2話:魔法少女としてがんばります!……ってどおしてだよォォ!!

「へっ………?っ……!」



────何が起こったか分からなかった。



だってそうだろう?

ミラーモンスターだとか、魔化魍だとか………。


仮面ライダー世界にも比較的巨大な種族の異形は数多く存在する。


しかし、だ。



そのどれにも当てはまらない目の前の神龍は突如として眩い光に包まれ、その眩しさに目を背けてしまう。



そして、光が収まった頃にはなんと────




「………え………?」


なんと長めの金髪をポニーテールにしたお姉さんの姿へと変化したではないか。


黒いコートみたいなやつ羽織ってるけど、なんか髪とか光ってる………。


その眩しさをもろともせず、迫ってきた三体のスマッシュをなんと……生身でいなしている。



「………貴方はここを一歩も動かなくて大丈夫。

すぐに終わらせるから」


「………」


女性となった神龍……いや、今は『ドラゴンのお姉さん』と呼ぶか………はリベルアシッドスマッシュの攻撃から俺の身を守るように、攻撃を捌きつつ、振り替える。


大きめの赤く輝く瞳と、女性らしいグラマナスな体型の彼女は、女神のように神々しくて………

なんだろうな、のえるんとは違うタイプの『美女』。

そうだな………今いる仲間でいうならピンクの長髪と意外とキリッとした顔立ちが特徴のセッテとか、モデル体型で黒髪の長いサイドテールが特徴の理緒とか………


どちらかというと『可愛い系のロリータガール』ではなく『綺麗系の大人のお姉さん』と言った感じ。



まさか竜からお姉さんになるとは………これが本当のファイナルフォームライドってやつ?

………いや、全然ちがうよな。



俺は彼女の言葉に頷くも、少しだけ“違和感”を感じていた。


………本当になんなんだろう、この“違和感”。



来栖さんに向かって名乗る時も、感情の起伏
が少なすぎるというか、冷静すぎるというか………。



その違和感………無機質さに合わせて、その髪や瞳が輝いている様も相まって、彼女が絶対的に人間を超越した存在なのだと嫌でも理解してしまう。




「ーーーーーー!!!」


「ハァッ!」


バイカイザーとヘルブロスをいなし、襲いかかるリベルアシッドスマッシュの首もとをドラゴンのお姉さんの回し蹴りが捉える。


首もとに蹴りを喰らったリベルアシッドスマッシュは、吹っ飛ばされ地面に叩きつけられる。



「うそ…………だろ……………」


ドラゴンのお姉さんのその“強さ”は圧倒的であった。


俺のせいでスマッシュにされてしまっているとはいえ、勇騎さんは俺たちの中でも最強クラス。

現に俺たち仮面ライダーの同盟………『ライダー同盟』の中で頭ひとつ抜きでて強いのは勇騎さんと将さん、それからここにいない神崎さんの3人だと俺は思っている。

だけど、そのライダー同盟の事実上のリーダーは………事実上、俺たちを纏めているのは勇騎さんなんだよ。



誰よりも影で努力して、誰よりも俺たちの事を考えてくれて、誰よりも俺たちが戦えるようにサポートしてくれる。



そんな優しさと勤勉さが勇騎さんの強さだって俺は信じてる。

スマッシュにされているとはいえ、コツコツとひたむきに積み上げてきた勇騎さんの強さは健在な“ハズ”だ。



それなのに……そんな勇騎さんの変身するリベルアシッドスマッシュを彼女は生身で相手取っている。



───そんな俺たち人間がどうあがいても辿り着けない領域であるドラゴンのお姉さんの戦う姿を間近で見せられれば、俺だって何を言っていいか分かんなくなるよ。




「何をしている!!神龍とはいえ奴は変身すらしていない小娘だぞ!?」


「伊達に神龍を名乗ってる訳じゃないの。

………甘くみないで」



ドラゴンのお姉さんは『世界の均衡を守る者』を自称していた。




でも、待ってくれ。



───彼女は俺たちの『味方』なのだろうか?



最悪、奴ら『Re:BUILD』とも俺たち『ライダー同盟』とも違う第三勢力だって可能性だってある。



だってそうだろう?


俺たちの世界では姿こそ違えど、世界中で龍を神として崇めてきた。

だけど、その一方で自然の脅威の象徴……すなわち恐怖の対象として恐れられてきたのも事実だ。



そんな超常を司る者たちが人間………それも一個人の都合を理解しようするとは思えない。




「ぐっ…………!」


俺は立ち上がろうと必死にもがくが、やはり体に力が入らない。

さっきの負担の肩代わりの代償が来たんだ。



………もう、体も動かせそうにない。



「勇……騎、さん…………!」


スマッシュという怪物はネビュラガスを浴びることで人間が怪物となった姿だ。

そして低級のものは倒せば人間へと戻せるものの、強化を重ねていく度にその危険性は増していき、倒した瞬間ベースとなった人間は死を迎える。



───そして………恐らく汚染されたように全てが黒く染められたアシッドスマッシュはそのスマッシュの究極形態だ。


ネビュラガスを浄化できるビルド・ジーニアスフォームなんて仮面ライダーもいるが、それに変身できる人間は、今ここでスマッシュにされた勇騎さんだけ。



「待っ………て、ドラゴンの………お姉、さん。

その人、は……………!!」



早く知らせなきゃ。

早く止めなきゃ。



じゃないと勇騎さんが………殺されてしまう!!
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