3話:はじめてジム戦やりました。

「シビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビィィィ!!!」



「グエーーーーーーーーーーーッ!!!」


ジムリーダー・ノゾミに容赦なく叩きつける怒涛のラッシュ。

その一撃一撃が途轍もなく重く、一撃がノンたんの体にヒットする度に普段では聞けないような凄まじい音が聞こえる。


ふと気になってジニア、というかノエルの方を見てみればジニアはノエルの両目を覆うだけでなく、耳栓をつけさせていた。


元の世界では敵だったが、ノエルのトラウマにならないように最大限の配慮をしている。


流石だ。やはりこの男もノエルの父親なんだな。




「シビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビィィィ!!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


シビルドンによる拳のラッシュがスピードを増す。

もはや拳による音というよりかは機関銃かなにかをぶっ放しているようなそんな音。

もはや拳の衝撃の音ではなく爆発音なのだ。


そんな重く鋭い拳のラッシュを希望の担い手(笑)ことノゾミ・ナカムラはなす術もなく受け続ける。



「シビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビィィィ!!」


また更に拳のスピードが速くなる。

もはや俺の肉眼では捉えられないほどのスピード。

しかし、この高威力のげきりんにもデメリットはある。


一定時間攻撃し続ける関係上トレーナーの指示を受け付けなくなるのと、攻撃終了後こんらん状態になってしまうこと。



…………だけどこんらん対策はバッチリ用意している。



「シビルドン!キーのみだ!」


ここで俺はシビルドンの口に我々の世界の柿の実に近いきのみ………『キーのみ』を放り投げる。

キーのみはポケモンに使ったり持たせることでこんらん状態を回復させる効果がある。



───そう、キーのみを食べたシビルドンはこんらん状態から回復したのだ。




「シビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビィィィ!!」


ここで元気になったシビルドンが更にスピードを上げてげきりんを放つ。

この辺りからだろうか。

ノンたんの体が軟体生物のようにぐにゃんぐにゃんになってきたのは。



───まぁ、元から軟体生物みたいな奴だしどうでもいいが。





「Shibyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」



シビルドンの雄叫びが木霊する。

大地を震わせるほどの魂の叫び。


自身の自由を奪った敵への怒り。


それら全てが雄叫びと共にノンたんの体に叩き込まれる。



それはノンたんの小さな体には到底受け止めきれるものなどではない。




「シビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビィィィ!!」


「ヤッ…………

ダァァァァァァァァァァァァァァァァァァ……


バァァァァァァァァァァァアアアアアアア………!!」


そろそろ幕引きだ。

シビルドンのげきりんによるラッシュもトップスピードに達し、バカ女も情けない断末魔の叫びをあける。


本当に滑稽としか言いようがない。


俺たちの前に希望の担い手だとかいいながら、俺たちの調和を乱した頃の面影はもはやどこにもない。




「シビィィィィィィィィィィァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」


「ど"お"し"て"だ"よ"お"お"お"お"お"お"!!」


トドメの一撃がノンたんの顔面に叩き込まれる。

爆音と共に炸裂したその一撃により、ナカムラジムの壁を突き破りノンたんは外へと放り出された。

ノンたんが飛んでいった先には無人のゴミ収集車。


シャッターが閉まったゴミ収集車と激突するとゴミ収集車は爆発四散。

飛んできたゴミ収集車のシャッターには『燃えるゴミは月・水・金』の文字。



こうしてノンたんは文字通りの燃えるゴミとなった。



「………ただよ~うそ~らの~♪どこ~か遠~く♪」


「何歌ってんだよォ!犬っころォォ!」



「ど、どおしてだよおおおおおお………!!」



なんとも言えない哀れな末路。

まさにコイツにはうってつけ。



そして、『新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のような爽やかな気分』とはこういうことをいうのだろうか。


本当に爽やかな気分だ。




「おつかれさんシビルドン♪」


「しっび!」


コイツもすごく爽やかな顔をしている。

まるで憑き物が落ちたかのように。


俺はシビルドンにキーのみを食べさせた。




「ジムリーダー・ノゾミ戦闘不能!!よって勝者!チャレンジャー!カツトシ、ジニアペア!!」



「あー!スッキリしたーーーー!!」



「…………いいのか、これで」



なんか顔文字みたいな顔をして困惑するジニア。


だがこれでいいのだ。最高にスカッとするジム戦だったのだから。





「………キボ~ノハナ~~♪繋いだ絆を力にして♪明日を強く咲き誇れ~♪

戻る場所なんてない♪たどり着くべき場所へと♪」



「…………いいんじゃね?

これで名実ともに希望の担い手……もとい“希望の華”になったんだから」


「いや、だから……

……いい、のか…………?」



スカッとした俺とシビルドン。
ビミョーな表情のジニア。

こうして、俺たちの初のジム戦が終わったのだった。


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