道連れ(三年) 2017/07了
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孫兵が、藤内が、数馬が、三之助がいなくなった。
どうしちまったんだ。
三之助がいねぇのは前からだが、あの三人は別段迷子でもない。
合同実技にもいなかったし、委員会の時も覗いたけど影すらなかった。
それより可笑しいのは左門だ。
ずっと部屋の隅に座り込んで「教えちゃいけないんだ、教えたからだめだったんだ」と呟いている。
全くなんだってんだ。
何を教えるって?
珍しく動き回らないから俺としては助かっているからそのままでいいんだけど、どうも気持ちが悪い。
夜も寝ない。
寝付きはいい左門が、布団を敷いてその上で正座をして、じっと俺を見る。見続ける。
気味が悪い。
なんだって聞いたら、「今度は作兵衛だから」とかなんとか。
全くもって訳が分からん。
目の下にクマが出来て、どんどん憔悴していく左門は、手足が妙に細くなって、頭は大きい。
眼窩はがらんどうの真っ暗のようだ。
何処かで見たような。
ああ、あいつだ。
そういや最近あいつも見ねぇな。
全く揃いも揃って何処ほっつき歩いてやがんだ。
いい加減捕まえて引き摺り戻してやんねぇとな。
縄を片手に、俺は部屋を出る。
ちゃんと部屋の隅にいる左門に声はかけた。
返事がなかったから、聞こえてたかは知らねぇが。
月明かりが煌々と照らす中、裏裏山までいつの間にか来ていた。
ああくそ、なんだってこうも蒸し暑い。
じとりとする気持ち悪さが、ってあ。
三之助!
「おい三之助おめぇ止まりやがれ!」
あの後ろ姿は三之助だ。
俺の声が聞こえないのか、三之助は馬鹿みたいに勢いよく走り去っていく。
「チッ…どいつもこいつも人の話を聞かねぇなあ!」
追い掛け始めてすぐ、何故だか左門の言葉が頭を過った。
―教えちゃいけないんだ。
何を?
―今度は作兵衛だから。
何が?
なんとなく、足が止まる。
左門の様子が気がかりだ。
やっぱり左門も連れて、一緒に皆を捜すべきか。
そう思って後ろを振り返ろうとするが、木霊する足音が気になって仕方がない。
今三之助を逃したら永遠に見つかんねぇ気がする。
タッタッタッタッタ…。
足音が近い。
あいつ、足音なんてさせてたっけ。
わりと体育委員会はしっかりとその辺を教えてるから、いつもあいつは足音は。
タッタッタッタッタ。
ちげぇな、近いな。
逃げてるかと思ったが近付いてんのか。
はあ?
誰が。
三之助が?
「おい」
声を出して、左を向いた。
其処には一人立っていた。
誰だっけ。
あれ。
知ってんぞ。
顔が、よく見えない。
月明かりは煩いくらいなのに。
「作兵衛。ねえ作兵衛、あっちにいたよ」
三之助の事か。
ありがてぇ。
そういや前もお前に助けてもらったな。
「ああ、ありがとう」
「一緒ニ行こ、うねエ」
「ああ、一緒にな」
言葉が、スラスラ出る。
なんだこれ。
俺の意志じゃないみたいだ。
変だ、な…?
蛞蝓の様な指が、俺の首に纏わりついた。
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