは!いの凄いポカーンてしてんだもん!」
「…で?こないだ中忍試験の事について聞いてきたわよねー?今日待機所に居たのもそれが理由?」
「うん。激励したいな、と思ったんだけど会えなかったよ」
「八班長期任務にでも出てんじゃないのー?」
ぐるりぐるりと最後のパスタを搦め捕り、適当そうに返事を返すいの。
「!」
不意にいのが何かに反応して、扉を見た。
「いの?」
「あー…」
途端に胡乱とした目になったいのに次いで、バーン!と扉が大きく開いた。
「ただいまー!いのちゃんお友達来てるってー?」
いのと同じ様な髪型をして額当て、大人や、稀に子供が着ているベストを着て、黒い羽織り。
思わずフォークをパスタに突き立てたまま固まってしまった。
「おかえんなさい、父さん」
「!、おじゃ、お邪魔してます!私いのの友人ののぞみです!」
いのの言葉に我に返り、すかさず挨拶をする、が、やっぱり急な登場にビビって吃った。
そんなことも気にしていないのか、いのパパは机に近付き、がしっと手を握ってきた。
「!!え、えと」
「よく来たねのぞみちゃん!私はいのいち!いのの父親だ。いやーいのにまさか一般人の友達が出来るだなんて!しかもこんなに可愛い!しかし細いね、ちゃんと食べて鍛えているのかい?ああ、忍じゃないんだったね、鍛える必要はないんだったか!あっはっはっ!」
「あ、はあ…」
「もー!やめてよー!」
パパさんのマシンガントークに少なからず引きながらも、一応会話をしていると、握られた手をいのが引き離した。
これ幸と、フォークを持ち直し、残りのパスタを押し込むように食べる。
「今大事な話してたんだからー…ていうか父さんご飯は?」
「おお、すまんな!飯はシカク達と食ってきた」
「そー。じゃあもう部屋行ってよ」
シッシッ、と追い払うように手首をぱたつかせたいのに、パパさんは明白に落ち込みつつも、がっと顔をこっちに向けた。
山中親子の会話を傍観していた私は、いきなりこちらを向いたパパさんに驚き、飲んでいたお茶を変に飲み込んだ。
痛い。鼻と喉の間が。
「のぞみちゃん!今日は泊まって行くのかい?」
やたらキラキラした顔のパパさんと、ああ、と手を打ったいの。
それにどう返せばいいかわからず、いのを見る。
「良いじゃない泊まってきなさいよー」
「え、や、でも」
「服は貸すわよー?なぁに?明日何かあったりするの?」
「や…特に、ない、けど」
言葉に詰まりながらも返せば、いのはパッと顔が明るくなり、じゃあ決まり!と深く笑った。