無変換だと本名は千鶴(ちづる)、審神者名は花車(はなぐるま)になります。
花車
名前変換
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──卯月某日
大学の卒業式典が無事に終わった数ヶ月後、千鶴は政府の講堂に集められた群衆のなかにいた。
新人審神者ばかりが集められた講堂はざわめきが広がり、自然、千鶴の心も少なからず騒いでいる。
しかし壇上へマイクを持った男性高官が現れると水を打ったように静まり返った。ガサガサとマイクのスイッチを入れて少し発声をしたあと、男性は淡々と集まった御礼と説明を述べていく。
最後の説明が終わると番号が呼ばれた。
「一番から十番の方は別室へご案内いたします。十一番から三十番の方は此方へ残ってください」
千鶴は自分の手元を見る。
説明が始まる前に渡されていた彼女の木簡の番号は三番だ。周りを見渡せば扉の前で別の職員が手をあげて待っていた。
動き出した他の人間に倣って千鶴もそそくさと移動した。
通された部屋は簡易な、長机一つと椅子が人数分並べられただけの部屋だった。
中にいた白塗りの面をつけた職員が座るよう促す。十人の新人審神者達は静かにパイプ椅子に座った。
年の功はそれぞれで、性格も違うのだろう。共通するのは全員がなぜ別室に呼ばれたのかが理解できないということのみだ。
暫くして先程壇上で淡々と話していた高官が現れた。
「改めまして、お集まりいただき誠に有り難く存じます。貴殿方十名に集まっていただいたのは他でもない。他の審神者ではなしえない特別任務を受けていただきたいからです」
先程と同じ音程で無感動に話す高官。
す、と音もなく右端に座った高齢の男性が手をあげる。
「失礼ながら。特別任務とはどのようなものですか? 審神者業と兼任ということなのでしょうか」
「はい。いや…兼任というよりは、そちらが本命ですかね。貴殿方は審神者選抜試験にて筆記実技霊力ともに優秀な方々です。そんな貴殿方を見込んで我々は貴殿方にとある本丸をお任せいたしたく存じます」
ざわ、と十名の審神者がお互いの顔を見合わせる。
彼等の動揺を気にもとめずに高官は長机の上に手を翳して3Dホログラムを展開させた。
それぞれの審神者の前に現れたホログラムは、壊れかけた家屋から半壊の日本屋敷など様々だ。共通するのは全てがおどろおどろしいというところか。
「これらは全て今現在存在する本丸です。本来、本丸とは審神者の力によりその姿形を変幻に変えられます。土台となる木材諸々は勿論ございますが、庭は元より水や草木、刀剣数の増員により増やすことの出来る部屋等はすべて審神者がいなければ賄えません。…この本丸等は、現在審神者がいなくなり霊力で補われていた空間は見る影もありませんが。存在自体は政府から各本丸の御神木へ政府所属の審神者が霊力を送っているのでなんとかなっております」
「…これが、本丸?」
中頃、千鶴の左隣に座っていた若い女性が声を震わせて目を見開きながら本丸を見つめる。
「それぞれ目の前にある本丸…こちらに貴殿方を送り、その本丸を立て直していただきたいのが特別任務でございます」
「あんさぁ、新人は初期刀を選んで新しい本丸に赴任するのが慣わしやろ。既にあるボロの本丸を立て直す意味がわからん。審神者もおらんのなら壊せば良いやん」
若い男性が机に頬杖をつきながら怠そうに話す。その口には棒つき飴の白く細長い棒が咥えられている。
高官は少し口をつぐみ、うろりと目を天井にさまよわせてから「お話し致しますので」と苦そうな表情を浮かべた。
「…そちらの十の本丸はみな審神者が逝去された本丸です。死因は刀剣達からの謀反、自死、呪殺と様々です。総じて共通するのは、全ての本丸が政府のブラックリストへ入る、所謂ブラック本丸というものです。刀剣の意思を無視した出陣や私生活を強いた審神者が亡くなられたのですが、刀剣達は未だそこにいます。本丸を取り壊すにも金銭がかかる話である上、それらの本丸には、錬度や稀少性の高い刀剣が多いのでみすみす壊すのは政府と致しましては遺憾でありまして」
淡々と話す内容ではない。
新人審神者はみな一様に顔をしかめたり眉を寄せたり、感受性が豊かなものは涙目になっている。
棒つき飴を舐めていた男性は指先で机を叩きながら「死んだ審神者は自業自得やろ」と呟いた。
「幸い、刀剣を集める必要もない本丸です。優秀な貴殿方の霊力であれば彼等の内に留まる前任の審神者の霊力を上書き出来ます。言霊での契約し直しをすれば謀反の心配も消えます。立て直しが完了するまでの間、資材は勿論、給金も通常の月収の倍以上をお約束します。どうかご契約くださいますと…」
「それって蹴ることが可能ってことですかぁ?」
高官の台詞に被せたのは千鶴より年若いであろう少女。
先程の男性よりはマシだがこの少女も気怠げだ。
かくいう千鶴も高官のごちゃごちゃとした丁寧な話には飽きがきていた。ジェルネイルを施されたマットピンクとクリアカラーのグラデーションの爪先をいじりつつ、話し半分に聞いている。そもそもこの時点では千鶴にとって本丸を新しく貰えないけれどお金は弾んでくれるくらいの感想で、自業自得で死んだ審神者には微塵も同情や興味はなかった。
「は、はい。まあ断られるのは構いません。命の保証が致しかねるので」
その言葉に、室内が静まり返る。
ただの荒れ果てた本丸を引き継ぎ、審神者殺しの罪を持つ刀剣の契約を上書きして率いるだけではないことにやっと若人は気付いたのだ。
高齢の男性や四十を越えているであろう面々は「やはり」と呟いた。
少女がひきつった頬を隠すことなく訊ねる。
「そ、それってどういう…、審神者は、本丸にいれば安全なんじゃないんですか?」
「お嬢さん、先程此方の方が説明してくださったでしょう。前任の審神者の殆どは殺された、と。その根元は審神者自身なので同情の余地もありませんが、実行した刀剣達は未だそこにいる。復讐を果たしても同じ審神者…つまり人間にどう牙を向くか、全く解らない状況では私達が行ったところで素直に再契約をさせてくれるか解らないのですよ」
「ま、最悪前任と同じ様に問答無用に切り捨て御免もありえるでしょうねぇ」
壮年の女性が穏やかに少女に伝えれば、その横で髭を撫でながら男性が椅子に深く座り直した。
爪先を見ていた千鶴が、ここで漸く手をあげる。
「死ぬ確率高くても生きてなにかしら報告してたら破格の給料貰えるんですよね? じゃ、私やります。お金いるんで」
「え」
千鶴の飄々と明るい言葉に、一瞬静かになったがすぐにざわめき、そして乗るように何名かも手をあげて就任を希望した。
すぐに高官が手を叩き、職員が契約書を持って希望する四人の前へ置く。
ペンを持ってさらさらと自分の名前を書き、希望する審神者名もしくは選択肢の中の審神者名を選ぶ欄も特になにも考えずにチェックした千鶴は、高官をきょろりと大きな目で見上げてにこりと笑む。
「大体のことはわかったんで、そろそろ初期刀選ばせてください。流石に生身の私らだけで本丸に行かせないでしょ?」
「あ、…いいえ。初期刀を選ぶことは不可能です。赴く本丸には既に初期刀と言うものが配属されているので二振り目の初期刀は選ぶことができかねます」
「は? じゃあ私達は一人で行けっていうのぉ! ? 有り得なくない?!」
千鶴のかわりに、名前を書いたゴスロリの少女が叫べば、高官はすぐに手を振って否定をした。
「鍛刀は、出来ます! お好きな配合で、此方で鍛刀をしていただき、その初鍛刀を連れて赴いていただきます!」
その言葉に名前を書いた四人はほっとしたように落ち着き、契約書を高官に渡していく。
全て確認した高官は鍛刀室へ四人を案内し、残った六人を丁重に御返しするようにと職員へ伝えて自分も鍛刀室へ足早に去った。
資材を好きなように使用して鍛刀を始めれば手伝い札を使って時間を短縮し、すぐに本丸へ赴任することとなった千鶴達は手早く順々に鍛刀を終えていく。
高齢の男性は獅子王を、少女が蜂須賀虎徹を、棒付き飴を舐めていた男性が太鼓鐘貞宗を、そして最後の千鶴が大和守安定を鍛刀した。
「それでは審神者様方、どうかお気をつけて。そしてよい報告をお待ちしております」
高官はそれだけ言うとその場を後にしていなくなり、代わりに四匹の管狐、通称こんのすけが現れる。
四人の審神者の前で空間にゲート紋を作ると「松様は此方へ」と高齢の男性を連れ、「菫様は此方で御座います」と少女を紋の中へ導き、「琥珀様は此方にどうぞ」 と男性を案内する。
千鶴の前に消えていった琥珀は、少しだけ足を止めて千鶴を振り返り「お互い、頑張ろやー」と声をかけていった。
「琥珀くんもね~」と返した千鶴に、こんのすけが「花車様もお早く」と足元で急かす。
「はいはいわかってまーす。安定君、行こっか」
「うん、よろしくね主」
「安定君さぁ、それって新撰組の羽織だよね? 昔修学旅行でお土産屋さんに売ってたから買ったよ~、その羽織。木刀と一緒に」
「え、主は新撰組知ってるの? 羽織どこにあるの? 着ないの?」
ワイワイ喋りながら輝く紋に足を踏み入れて移動ゲートで荒れた本丸へ向かう二人はなんの緊張感も見受けられず、思わず担当のこんのすけは溜め息を吐いてしまった。
→
大学の卒業式典が無事に終わった数ヶ月後、千鶴は政府の講堂に集められた群衆のなかにいた。
新人審神者ばかりが集められた講堂はざわめきが広がり、自然、千鶴の心も少なからず騒いでいる。
しかし壇上へマイクを持った男性高官が現れると水を打ったように静まり返った。ガサガサとマイクのスイッチを入れて少し発声をしたあと、男性は淡々と集まった御礼と説明を述べていく。
最後の説明が終わると番号が呼ばれた。
「一番から十番の方は別室へご案内いたします。十一番から三十番の方は此方へ残ってください」
千鶴は自分の手元を見る。
説明が始まる前に渡されていた彼女の木簡の番号は三番だ。周りを見渡せば扉の前で別の職員が手をあげて待っていた。
動き出した他の人間に倣って千鶴もそそくさと移動した。
通された部屋は簡易な、長机一つと椅子が人数分並べられただけの部屋だった。
中にいた白塗りの面をつけた職員が座るよう促す。十人の新人審神者達は静かにパイプ椅子に座った。
年の功はそれぞれで、性格も違うのだろう。共通するのは全員がなぜ別室に呼ばれたのかが理解できないということのみだ。
暫くして先程壇上で淡々と話していた高官が現れた。
「改めまして、お集まりいただき誠に有り難く存じます。貴殿方十名に集まっていただいたのは他でもない。他の審神者ではなしえない特別任務を受けていただきたいからです」
先程と同じ音程で無感動に話す高官。
す、と音もなく右端に座った高齢の男性が手をあげる。
「失礼ながら。特別任務とはどのようなものですか? 審神者業と兼任ということなのでしょうか」
「はい。いや…兼任というよりは、そちらが本命ですかね。貴殿方は審神者選抜試験にて筆記実技霊力ともに優秀な方々です。そんな貴殿方を見込んで我々は貴殿方にとある本丸をお任せいたしたく存じます」
ざわ、と十名の審神者がお互いの顔を見合わせる。
彼等の動揺を気にもとめずに高官は長机の上に手を翳して3Dホログラムを展開させた。
それぞれの審神者の前に現れたホログラムは、壊れかけた家屋から半壊の日本屋敷など様々だ。共通するのは全てがおどろおどろしいというところか。
「これらは全て今現在存在する本丸です。本来、本丸とは審神者の力によりその姿形を変幻に変えられます。土台となる木材諸々は勿論ございますが、庭は元より水や草木、刀剣数の増員により増やすことの出来る部屋等はすべて審神者がいなければ賄えません。…この本丸等は、現在審神者がいなくなり霊力で補われていた空間は見る影もありませんが。存在自体は政府から各本丸の御神木へ政府所属の審神者が霊力を送っているのでなんとかなっております」
「…これが、本丸?」
中頃、千鶴の左隣に座っていた若い女性が声を震わせて目を見開きながら本丸を見つめる。
「それぞれ目の前にある本丸…こちらに貴殿方を送り、その本丸を立て直していただきたいのが特別任務でございます」
「あんさぁ、新人は初期刀を選んで新しい本丸に赴任するのが慣わしやろ。既にあるボロの本丸を立て直す意味がわからん。審神者もおらんのなら壊せば良いやん」
若い男性が机に頬杖をつきながら怠そうに話す。その口には棒つき飴の白く細長い棒が咥えられている。
高官は少し口をつぐみ、うろりと目を天井にさまよわせてから「お話し致しますので」と苦そうな表情を浮かべた。
「…そちらの十の本丸はみな審神者が逝去された本丸です。死因は刀剣達からの謀反、自死、呪殺と様々です。総じて共通するのは、全ての本丸が政府のブラックリストへ入る、所謂ブラック本丸というものです。刀剣の意思を無視した出陣や私生活を強いた審神者が亡くなられたのですが、刀剣達は未だそこにいます。本丸を取り壊すにも金銭がかかる話である上、それらの本丸には、錬度や稀少性の高い刀剣が多いのでみすみす壊すのは政府と致しましては遺憾でありまして」
淡々と話す内容ではない。
新人審神者はみな一様に顔をしかめたり眉を寄せたり、感受性が豊かなものは涙目になっている。
棒つき飴を舐めていた男性は指先で机を叩きながら「死んだ審神者は自業自得やろ」と呟いた。
「幸い、刀剣を集める必要もない本丸です。優秀な貴殿方の霊力であれば彼等の内に留まる前任の審神者の霊力を上書き出来ます。言霊での契約し直しをすれば謀反の心配も消えます。立て直しが完了するまでの間、資材は勿論、給金も通常の月収の倍以上をお約束します。どうかご契約くださいますと…」
「それって蹴ることが可能ってことですかぁ?」
高官の台詞に被せたのは千鶴より年若いであろう少女。
先程の男性よりはマシだがこの少女も気怠げだ。
かくいう千鶴も高官のごちゃごちゃとした丁寧な話には飽きがきていた。ジェルネイルを施されたマットピンクとクリアカラーのグラデーションの爪先をいじりつつ、話し半分に聞いている。そもそもこの時点では千鶴にとって本丸を新しく貰えないけれどお金は弾んでくれるくらいの感想で、自業自得で死んだ審神者には微塵も同情や興味はなかった。
「は、はい。まあ断られるのは構いません。命の保証が致しかねるので」
その言葉に、室内が静まり返る。
ただの荒れ果てた本丸を引き継ぎ、審神者殺しの罪を持つ刀剣の契約を上書きして率いるだけではないことにやっと若人は気付いたのだ。
高齢の男性や四十を越えているであろう面々は「やはり」と呟いた。
少女がひきつった頬を隠すことなく訊ねる。
「そ、それってどういう…、審神者は、本丸にいれば安全なんじゃないんですか?」
「お嬢さん、先程此方の方が説明してくださったでしょう。前任の審神者の殆どは殺された、と。その根元は審神者自身なので同情の余地もありませんが、実行した刀剣達は未だそこにいる。復讐を果たしても同じ審神者…つまり人間にどう牙を向くか、全く解らない状況では私達が行ったところで素直に再契約をさせてくれるか解らないのですよ」
「ま、最悪前任と同じ様に問答無用に切り捨て御免もありえるでしょうねぇ」
壮年の女性が穏やかに少女に伝えれば、その横で髭を撫でながら男性が椅子に深く座り直した。
爪先を見ていた千鶴が、ここで漸く手をあげる。
「死ぬ確率高くても生きてなにかしら報告してたら破格の給料貰えるんですよね? じゃ、私やります。お金いるんで」
「え」
千鶴の飄々と明るい言葉に、一瞬静かになったがすぐにざわめき、そして乗るように何名かも手をあげて就任を希望した。
すぐに高官が手を叩き、職員が契約書を持って希望する四人の前へ置く。
ペンを持ってさらさらと自分の名前を書き、希望する審神者名もしくは選択肢の中の審神者名を選ぶ欄も特になにも考えずにチェックした千鶴は、高官をきょろりと大きな目で見上げてにこりと笑む。
「大体のことはわかったんで、そろそろ初期刀選ばせてください。流石に生身の私らだけで本丸に行かせないでしょ?」
「あ、…いいえ。初期刀を選ぶことは不可能です。赴く本丸には既に初期刀と言うものが配属されているので二振り目の初期刀は選ぶことができかねます」
「は? じゃあ私達は一人で行けっていうのぉ! ? 有り得なくない?!」
千鶴のかわりに、名前を書いたゴスロリの少女が叫べば、高官はすぐに手を振って否定をした。
「鍛刀は、出来ます! お好きな配合で、此方で鍛刀をしていただき、その初鍛刀を連れて赴いていただきます!」
その言葉に名前を書いた四人はほっとしたように落ち着き、契約書を高官に渡していく。
全て確認した高官は鍛刀室へ四人を案内し、残った六人を丁重に御返しするようにと職員へ伝えて自分も鍛刀室へ足早に去った。
資材を好きなように使用して鍛刀を始めれば手伝い札を使って時間を短縮し、すぐに本丸へ赴任することとなった千鶴達は手早く順々に鍛刀を終えていく。
高齢の男性は獅子王を、少女が蜂須賀虎徹を、棒付き飴を舐めていた男性が太鼓鐘貞宗を、そして最後の千鶴が大和守安定を鍛刀した。
「それでは審神者様方、どうかお気をつけて。そしてよい報告をお待ちしております」
高官はそれだけ言うとその場を後にしていなくなり、代わりに四匹の管狐、通称こんのすけが現れる。
四人の審神者の前で空間にゲート紋を作ると「松様は此方へ」と高齢の男性を連れ、「菫様は此方で御座います」と少女を紋の中へ導き、「琥珀様は此方にどうぞ」 と男性を案内する。
千鶴の前に消えていった琥珀は、少しだけ足を止めて千鶴を振り返り「お互い、頑張ろやー」と声をかけていった。
「琥珀くんもね~」と返した千鶴に、こんのすけが「花車様もお早く」と足元で急かす。
「はいはいわかってまーす。安定君、行こっか」
「うん、よろしくね主」
「安定君さぁ、それって新撰組の羽織だよね? 昔修学旅行でお土産屋さんに売ってたから買ったよ~、その羽織。木刀と一緒に」
「え、主は新撰組知ってるの? 羽織どこにあるの? 着ないの?」
ワイワイ喋りながら輝く紋に足を踏み入れて移動ゲートで荒れた本丸へ向かう二人はなんの緊張感も見受けられず、思わず担当のこんのすけは溜め息を吐いてしまった。
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