2話:希望の担い手(笑)が人間辞めてました。

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ナカムラシティ・ポケモンセンター。


ミチノリ社長に案内される中、俺とジニア、ノエルの3人はポケモンセンターへとやって来た。

ムラセタウンのポケモンセンターのロビーでジニアと話していたときはそこまで注意深く見てなかったが、どうやらポケモンセンターは2階が発達した通信技術を利用した対戦や交換が可能な施設があり、そんな2階の一番奥の受付からトレーナーとポケモンの宿泊施設に行けるようだ。


俺たち3人はミチノリ社長に誘われるまま、エスカレーターに乗り、2階へ行き、そこから一番奥の受付まで歩く。



「まさかポケモンセンターの2階に宿泊施設があるとはねェ……カルチャーショックだぜ」


ここでポケモンは旧作をかじった程度のオオタチ大好きお兄さんが一言。

確かにカルチャーショックだ。


て言うかゲームではポケモンセンターの2階って基本的にポケモン勝負とポケモン交換するところがあって、『ルビー』とか『サファイア』だったら『レコード交換』そんなのがあるだけだったよね。

『スカーレット』『バイオレット』だとポケモンセンターは屋外の簡素なものになってたけど。


こっちのポケモンセンターは、まさか宿泊施設がある豪華なものになっていようとは………。



「トレーナーに成り立ての頃はそんなものですよ。

昔は陽が沈んだらキャンプの準備をして野宿をしながら各地を練り歩いていたみたいですが、今ではキーユウ地方も都市開発が進み様々な地方から人が集まり、このキーユウ地方にも人も多くなりました。

ですから、衛生上のこともあり昔みたいにリーグ制覇までオール野宿ってのは難しくなってるみたいですよ。

それに都市開発の進展に伴い、ポケモンセンターの数も劇的に増えましたからポケモンセンターに宿泊するトレーナーも多いですね」


「なるほど………」


「それに都市開発の進展により、様々な人が集まるようにもなりましたからね。
やはり治安も昔と比べて悪くなってますかね……。

今日リクニシを襲ったイタダキ団も最近になって活動を開始した組織です。

それに女の子もいるんだ……なるべくはポケモンセンターに泊まるようにしてください」


「「「はーい……」」」


──なるほど、この点は俺たちの現実世界と似てる。


俺たちの現実世界では『四国遍路』というものがあり、徳島県、高知県、愛媛県、香川県の4県を徒歩などで各地にある88箇所のお寺を回り四国を一週するというものだ。


こちらも野道が多かった昔とは異なり、舗装されたアスファルトを歩くことの方が多いと聞く。

また住宅が密集する地域では野宿自体を快く思わない人もいるし、食料の買い出しのために人が密集するスーパーやコンビニにも行かなければならず、必然的に人の密集する場所にも行くので衛生面にも気を配らなければならない。

だから四国遍路に望む人々は、民泊やホテルなどの宿泊施設を事前に予約していたりもするのだが……やはりリスクを犯してでも野宿をする人も多く、体験した人からは不良や不審者などのいざこざなど、“それなりに”闇の深い話が聞ける。


………まっ、ポケモンの世界に現実世界の話を持ち込むのはここまでにして。



「受付、終わりましたよ」


「ありがとうございます、ミチノリ社長!」


「いえいえ。私に出来るのはこのくらいてますから」


俺が物思いに耽っている間にミチノリ社長は受付を済ませてくれていたようだ。


俺はミチノリ社長と握手を交わし…………



「本日はありがとうございました」


「いえいえ、また我が社の方にも遊びに来てください。

お休みください、では……」


手を離すとミチノリ社長は来た道を戻っていく。

現実世界で殺し合いをしていた仲だとは信じがたい。


しかし………なんでミチノリ社長といいユーキド博士といい、リオやクルスさん、それからジ……ミミッキュ仮面といい。


ライダーガシャットのバグのせいか、元の世界のことを忘れてしまったんだろうか。



そうなると、俺たちだけ楽しんでるのはちょっと申し訳ないな………。
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