3話:はじめてジム戦やりました。

「待って!希望の担い手であるこの私の存在をこの世から消してはならない!分かるでしょ!?」


この期に及んで命乞いか。




───醜いな。





いや、これは時間稼ぎか。

現にヌメラとオタマロがこちらに向かってきているのがわかる。




「……………ピッピ」


「ぴっ」


「ぬめっ!?」


「まろっ!?」



ノゾミだけでなく、こちらにも重力をかけた。

少なくともあの非力なポケモンたちには重力は降りきれやしない。




「待って!お願いだからっ!待って!」



「おーい、みんなどうするー?

失s……希望の担い手をこの世から消しちゃダメなんだってよ」




「「「……………」」」



俺は視線をジニアたちに向ける。

これには流石のジニアもケイツもウオズも困惑した顔を見せるばかり。





そして……………





「「「いっ、イッテイーヨ……………」」」



《イッテイーヨォォ!》




どうやら結論は出たようだ。


“いっていい”………このバカ女は『逝っていい』とのことだ。




お許しが出たんだ。

────盛大にイかせやんないとな。





「いっていい…………ってさ」


「待って!なんで!?どーしてだよォォ!?」



その瞬間、俺のモンスターボールからヒメが飛び出してきた。




「いぬぬわんっ!」


「ひ、ヒメ!助けてくれるの!?」




ヒメは俺を止めようと出てきた。

最初はそう思った。



だけど、世界はコイツが思ってるほど甘くはない。


ヒメは俺の隣に立ち…………




「………どこま~でもつ~よくなれる~~♪俺たちなら~~♪ウォウウォウウォウイェー♪」


「ヒメェ!?」



なんか歌い始めた。

どうやら挿入歌……もとい処刑ソングのつもりらしい。




「最高の選曲ありがとよヒメ……………




───シビルドン!そこのバカ女に“げきりん”!!」



「いくZ(ぜ)!激しく燃えるバトル~♪

いくZ(ぜ)!ピンチはチャンスだぜ~♪」


シビルドンの両拳に宿る炎。

ヒメによる挿入歌。


アドレナリンが限りなく沸騰するシチュエーションの中、バカ女にかけたじゅうりょくをピッピに解除させると、俺は心を通わせたシビルドンに指示を出す。


“げきりん”。

ドラゴンタイプの技の中でも相当高い威力を誇る物理技。

自らの感情を爆発させ、龍の力を存分に振るう技。


まさに逆鱗に触れられ荒れ狂う、かつて神として人々に畏怖された龍の恐ろしさを体現したかのような大技。


シビルドンの場合は両拳に炎を纏わせ、それを拳によるラッシュで敵に叩きつけるという感じになるらしい。






「恨むんなら…………俺たちの逆鱗に触れたお前自身を恨むんだな………!」




「シビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビィィィ!!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


シビルドンの拳が容赦なくノゾミ・ナカムラ………いや、ジムリーダー・ノゾミに叩き込まれる。


まさに俺たちの逆鱗に触れた報い。



ハハッ…………本当にスカッとする光景だ。




だけど、それだけで終わらせてやるほど俺たちは甘くはないんだよ。
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