1話:ポケモンの世界になりました。

「……そいつもポケモンとして認識されてるんだ。パラメーター出るんじゃねーか?」


「ていうかどうやってパラメーター出すのさ、これ?」


「………念じる、とか?」


いや、わかんねーのかよ………まぁいいさ。

念じる念じる………っと。



「………あ、出た」


パラメーター画面出ろ!と念じた途端、ヒメの頭にパラメーター画面が現れる。



まさかホントに出るとは…………。



……いやいや!こんなテキトーなノリでいいの!?

色々と大丈夫か、このゲーム!?



「………そしてその画面をスワイプすればパラメーターだけじゃなくて技も見れる」


「わ、わかった………」


しかし、そこはジニアの指示通り出現した画面をスワイプする。

するとたしかに本家のゲームさながらに各種パラメーターが表示されるだけではなく、しっかりと使える技も閲覧できた。



「えーっと、使える技は…………


なになに…………?

“たいあたり”、“しっぽをふる”、“ほっぺすりすり”、“かみつく”………

へぇー……最初の割には結構戦えるんだな」


技を確認するとポケモンもどきのヒメでも意外と戦えたことを知り、納得する。

そっか。最初からヒメに頼ればよかったのか……

まぁ、済んだことを嘆いても仕方ないのだけど。



「………で、ジニア。

さっきの話の続きだけど…………」



「あぁ、それだけどな………」


ジニアはミネラルウォーターを飲み干すと、真面目な表情をする。


こっちに来てからふざけてるとはいえ、やはり組織の指導者。

思わず圧倒されてしまう。



「ポケモンのパラメーターが表示されている以上、ここはゲームの中の世界だってのは理解できたとおもう。

そして、ゲームはエンディングに向けてシナリオを進めていくもの。



つまりだ……ポケモンの世界を追体験しながら殿堂入りを果たせばこの世界から出られるんじゃないか?」


たしかにそれはあり得るかもしれない。


『研究所に行く』

『3つのモンスターボールを見る』

『最初のポケモンバトルを体験する』


順序や展開はかなり無茶苦茶だとはいえ、紛いなりにもポケモンのゲームと似たような“イベント”はしっかりと起きている。


もしかしたらゲームクリアさえすれば、この世界から出られる!



でも………




「でも出られるって保証は………」


だからといって出られる保証はない。


何故ならばポケモンというゲームは自由度の高いゲームだからだ。

そしてこれは正規のポケモンのゲームではなく、あくまでも勇騎さんが作ったゲームだ。


勇騎さんオリジナルの要素をぶちこんできてるはずだ。



「まぁ、これはあくまで仮説だがな。

……だけど何もしないよりかはマシだろ?」


「だよな………」


ここで何もしないよりかはずっとマシだというのは俺も同感だ。


俺はジニアの言葉に頷くと立ち上がる。


似たようなイベントは追体験したとはいえ、取りこぼしもあるのだ。



「………まずはポケモン図鑑ゲットしなきゃだろ!」


「マジか………」


「図鑑がなきゃストーリー進まないだろ?」


そして俺たちはイベントの取りこぼし……そう、『ポケモン図鑑の入手』を成し遂げるべく、コドータウンのユーキド研究所を目指して歩き出すのであった。
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