3話:はじめてジム戦やりました。

「ムチュール!」「モコ!」


「アリゲイツ!」「ウオノラゴン!」


俺はムチュール、ジニアはエルフーンを繰り出す。


そして、ジムトレーナーのふたりは……。


ケイツの方はトサカが生えた青いワニの姿をしたみずタイプのポケモン『アリゲイツ』。

ウオズの方は魚のような上半身を恐竜の下半身、それも尻尾に強引に接合したかのような珍妙なみず・ドラゴンの複合タイプのポケモン『ウオノラゴン』。


どちらもみずタイプのポケモンを繰り出してきた。



「あ、なるほど………『ゲイツ』だからアリ『ゲイツ』なのか」


「ゲイツじゃない、ケイツだ」


俺のボケに律儀に反応してくれるジムトレーナー。

うん、なんかNPCにしては濃いというか、なんというか………。


だが、問題はアリゲイツの方でなくウオノラゴンの方。


アリゲイツは人間の子供よりやや小さめの大きさに対し、ウオノラゴンはノエルが森で捕まえてたアーボより大きい。

後で調べたが、ウオノラゴンは平均して2.3mほどの全長を誇るらしい。



「ムチュール、大丈夫か?」


「むっちゅっ!!」


俺は少し心配になってきたので、ムチュールに声をかける。

はじめてのバトルで大柄のポケモンが出てきたのだ。


怯えて泣き出すのではと不安になったのだ。


しかし、ムチュールは俺の予想を裏切りやる気満々……全く、頼もしいぜっ!



「じゃあ行こうか!ムチュール!“こなゆき”!」


試合の始まりと共に、ムチュールへ技の指示を飛ばす。


ムチュールはこおり・エスパータイプというなかなか珍しい組み合わせの複合タイプのポケモンだ。


だからこそエスパータイプの技に加え、こおりタイプの技も使えてしまうのだ。



「むぅぅぅ…………ちゅうぅぅぅぅ!!」


すうっと息を吸い込むと、冷たい息吹を放つ。

それは周囲の水分をも凍てつかせ、さながら技名の粉雪のように目の前の相手………ウオノラゴンに吹き付けられる。



「ウォォォッ!?」


こなゆきを受けて仰け反るウオノラゴン。

みず・ドラゴンタイプのウオノラゴンには2倍のダメージを与えられる“こうかばつぐん”にはならないものの、まずまずの出だしだ。



《…………こなぁぁぁぁゆきぃぃぃねぇ!!心までし~ろく染~められたなら♪あぁあぁん♪》


だが、ムチュールのこなゆきがヒットしたと思った途端、どこからともなく歌が流れてくる。

しかも歌ってるのは勇騎さんだ。


勇騎さんなりにバトルを盛り上げてるつもりなんだろうけど、これじゃターミ○ーター2のBGMを『醤油の発注多い♪多い♪』ってアレにしてるのと変わらんぞコレ。



………え?例えが分かりづらい?


うるせぇ、こまけぇこたぁいいんだよ!



「………なにこれ?コドオロメン?コドオロメンなのこれ?」


「昨日の晩はコドストラロピテクスだったしな」


なんとも締まらないムチュールのファーストバトル。


まさに前途多難だが………唯一の救いはムチュールがちゃんと戦えていることだ。


………バトル終わったらムチュールにチューしてあげよっかな。
2/25ページ
スキ