1話:ポケモンの世界になりました。

「なるほど………くさタイプの技じゃくさタイプのあの2体には決定打を与えられねーってか………!」


ゲームの中とはいえ、ジニアと俺は共闘している。

それもポケモンのダブルバトルという形で。



………それにしても新鮮な光景である。



元の世界ではいがみ合っているような仲で、この男は何でもこなせるイメージがあった。

しかし、こうしてポケモンの技やタイプの相性に考え込む姿を横で見る日が来ようとは……。



「………ジニア、エルフーンなら“ぼうふう”使えるんじゃない?」


「……“ぼうふう”?確かにそんなような技、覚えてたが」


「ひこうタイプの技だよ。

一定確率で相手を混乱させられるし、決定打も与えられる。

俺のヒメと通る技なさそうだし……頼む」


「作戦会議している場合ではないぞ!

サボネア!ニードルアーム!!」


「さーぼねーーーー!!」


まるで言葉を遮るようにして放たれる一撃。

棘だらけの腕にエネルギーを集中させて殴る“ニードルアーム”。

サボネアやその進化形態であるノクタスが得意とする技だ。



「モコっ!避けろ!!」


「えるっ!」


しかし、ジニアのエルフーンはそれをその身軽さを活かして回避するが………



「ボクを忘れてない!?エルフーンにたねマシンガン!」


「っ!?」


「っ!モコッ!」


避けたところにロゼリアのたねマシンガンがエルフーンに襲いかかる。

効果こそいまひとつであり、たいしたダメージではないもののエルフーンはその直撃を喰らってしまう。



「技なんて出させないよ!ロゼリアっ!“ヘドロばくだん”!」


「やべっ!ヒメっ!ロゼリアの攻撃の軌道をそらしてくれ!“ほっぺすりすり”!」


ロゼリアの両腕の薔薇からべちょっという音と共に凄まじい匂いを放つ汚いヘドロが滴り落ちる。

これが攻撃の合図。

あのヘドロを手榴弾のように投げつける………もしくは飛ばすのだ。


喰らえばあのヘドロの成分で毒をもらってしまうこともある。


そして……攻略の糸口であるぼうふうを覚えたエルフーンにあの攻撃を当てさせる訳にはいかない。


くさタイプとフェアリータイプの複合タイプであるエルフーンだが、くさタイプもフェアリータイプもどくタイプの技は倍のダメージを受けてしまう。


だからエルフーンではどくタイプの技を通常の4倍のダメージで受けてしまう。




………おそらくエルフーンにあのヘドロばくだんは耐えられない。



だから、ここはヒメに妨害してもらう必要があるのだ。



「イヌヌワンッ!イヌヌワ~~ンッ!」


「ろっ、ロゼっ!?」


幸いヘドロばくだんが発射されるより早く、ヒメがロゼリアの懐に潜り込み、その頬に貯めた電気を頬擦りと共に解き放つ。


攻撃技としてはロゼリアには効果はいまひとつ。

ただでさえ威力の低い技が更に低くなり、殆どダメージがないだろう。



───だが、これでいいんだ。


ヘドロばくだんの射線は思いっきりズレて検討違いの方向へ飛んでいき、エルフーンには当たらなかった。




そしてこの技には……副次効果もある!





「ロッ………ロゼッ………!」



「ロゼリア!?」



「目論み通り………かな」



ほぉら………決まった。



リオのロゼリアは体がしびれて、地面に片足をついている。

これでしばらくは動けないだろう。


でんきタイプの技である“ほっぺすりすり”は威力こそ低いが確実に相手をマヒさせる。

戦況が目まぐるしく変わるバトルにおいて戦闘中に動きを阻害されることは無力化に等しい。


これで、あとはサボネアの技次第だけどエルフーンを止められるポケモンはいないって訳。



さぁ、あとはヒメで妨害しながらジニアのエルフーンが相手ポケモンを捌いていくだけだ!
35/40ページ
スキ