1話:ポケモンの世界になりました。

「おのれ!サボネア!ニードルアーム!」


「サボッ!」


サボネアの腕に蓄積されるエネルギー。

やはりクルスさんは攻撃技しか使ってこない。


ポケモンの育成にはトレーナーの性格が反映されるモンだ。

直情的で頭に血が登りやすいこの男は……やはり攻撃技でガンガン攻めてくるだけ。



「ヒメッ!奴に攻撃させるな!“かみつく”攻撃!」


サボネアが攻撃するより早く、ヒメはサボネアに肉薄する。


元の世界から持ち込んだバイクに変形するカラフルなわんこ。それがヒメ。



イレギュラーながらも“なんか色がおかしいワンパチ”としてこの世界では活躍してくれる。


そういうイレギュラーさもあってか、本来のワンパチ以上のポテンシャル発揮してないか?


………え?それはただの親バカだって?いやいやそんなことはないよ。



だって現に………




ガブッ



「サボッ!さぼ~~~~~~っ!!」


「ちょっと待てサボネアッ!落ち着けェェ!

ぎゃあああああああああ!!」


ヒメに噛みつかれると、サボネアは尋常ではないほどの痛がり様を見せ、ヒメを振り払うと泣きながらクルスさんに抱きついた。


再びサボネアの全身の棘をその身に受け悶絶するクルスさん。




──これが狙いだ。



本来かみつくという技はふいうちに近い形で噛みつくことで相手ポケモンを怯えさせ怯ませることができる技。


あの甘えん坊でいかにもトレーナー離れ出来なさそうなサボネアに噛みつけば、あの子はたちまちトレーナーに泣きつくと踏んだんだ。


そして狙い通り、それが起こった。



これもヒメの小柄故のすばしっこさとその潜在能力があってこそ。



まぁ、なんかクルスさんには悪い気がするけど、これでTHE ENDだ。




「ジニア!頼む!」


「あぁっ!モコッ!ぼうふう!!」




「えぇぇーーーーー………

るぅぅぅぅぅーーーーー!」


これがとどめの一撃。


エルフーンは高速で飛び回り、名前の通り暴風を発生させる。

その見た目からエルフーンの方が飛んでいきそうなものだが、何故かエルフーンはこの技を覚えることが出来るのだ。




「………ふーーーーーーーんっっ!!」



エルフーンの叫び声と共に放たれる“ぼうふう”。

それと同時にヒメは大道芸並みの身のこなしで暴風を回避する。



エルフーンの狙いは先ほどしびれて動けなくなったリオのロゼリア。

草木や花すら吹き飛ばしてしまう風、または種子や果実をついばみ空を飛行する鳥ポケモンたちがカテゴライズされているのが『ひこうタイプ』。

そんなひこうタイプの技は草木や花、種子などをイメージさせられるポケモンたちがカテゴライズされている『くさタイプ』のポケモンには効果バツグン。


だからこそ………



「ろっ………ロゼェェェェ~~~~!!」


「ロゼリアぁぁぁぁ!」


美しき薔薇を象りくさタイプのロゼリアにはこの暴風を防ぐ術などない。


ましてやマヒにより痺れている体では回避する術もない。


ロゼリアの体はぼうふうにより吹っ飛ばされてしまう。


そしてロゼリアが吹っ飛ばされた先には………



「ちょっ、ちょっと待て何で私がぁぁぁぁ!!」


そう、クルスさんとサボネア。


本来はぼうふうはゲームではダブルバトルにおいても一体にしか攻撃できないのだが、体感ゲームとなったこのゲーム内ではこうして吹っ飛ばしたポケモンを他のポケモンにぶつけることでダメージを与えることが出来る。


それは現にクルスさんがサボネアに抱きつかれることで痛みを感じていることから、ある程度現実世界の法則も適用されることが実証済みだ。




───それでは読者の皆さん、ご唱和ください。




「…………ナーイスショーット☆」






「サボーーーーーッ!!」


「ロゼーーーーーッ!!」


「グエーーーーーーーッッ!!」



ぼうふうを直接喰らい、吹っ飛ばされたロゼリア。
それから吹っ飛ばされてきたロゼリアにより巻き添えを喰らったサボネアとクルスさん。



こうして2匹+1人は仲良く吹っ飛ばされましたとさ。まる………って、俺は誰に話してるんだろ?



………ってか、これじゃどっかの原始人……じゃなくて希望の担い手みたいじゃねーか。
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