2話:希望の担い手(笑)が人間辞めてました。

「………で、何の用?俺らもう休みたいんだけど」


少々呆れつつも俺はユーキド博士を見据える。

隣にいるジニアもこれまでに見たこともないような冷たい視線を送っている。



………まぁ、そうなるよね。



バトルもしたし、町も2つほど超えたし流石に今日はここいらで休みたい。


………もう、狂人と化した連中の相手は御免被る。



『そんなことはどうでもいい。

我こそは狂気のマッドサイエンティスト……プロフェッサーユーキドだ!!

ぶぁっ!!』


画面越しのユーキド博士は来ていた白衣を自分で脱ぎ捨てるとカッコつけてポーズまでキメる

……自分で効果音までつけて。


なんというか……………イタい。



『いいかよく聞け……私の目的は世界の支配構造の変革にある。

混沌によるカオスから産み出される発明によりポケモンの世界を支配することだフフフ………』


「混沌とカオスで意味被ってるんだけどな」


ジニアの冷たい一言。


ここまで来たらもう呆れとか怒りとかそんなものは感じていない。


騒動が終わった後にでも勇騎さん本人にイヤというほど見せつけるために
俺は先ほどからスマホで動画を撮影している。



『ところでこの俺のガシャットによるポケモン世界での生活はエンジョイして頂けているかな?フフフ』


「いちいちフフフって入れなきゃ喋れねーのかテメェは」


『そうかそうか。ここに私の発明品ユーキドラジカセがある……これを特別に貴様ら哀れなエイパム共にくれてやろう』


「ただのラジカセじゃねーか。ていうか人の話聞けよ」


ジニアの機嫌がだんだん悪くなっていく。


今にもテレビを叩き壊しかねないほどの怒りようだ。


そりゃそうだよね。これは俺も少しイラっときてる。




『今からこれを使ってうぉもしろい実験をご覧にいれよう。

さぁ………実験を始めようではないか!


ファーッハッハッハッハッ!!


ファーッハッハッハッハッハッ!!


ファーッハッハッハッハッハッハッ!!』


『うるせーぞコラ!何時だと思ってンだ!!』


『サーセン!』


ブツッ………


ここで映像は途切れ、テレビにはポケモンと人間による料理番組が映し出される。


うーん………これはアレか?

熱出して寝込んだ時に見る夢か?




そしてその直後………





「…………勝利。これ、なぁに?」


「「うげっ」」


ベッドから体を起こしたノエルの手には、ユーキド博士が持っていたあのラジカセが握られていた。

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