2話:希望の担い手(笑)が人間辞めてました。

「………で、どーするよコレ。

てかなんか入ってるぞコレ」


動画の撮影を終えて、スマホをしまうとノエルのラジカセを見て一言。


見てくれはどこにでもありそうなフツーのラジカセだ。

しかもよーく見たら中に入ってるのCDじゃなくね?
なんか板状のモノが入ってるけど………



「あぁ、カセットテープだな」


「カセットテープ?なにそれ?」


「………知らねーのか?CDが普及する前はコレで音楽録音してたんだぜ?」


「うっわ………マジか………」


はじめてみるけどコレでマジで音楽聞けんの?
ちょっと凄くね!?


ちょっと興味そそられるけど流石に再生するのはやめておこう。



だってユーキド博士が送ってきた発明品だぜ?絶対危な…………



「押すっとな」


「「ノエルちゃんんんんんんん!!!」」



──言った傍からこれだ。


ノエルはラジカセのスイッチをなんのためらいもなく押した。



アナログの少しだけこもった音声。

音質は現在普及しているデバイスと比較してもお世辞にもいいとは言えない。

しかし、どこか暖かみのある懐かしさを感じる、そんな音声。


軽快な心地いいリズムを刻む音楽なのだが…………あれ?なんか聞いたことあるぞー?



「~~♪」


「の、ノエルちゃん……?」


ここでノエルに異変が起こる。

なんとノエルが音楽に合わせて軽快にリズムを刻み始めたのだ。



以前より明るくなったが正直この子はそんな人前で踊れるような子ではない。


しかし………



《ヘーイ!……egoistic~♪》


「「ノエルちゃんんんんん!?」」


……音楽に合わせて踊り出した。


こうして内向的なノエルが踊り出したくらいだ。


俺がその沸き起こる衝動に抗えるわけもなく………




《…………ヘーイ!egoistic~♪》


「勝利もォォォォォ!?」


ジニアを取り残し、ノリノリで踊る俺とノエル。

ラジカセから聞こえる歌声が勇騎さんの歌声に聞こえるが………もはやどーでもいい。



「やめろ……いい加減にしないとふたりとも怒るぞ!?

………ヘーイ」


《………egoistic ~♪》


結局ジニアも衝動に抗えなかったようで踊り出してしまう。



「………5……6……7……8!」


「いぬぬわんっ!」

「ぴっぴっ!」

「むちゅー!」



そして曲が終わると共に俺たち三人は決めポーズをとる。

俺のポケモンたちが一斉に歓声をあげる。


どうやらポケモンたちにはウケたみたい。



「…………なにやってんだろうな、俺ら」


「だな……」


「…………なにこれたのしい」


「「ノエルちゃん!?」」



………本当になにやってんだろ、俺ら。
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