青鬼(桃組) 未完
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…紅、おまえ…最低だぞ」
桃園君の声が、静かになった教室へ落とされる。
それに便乗して雪代ちゃんと犬飼君も頷き、高猿寺君ですら呆れた目を赤鬼へ向ける。
赤鬼はキョドキョドと目を泳がせ「で、でも」と口を開いた。
「それは、昔の、僕で…と言うか、初代の赤鬼で、今は、そんなこと…それに、それに、僕は赤ちゃんを殺してなんかいないし!」
泣き出しそうになりながら必死に伝える赤鬼に、宵藍様が助け船を出す。
「そうね。紅は…というより、初代の赤鬼は、高子の…高子の子供を殺したわけではないのよ」
宵藍様の言葉に、私は思わず下を向く。
悠歌の手が、私の肩へそっと置かれた。
桃園君は「えっ、そうなの?ごめんな」と赤鬼へ申し訳なさそうに謝罪をして笑いかける。
「……でも、殺したも同然よ…」
「高子」
思わず呟いてしまった言葉に、宵藍様が咎めるような声色で名前を呼ぶ。
私は彼女の声を振り払って叫ぶ。
「っすげ替えるだなんて…!殺したも同然ではありませんか…!」
顔を上げれば、泣きそうな顔をした宵藍様が私を見ていた。
その隣には眉を寄せて辛い表情を浮かべ、じっと下を見続けている赤鬼がいる。
どうして、あなたが、そんな顔をするのよ。
開けば出そうな罵詈雑言。私は開けていた口を閉じてぎゅっと言葉を飲み込んだ。
押し黙った私達に、桃園君一行は落ち着かない。
すると、パンッと乾いた音が静かな教室に響き、思わず肩を跳ねさせる。
「おもっくるしーお話はこれにて終了ー。取り敢えず、アンタが赤鬼にそれなりの恨み辛みがあって、前世が青鬼の恋人だったって事が解っただけで最初の目的は果たしてんだよね。俺らはさ」
高猿寺君の、あっけらかんとした声がヤケに浮いて聞こえた。
悠歌の手が一度、ギュッと強く私の肩を握り締めてからするりと離れる。
そして、高猿寺君に便乗して頷き私へ笑顔を見せてポンポンと肩を優しく叩いて落ち着くように促した。
「…まあ、そうですね。特に詳しいお話を、無理に聞く必要も僕達にはありませんし、そこは当人同士の問題、と言うべきでしょうか」
「ええー、なんか、えー!冷たくね?」
「あら、冷たくはありませんわ。祐喜様、人それぞれ、です」
「んー…そ、そうか…。…まあそうだよなぁ」
立ち上がった高猿寺君に続き、犬飼君、雪代ちゃんが続いて桃園君も不満気に立ち上がる。
「…あんた達のそう言うとこ、嫌いじゃないわ。首を突っ込まれてもあんた達が解決できる問題でもないから…。あ、そうだわ、高子、あなた今どこに住んでいるの?そこまで送るわ」
宵藍様も桃太郎一行に同意し、笑いながら立ち上がると、私へ手を差し伸べられた。
その光景に心中眩暈を起こしそうになりながらも、その目映い手へ私の手を重ねて立ち上がる。
「有り難う御座います宵藍様。ですが御心配には及びません。私、今は寮に住んでおりますれば」
「まあ!では私達と一緒ですわ!ご一緒しませんこと?あ、もしよろしければ、ですが」
雪代ちゃんが、嬉しそうに手を叩き、提案を一つ。
驚いてそちらを見れば、「おーいいじゃん!」と喜ぶ桃園君に、笑顔で頷く悠歌と高猿寺君。
そして「また!また寮生…!」と歯噛みしている犬飼君。
その光景が何だかとても暖かくて面白い人達で、私はその一瞬だけ、宵藍様のことも忘れて大きく笑い出した。
*