2話:魔法少女としてがんばります!……ってどおしてだよォォ!!

「え……………?」


「………今までそうやってアンゲロスになった人たちの命を奪っておいてよく言えるよね」



彼女から放たれる冷たい言葉。



───否定はしない。



母親を殺し、仲間の孤児たちを殺し…….
俺たちから大切な人や居場所を奪ってきた“アンゲロス”。


奴らの正体はヴァイトップなる宝石によって怪物化した“人間”………
いや、ヴァイトップによって意識と体を奪われた人間の成れの果て。


そのなかには人間としての意識を保ち、人間として生きていくことを望んでいたやつもいた。



でも……それが真実か否か見定める目なんてなかった。
それに、あの時はそんな事どうでもよかったんだ。



身近な誰かのために戦うってことは要するに『護りたいものは護って、倒したいやつは倒す』って事だ。

俺はこれを『選り好み』だって思ってる。



少なくとも俺はヒーローになるつもりはなかった。

だからそんな風に護りたいものを『選り好み』する資格もない。




それに………その理屈のせいで護りたいものに『選ばれなかった奴ら』はどうなるんだ。


誰からの手も差しのべられずにただ惨めに死ねと?



───だから俺は例外は作らなかった。


『アンゲロスとそれを利用するやつは誰であろうと殺す』、『関係のない人間はクズだろうが護る』。



それが絶対的な『線引き』。俺の信念。


それを護るためなら誰が犠牲になろうと仕方ないって思ってた。



そしてあの時は学のない俺たちは……
誰にも『助けるべきもの』として選ばれなかった俺たちは……

──生きるためにこの道を選ぶしかなかった。




…………もう、駅のトイレの中で悪い大人たちに怯えながら夜を明かす生活は嫌だったから。


もう、栄養失調で衰弱していく仲間を“見送る”のは嫌だったから。




でも、『選り好み』していた。

知らず知らずのうちに。


そして後悔していた。罪悪感を感じていた。



そして俺は───自分で決めた“信念”すら貫き通すことすら出来なかった。




あのまま狂うことが出来ればどれだけ楽だったろう。


あのまま痛みが分からなくなればどれだけ楽だったろう。




………やっぱり俺には無理だって思い知らされた。


だから輝が、勇騎さんが、理緒が、セッテが、ノンたんが………他の仲間が………

護るべきものとそうでないものを『選り好み』してる奴らが憎かった。



まやかしの希望を振りかざして。
自分の大切な人は護るけど敵だと判断した奴は殺す。

その癖、自分のことは棚に上げて他人には仮面ライダーの道を説く。





───最悪だった。全員殺してやろうとすら思った。



何が“仮面ライダー”だよ。

何が“正義の味方”だよ。


───何が“希望”だよ。



だから自暴自棄にもなった。
自分でもどうしていいか分からなかった…………。


だから堕ちるところまで墜ちて、死を望んだ。



ライダーたちの……いや勇騎さんの手で殺されることを望んだ。




でも………そんな俺を助けてくれたのが勇騎さんだったんだ。


体を張って、命すらかけて俺をここに引き戻してくれた。



だから俺は………………!




「………」


「関係のない人を巻き込んで、人として生きていくことを望んだアンゲロスにまで暴力を振るって………

貴方たちのせいで、大切な人を目の前で殺された人だっていたはずだよ?


……そんな貴方が“それ”を望んでいいって思ってるの?」



でも…………何も言い返せない。

ドラゴンのお姉さんの言う通りだ。


俺にそれを望んでいいなんて思えない。


誰かから大切な人を奪っておいて、自分だけは大切な人の命が救われることを望むなんて許されない。





────許されるわけがないんだ。
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