3話:はじめてジム戦やりました。

「まぁ………見てろって。

行こうぜ、ピッピ!」


「ピッ!」


妖精の姿をしたポケモン、ピッピ。

その可愛らしい見た目とは裏腹にコイツはとてつもなく恐ろしい技を覚えている。


それは……………




「おっと。その前に…………

ジニア、一応オオタチに頼んであの2体のポケモン押さえといてくれ!」


「あ、あぁ…………」



俺は、ジニアにヌメラとオタマロをなんとかしてくれと頼むとピッピに目配せをする。


狙うのはポケモンたちじゃない。



ポケモンを操る希望の担い手(笑)………ノゾミ・ナカムラ。アイツだ!!



「何を考えてるのかは知らないけど………行ってヌメラ!」


「ぬーめーーーーーー!!」


ここでヌメラのがまんが解かれた。

ヌメラを中心に集まったエネルギーが波動として放たれたのだ。


しかし混乱はさせてあったため、がまんで解き放たれたエネルギーは明後日の方向へと飛んでいく。




「あっ!なにやってんのさヌメラ!」


「ぬっ、ぬめぇ~!」


「ピッピ!とべぇ!!」


ウナギ女とヌメラが揉めている中、ヌメラを踏み台にピッピは高く高く飛び上がる。


目指すはウナギ女。


ピッピもそれを分かってか既に拳にエネルギーをチャージしている。




「ヌメラを踏み台にしたァ!?ていうかちょっと待って!!」


戸惑うウナギ女。

まさかポケモンバトルの最中にポケモンの攻撃の対象になるなんて思ってないだろうからな。




だが…………俺もコイツに凄く腹が立ってるんだ。



何が『ベルトなんて魔法で直せばいい』、だ。


───勇騎さんや俺たちか裏でどれだけ必死に直してるか知らない癖に。




「シビルドン!すぐに終わらせるから我慢しててくれ!


…………ピッピ!あのバカの顔面に………


全力全開で“コメットパンチ”!!」



“コメットパンチ”。

鋼鉄化した拳で敵を殴るはがねタイプの物理攻撃技であり、一定確率で自分の攻撃力を上げる効果がある。


『ポケットモンスタールビー』や『ポケットモンスターサファイア』をプレイした方には恐らくチャンピオンである『ダイゴ』の切り札であるポケモン……『メタグロス』が最も得意とする技と言えばピンと来るのではないだろうか。


ちなみに俺は………最初に選んだジュカインだけしかレベルあげてなかったからダイゴにたどり着く前にゲンジのボーマンダに焼き殺されまくったのを今でも忘れない。



…………そんなことはどうでもいいとして。





メタグロスのようなイカついポケモンが覚えるなんとも物騒な技をこんな可愛いピッピが覚えるとはなんとも…………





「おらーーーーーーーーーー!!」



………………なんとも不思議である。




もう一度言おう。なんとも不思議である。





「ど"お"し"て"ダ"バ"ン"ブ"ッ!?」


ピッピのコメットパンチはウナギ女の顔面を捉えた。


ドガッという非常に重い音と共に叩き込まれた硬くて重い一撃がウナギ女の顔面に叩き込まれる。

その威力は顔面に拳が文字通りめり込むほどの破壊力。



《Comet Punch!》


「ハハハッ………」


何処からともなく聞こえる技名のコール。

弾丸が撃ち込まれるように空間に刻み込まれる『コメットパンチ』の文字。



ゲームとしての演出なのだろうが、ゲームさながらの爽快感を味わうことができ、更には目の前であまりに滑稽な光景が繰り広げられたんだ。


思わず笑いがこみ上げても仕方ないよね?


あれ?悪役っぽいってか?


そんなまさか…………。


暴力を振るう快感に身を委ねるのは人間としてアウトだが、ウナギ女はもう………殴られても仕方ないだろ、色々とな。



だが、そんな俺の姿を見たジニアは……………





「勝利………


















……お前の方が悪の組織のボス、向いてると思うよ」





「ちょっ!?なんでだよ!?」



なんとも言えない表情でなんとも言えない一言を告げたのであった。




………って!なんで俺が悪の組織のボスに向いてるんだよ!?


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