4話:今!(この世との)別れの時~♪(あの世へ)飛び立とう~♪……って、黙れや!!
────
「「……」」
結局ボクたちふたりではセッテちゃんを救うことはかなわなかった。
あれからセッテちゃんを自室へ送ると、ボクは勝利くんの部屋にお邪魔することに。
こんなことを言うのも実に恥ずかしい話なのだが、端的にいえば勝利くんの胸を借りて泣きにきたのだ。
でも……ノエルちゃんの事が頭を過ると、それもなんだか悪い気がして。
結局ボクは当初の目的すら果たせず、マグカップの中のコーヒーに視線を落として黙り込むしか出来なかった。
この日に限ってマグカップの中のコーヒーはいつになくどす黒く、あたかもブラックホールのようにマグカップのなかで渦巻いている。
ボクたちふたりの間の言葉もそのブラックホールに吸い込まれてしまったかのように、言葉が出ない。
それほどにまでセッテちゃんの様子は危ういものなのだ。
たしかにボクたちと合流したばかりの頃も辛い想いをしてきたのか若干やつれていたし、あのパンキッシュなピンクの髪も少々荒れていたように思う。
だけど、セッテちゃんが目に見えておかしくなってきたのはここ2週間ほど……そう、千花ちゃんがうちで働きはじめてきた頃だ。
ノゾミちゃんは妹分の千花ちゃんが現れたのが嬉しかったのか、すごくはりきってた……ていうか空回りしすぎてミスばっかりしていたけど……それでも合流したばかりよりいささか明るくなったように思う。
だけど、その頃からセッテちゃんを避けるようになっていった。
千花ちゃんが馴染めるように頑張っていたのか、それともセッテちゃんに対し後ろめたいことがあったのか。
それはボクたちにすら分からなかった。つい先ほどまでは。
でもまさかノゾミちゃんが既に千花ちゃんと関係を持っていたとは……。
恋愛事に関しては個人の問題でしかないが、それが同性間での三角関係という形でもつれることになろうとは思ってもいなかった。
一体、どうするのが正解だったのか。
それはたかたが10数年程度しか生きていないボクたちには分かるわけもない。
「……理緒」
「は、はいっ」
気まずい空気が流れている中、勝利くんが口を開いた。
声をかけられるとは思っておらず、体が思わずビクンっと跳ねた。
そして、勝利くんの方に視線を向けた。
勝利くんの表情はいつになく曇っており、こちらに視線を合わせようとしない。
「な、なに……?」
「結局、俺たちはセッテを追い詰めただけだったのかもな……」
「うん……」
勝利くんのいうとおりだ。
どれだけ理屈を並べても結局ボクたちはセッテちゃんを追い詰めただけ。
このままじゃセッテちゃんが壊れるのも時間の問題だ。
でも、ボクたちには何も出来ない。
功を焦ったその報いなのだろうか。
助けてあげたいという意思に偽りはない。
それでもその想いを相手が受け止めてくれないことには救うことすらできない。
結局救われるのは本人がそれを望んだ時であり、ボクたちにできるのはその背中を押すことだけ。
そして、その“背中を押す”という手助けこそが“希望”なのだろう。
人を超えた“力”と人を超えた“存在”は似ているようで違う。
現に仮面ライダーの力という形でどれだけ人を超えた力を手にしても、それを使うボクたちが無力な人間であることは変わらないし、変えられない。
そんなことは分かってる。
それでもまだ、自分にできることはあるはずだ。
ボクたちがセッテちゃんのためにできることが………
「どうすれば………」
「………」
再び部屋に沈黙が流れる。
言葉を紡ぎたいのに、出てこない。
それはきっと勝利くんも同じだ。
10数年の少ない人生経験のない中で必死にいろんなものを吸収してそれを自分の糧にして、その中から状況を打破するための答えを探し当てる。
言うのは簡単だが、それができるのはアニメや漫画の世界だけ。
──現実はボクらにそんなご都合主義を許さない。
ただただ時が流れていき、その間にも状況は悪くなっていく。
───そして悪夢に落とす、最悪の知らせがやってきた。
「勝利お兄さん!!」
勢いよく空いたドア。
声の主は千花ちゃん。
息は上がっており、なにやら焦っている様子。
その目には涙。
何か最悪な出来事が起こったのだ。
ボクたちは本能でそれを感じ取った。
「ノゾミお姉ちゃんこっち来てない!?」
「………ノンたんがどうしたんだ?」
「急に……急に叫び声上げてでていっちゃったのっ!!」
「「……」」
結局ボクたちふたりではセッテちゃんを救うことはかなわなかった。
あれからセッテちゃんを自室へ送ると、ボクは勝利くんの部屋にお邪魔することに。
こんなことを言うのも実に恥ずかしい話なのだが、端的にいえば勝利くんの胸を借りて泣きにきたのだ。
でも……ノエルちゃんの事が頭を過ると、それもなんだか悪い気がして。
結局ボクは当初の目的すら果たせず、マグカップの中のコーヒーに視線を落として黙り込むしか出来なかった。
この日に限ってマグカップの中のコーヒーはいつになくどす黒く、あたかもブラックホールのようにマグカップのなかで渦巻いている。
ボクたちふたりの間の言葉もそのブラックホールに吸い込まれてしまったかのように、言葉が出ない。
それほどにまでセッテちゃんの様子は危ういものなのだ。
たしかにボクたちと合流したばかりの頃も辛い想いをしてきたのか若干やつれていたし、あのパンキッシュなピンクの髪も少々荒れていたように思う。
だけど、セッテちゃんが目に見えておかしくなってきたのはここ2週間ほど……そう、千花ちゃんがうちで働きはじめてきた頃だ。
ノゾミちゃんは妹分の千花ちゃんが現れたのが嬉しかったのか、すごくはりきってた……ていうか空回りしすぎてミスばっかりしていたけど……それでも合流したばかりよりいささか明るくなったように思う。
だけど、その頃からセッテちゃんを避けるようになっていった。
千花ちゃんが馴染めるように頑張っていたのか、それともセッテちゃんに対し後ろめたいことがあったのか。
それはボクたちにすら分からなかった。つい先ほどまでは。
でもまさかノゾミちゃんが既に千花ちゃんと関係を持っていたとは……。
恋愛事に関しては個人の問題でしかないが、それが同性間での三角関係という形でもつれることになろうとは思ってもいなかった。
一体、どうするのが正解だったのか。
それはたかたが10数年程度しか生きていないボクたちには分かるわけもない。
「……理緒」
「は、はいっ」
気まずい空気が流れている中、勝利くんが口を開いた。
声をかけられるとは思っておらず、体が思わずビクンっと跳ねた。
そして、勝利くんの方に視線を向けた。
勝利くんの表情はいつになく曇っており、こちらに視線を合わせようとしない。
「な、なに……?」
「結局、俺たちはセッテを追い詰めただけだったのかもな……」
「うん……」
勝利くんのいうとおりだ。
どれだけ理屈を並べても結局ボクたちはセッテちゃんを追い詰めただけ。
このままじゃセッテちゃんが壊れるのも時間の問題だ。
でも、ボクたちには何も出来ない。
功を焦ったその報いなのだろうか。
助けてあげたいという意思に偽りはない。
それでもその想いを相手が受け止めてくれないことには救うことすらできない。
結局救われるのは本人がそれを望んだ時であり、ボクたちにできるのはその背中を押すことだけ。
そして、その“背中を押す”という手助けこそが“希望”なのだろう。
人を超えた“力”と人を超えた“存在”は似ているようで違う。
現に仮面ライダーの力という形でどれだけ人を超えた力を手にしても、それを使うボクたちが無力な人間であることは変わらないし、変えられない。
そんなことは分かってる。
それでもまだ、自分にできることはあるはずだ。
ボクたちがセッテちゃんのためにできることが………
「どうすれば………」
「………」
再び部屋に沈黙が流れる。
言葉を紡ぎたいのに、出てこない。
それはきっと勝利くんも同じだ。
10数年の少ない人生経験のない中で必死にいろんなものを吸収してそれを自分の糧にして、その中から状況を打破するための答えを探し当てる。
言うのは簡単だが、それができるのはアニメや漫画の世界だけ。
──現実はボクらにそんなご都合主義を許さない。
ただただ時が流れていき、その間にも状況は悪くなっていく。
───そして悪夢に落とす、最悪の知らせがやってきた。
「勝利お兄さん!!」
勢いよく空いたドア。
声の主は千花ちゃん。
息は上がっており、なにやら焦っている様子。
その目には涙。
何か最悪な出来事が起こったのだ。
ボクたちは本能でそれを感じ取った。
「ノゾミお姉ちゃんこっち来てない!?」
「………ノンたんがどうしたんだ?」
「急に……急に叫び声上げてでていっちゃったのっ!!」