3話:はじめてジム戦やりました。

自分たちのポケモンの負担とか考えたら色々言いたいことは山ほどあるが賽……もといモンスターボールは投げられたのだ。仕方がない。



「ゴー!マーイステディ!!」


ウナギ女の投げたモンスターボールがカッという音と共にまばゆい光を放つ。


モンスターボールから出てくるのはなんだ?

みずタイプだからギャラドスとかその辺か?

それともでんきタイプ対策にみず・じめんタイプのウパーとかその進化形態のヌオーか?



しかし………現れたポケモンは意外なものであった。






「ぬめ~~………」


「「「「は?」」」」


「あ、かわいい」


そいつは一言で言えばナメクジのような姿をしていた。

つぶらな瞳に、小さな体。

そしてナメクジよろしく常にぬめぬめした体液を分泌している。


このポケモンはなんたいポケモンの『ヌメラ』。


…………ドラゴンタイプのポケモンである。



「……なんでヌメラ?」


数多くの出来事に困惑してきた俺も、ここまで来たらもう呆れることしか出来ない。



………何度も言おう。ヌメラはドラゴンタイプ。

ドラゴンタイプなのである。

別にみず・ドラゴンタイプという訳ではなくただのドラゴンタイプなのである。



「ここはみずタイプのジム!ナカムラジム!

みずタイプのヌメラを使うのは当たり前でしょ!」


「わ、わわわわ我が女王?ヌメラはみずタイプじゃなくて、ドラゴンタイプだよ?」


「…………え?そうなの?」


「「「「…………」」」」


…………やっぱり、こうなるよね。


ウナギ女をフォローする訳じゃないけど、ヌメラの見た目だとみずタイプって誤解しちゃうよね。

ちなみにヌメラはここから更にヌメイル、ヌメルゴンって進化していって徐々にドラゴンらしい見た目にもなるしアニメでは主人公のサトシも手持ちに入れてたポケモンなんだ。


しかし………進化させる前のヌメラは『最弱のドラゴンタイプ』とまで言われてるポケモン。



とっても気が弱いポケモンなのだ。






だから…………




「ぬっ、ぬめぇ~!」


「だっ、大丈夫だからヌメラ!怖がらないで!!」


俺のムチュールや、ジニアのオオタチを見ても、半泣きになり、トレーナーのウナギ女の胸元(正式に言えばシビルドンのだが)に飛び込んでしまう。



「ぬめぇ~!ぬめぇ~!!」


「大丈夫!大丈夫!あなたのお友達もいるから!ねっ?

……出ておいで!」


ウナギ女はまたもやモンスターボールをどこからもとなく取り出すとモンスターボールを投げる。

………ていうかどこからモンスターボールを出した?
そしてシビルドンの腕のはずなのにどうやって動かしてる?


まぁ、ツッコミ入れてても仕方ないんだけどさ。



「たまっ!」


「「…………」」


「あ、かわいい」


ノゾミが2体目に繰り出してきたポケモンを見ればまた閉口してしまう。


ジニアに至っては顔文字みたいな顔をしてる。


(。・´д`・。)


そう。こーんな顔。

ていうかのえるん。“コイツ”も好みなのか。



ちなみにウナギ女が繰り出したポケモンは、今度は正真正銘、みずタイプのポケモンだ。

ただ見た目に相当クセがある。


なんというか………人面オタマジャクシ。

頬には振動波を放つヘッドホンのような器官を持っているがそのインパクトのある顔が目を引く。

しかもマロ眉のせいで、絶妙に腹立つ顔に仕上がっている。


このポケモンはおたまポケモンの『オタマロ』。



「ぬめー!」


「まろー!」


ヌメラはオタマロを見たとたん、笑顔になり、オタマロの元へ飛び出す。

オタマロはスタジアムをビチビチと跳ねながらヌメラと戯れる。


なんとも和んでしまう光景だ。


これ本当にジム戦か?と問いただしたくなるくらい。



「…………なぁ、あのオタマロってポケモンだけど」


「どうした?」


俺たちのポケモンも困惑しきってる中、ジニアは戸惑いながらも、俺に向かって一言。



「………顔、ノゾミに似てね?」


「確かに………」


うーん、そう言われるとそうにしか見えなくなってきたぞー………。
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