1話:魔法少女始めました!……ってなんのこと!?

「はっ!」


「せぁっ!!」


光の奔流を纏った翼により高速で飛び回るリベルをUFOの瞬間移動により追随し、互いに剣と剣をぶつけ合い、何度も何度も切り結ぶ。


さすがは“もうひとりのライダーの王”。


その力は今までとは桁違いだ。



《Set up!Twin!シンスペクター!ダブル!ルナトリガー!》


ふたりのライダーの幻影が折り重なる。


それと同時に奴の背後に現れるのは空を覆わんがばかりの量の銃。


《シンダイカイガン!ラストバレット!トリガーフルバースト!フュージョンフォーメーション!!》


空を覆わんがばかりの銃から放たれる無数の弾丸。

そのひとつひとつが更に拡散し、もはや拡散弾などではなく巨大な光の壁が迫って来るような感覚に陥る。

しかも厄介なことにこの光の壁として目に映るそれはれっきとしたエネルギーの弾丸であり何千、何万となった弾丸のひとつひとつが私に命中するまで………私の命を奪うまで執拗に追いかけてくる。


これが奴の“チカラ”。

全ライダー、全怪人からふたり選びその力をフュージョンさせて自らの必殺技とする。


組み合わせによっては今のように規格外の攻撃となる。



「これがライダーの王の力か……っ!」


UFOの機動力にものを言わせて動き回りながら弾丸を切り伏せ弾丸同士で相殺させ、やり過ごすがさすがにキリがない。


《EGG!CHICKEN!OYAKO-DON!MAXIMUM-DRIVE!!》


そこで私が使ったのは『卵の記憶』と『鶏の記憶』が1本のガイアメモリに内包したエッグ&チキンメモリ。

これも本来なら戦闘用などではない。

ライダーの王たる者との戦いに使用するなどもってのほかだ。



………この私以外の者が使う場合の話だが。



ディスペアーサーベルにエッグ&チキンメモリを装填するとまず現れるのは巨大な卵。


私を守るように出現した卵が弾丸を喰らう度に割れてはその熱で半熟卵となっていく。


それと同時に現れるチキンの流星群。

これも弾丸を撃ち落としていくだけでなく、リベルへの直接攻撃を行う。


「くっ………!」


光の奔流でチキンの流星群を防ぎつづけるリベル。


しかし、ここからがエッグ&チキンメモリの力の本質だ。

リベルの背後に現れる一層巨体などんぶり。

中には純白の米。


その中へチキンの流星群によってリベルが叩き落とされる。

そして、エネルギー弾を処理し終えたチキンの流星群と半熟卵もどんぶりの中へ。


やがて蓋が閉じるとどんぶりが外からでも分かるくらいに赤熱する。



これがエッグ&チキンメモリの力。

卵の記憶と鶏の記憶、2つの記憶をフュージョンさせて親子丼の記憶という新たな記憶を生み出す。


これが他のガイアメモリにない強み。


そしてその力を最大限に引き出せば、ライダーを閉じ込めた一見シュールな見た目の巨体などんぶりが処刑器具へと変わる。



そう、これは最早どんぶりなどではない。

もうひとりのライダーの王・リベルの……棺だ!



「これで………終わりだっ!」


中に閉じ込めたリベルをどんぶりごと圧壊すべく突きだした腕に力を込める。

少しずつ歪んでいくどんぶり。

それと共に光と熱も激しくなる。



しかし………



「……勝利の余韻に浸るのはまだ早いんじゃねぇか?」


リベル……呼道勇騎の声だ。


その声と共にどんぶりから七色の光が放たれる。


「なにっ………!」


そして、七色の光と共にどんぶりが真っ二つに割れ、中身を焼き払いながらリベルが姿を現す。


光の翼を広げる、その神々しさに圧巻されてしまう。



「全く………楽しませてくれる………!」


これがもうひとりのライダーの王。

全ての力を統べた者の力。


私は、かつてそんな超常そのものとも言える存在に敗北を喫したことがある。

だが、今の私はあの時の私とは違う。

こいつを打ち倒せば、私は私を超える力を手に入れられる……。

そんな喜びにうち震えるかのように、
能面のように無表情な私の顔が仮面の下で笑みに歪んでいくのを自覚した。

元の世界にいた頃には表現することすら出来なかった感情が溢れだしている。

これは私のもの。

この世界で私が手に入れたもののひとつだ。
31/39ページ
スキ