3話:はじめてジム戦やりました。

「ミカルゲ!あのカラフルなワンコに“どくどく”!」


「おんみょーん………プッ!」


ミカルゲは高く飛び上がると、口にあたる部分から毒々しい紫の液体を放つ。

それは空中で爆ぜると雨のように地面目掛けて降り注ぐ。


ミカルゲから放たれた毒液の雨。
この液体に触れたら最後、触れたポケモンは毒に犯されてしまう。


しかもこの毒は時間の経過と共にその毒の殺傷力が強くなっていく猛毒だ。


それが“どくどく”。



割と対戦でもよく使われる技のひとつだと思ってるが……攻撃力の低い耐久型のポケモンがよく使っているイメージがある。



なんせ、攻撃力が低くてもどくどくでもうどく状態にすれば確実にダメージを与え続けることが出来るからな。




「やっべ………!ヒメ、かわせ!!」


『かわせ』という回避を促すポケモンへの命令はアニメの常套句だ。

ゲームでなら直撃を受けてすぐさま毒に苦しむことになるのだが、アニメなら華麗にかわして反撃に転じることができるというもはや魔法の言葉に近いものだ。


俺も咄嗟にヒメに避けろと命じる。


右に左に、縦横無尽に飛んでくる毒の雨を必死にかわしていくヒメ。


しかし…………




「ヌワッ!?」


「ヒメッ!」


急な方向転換を繰り返した影響で、ヒメは足を挫いてしまい、毒液を受けてしまった。



──まずい、ヒメがもうどく状態に……!


ていうか同じ状態異常技でも、わざわざ普通に覚えられる『おにび』じゃなくて、ソード&シールド以前の過去作でしか覚えられない『どくどく』を選んでくるあたり悪辣だ。




「い、いぬぅ………」


ヒメは毒が回ったのか、その場でへたり込んでしまった。

もう、動くだけの体力もないといった感じだ。


無論当たり前のことだが、相手は俺たちの事情など理解などしてはくれない。

それを見たミミッキュ仮面は更にミカルゲに指示を飛ばした。




「ミカルゲ!“たたりめ”!」


「おんみょーーーーーーん……………」


「ひ、ヒメェェ!!」


毒々しい光を放つ紫の炎が、夜の闇とミカルゲを照らす。


“たたりめ”。

ゴーストタイプの特殊技。
状態異常となった相手に通常の倍のダメージを与える技だ。

“弱り目に祟り目”なんて言葉があるが、まさにその名の通りの技だ。


たたりめによる一撃は毒でまともに動けないヒメに容赦なく放たれた。


そしてそれはヒメの体に直撃し、紫の火柱が上がった。




「い、いぬぬわ~ん…………」


傷つき、目を回し気絶したヒメ。

相手は明らかに俺よりも一枚も二枚も上手。



「ヒメ、おつかれさん…………」


俺はヒメの頭を数回撫でるとヒメをボールに戻すのであった。
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