4話:今!(この世との)別れの時~♪(あの世へ)飛び立とう~♪……って、黙れや!!
「忠告するからよく聞いて。
……今のままじゃセッテちゃん、きっとノゾミちゃんを“押し潰してしまう”」
そうだ。これは“忠告”だ。
ノゾミちゃんとセッテちゃんが元の世界でどんな風に過ごしていたかは知らない。
でもきっとそれは『親友』と呼ぶには歪で……
そう『信頼』ではなく『依存』という形で互いに繋がっていたのだろう。
それはセッテちゃんを見ていればイヤでも分かってしまう。
それほどにまでセッテちゃんには“自分がない”。
ただノゾミちゃんの言うことに従順で、オウム返しのように頷いているだけ。
悪く言えば今のセッテちゃんはノゾミちゃんの劣化コピーなんだ。
そして、ノゾミちゃんもそれを受け入れている節がある。
だが、そんな女の子がこの世界に来て、色んな心に触れて色んなものを知った。
それが良いものであれ悪いものであれ、きっとそれはセッテちゃんを変えてくれるものとなるはずだ。
だからこそ、今がチャンスなのかもしれない。
元の世界でふたりの間に凝り固まって染み付いてしまった『前提』を覆す、その最初で最後のチャンス。
おそらくこのチャンスを逃せば、ふたりは取り返しがつかないことになる。
──セッテちゃんもノゾミちゃんも『親友』を永遠に失うことになる。
それは単純な死別よりもずっと重く、ずっと辛いものだ。
だからこそ、ボクたちも慎重にならなければならない。
それは分かっていたはずだ。
でも……
「それどういう意味よ……?」
「………それが分かんないなら、セッテちゃんはノゾミちゃんに近づかないほうがいい。
きっと……貴女もノゾミちゃんも傷つくだけだから。
だから……こんなこと、もうやめよ?」
……なんでこうなってしまうんだろう。
セッテちゃんを傷つける覚悟はしていたはずだ。
そのために心を鬼にする覚悟もしてきたはずだ。
だけど、ボクを睨むセッテちゃんの姿が涙で滲んでいく。
セッテちゃんに親友を死なせてしまった自分自身を重ねてしまったからなのだろう。
彼女に同情してしまっている自分がいる。
そんな風に中途半端に彼女に寄り添っても、結局は傷を広げてしまうだけ。
そんなことなら、そっとしておく方がよかったのかもしれない。
あの時もチャンスを目の前に先走って失敗したというのに、ボクは何をやっているのだろう。
「……分かんないよ。理緒に私の気持ちは」
そんな情けないボクを見たからか、セッテちゃんは力を込めていた手を離し力なく項垂れた。
もうその目にも、その言葉にも生気など宿っていない。
しかし、今度はボクにすがるように両肩を掴んできた。
「ノゾミは私にとって“世界そのもの”だったの……。
私にも友達や家族もいたけど、それでもノゾミの存在は大きかった……でも!!」
ボクの両肩を掴む手に力が入る。
それだけノゾミちゃんの存在が大きかった証拠だ。
ボクはセッテちゃんから視線を外さず、彼女を見据える。
「この世界に来て!……友達も家族もみんないなくなって私にはノゾミしか残されなかった……。
でもそんなノゾミすらも横からあの女が……千花が取り上げた!!!
私はノゾミを奪われたの!
私は、私の世界すらなくなったの!!」
力強く見開いた目からは大粒の涙。
彼女の目から感じられるのはやり場のない怒りと、それから………
「私は……私はどこにいけばいいの!?
誰もいないこんなひとりぼっちの世界で!
こんな空っぽで中身のない私のままで!!」
ボクの両肩を掴んだままボクの体を揺する。
そうだった。ボクとセッテちゃんとで決定的に違うものがある。
ボクが自分から世界から逃げ出したのに対して、セッテちゃんたちは世界を奪われたのだ。
──なんでこんなことも気づかなかったのだろう。
ボクとセッテちゃんとでは根本的に事情が違うんだ。
「ねぇ理緒……教えてよ!!
貴女何でも知ってるんだよね!?
ねぇ!教えてよ!教えなさいよっ!!
お願い………お願いだからぁ………っ!!」
「ごめんね……セッテちゃん……!」
ボクにしがみつき泣き崩れるセッテちゃん。
思わずボクもその場で尻餅をついてしまった。
不安で不安で仕方なくて、それをノゾミちゃんにすら言えなかったんだ。
もう忠告だとか、説教だとかそんなこと以前にセッテちゃんの不安を拭ってやることが先だったはずだ。
ボクはまた判断を誤ったのだ。
「うわぁぁぁぁぁん!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ごめん……ごめんね………!」
小さな子供のように声をあげて、ボクにしがみついて泣き叫ぶ。
セッテちゃんの慟哭が胸に突き刺さるようだ。
ボクもセッテちゃんの体にしがみつくようにして涙を流した。
セッテちゃんが泣くのを邪魔しないように声をなるべく殺して。
心を鬼にして突き放すことも、心に寄り添うことも出来なかったボクには一緒に泣くことくらいしかしてやれないから。
でも……ボクはもっと早く気づくべきだったのだと思う。
ボクの……ボクたちの判断ミスがセッテちゃんが親友をなくす手伝いをしてしまっていたことを。
そして追い詰められた人間が起こす行動がいかに恐ろしく、いかに危ういかということを……。
……今のままじゃセッテちゃん、きっとノゾミちゃんを“押し潰してしまう”」
そうだ。これは“忠告”だ。
ノゾミちゃんとセッテちゃんが元の世界でどんな風に過ごしていたかは知らない。
でもきっとそれは『親友』と呼ぶには歪で……
そう『信頼』ではなく『依存』という形で互いに繋がっていたのだろう。
それはセッテちゃんを見ていればイヤでも分かってしまう。
それほどにまでセッテちゃんには“自分がない”。
ただノゾミちゃんの言うことに従順で、オウム返しのように頷いているだけ。
悪く言えば今のセッテちゃんはノゾミちゃんの劣化コピーなんだ。
そして、ノゾミちゃんもそれを受け入れている節がある。
だが、そんな女の子がこの世界に来て、色んな心に触れて色んなものを知った。
それが良いものであれ悪いものであれ、きっとそれはセッテちゃんを変えてくれるものとなるはずだ。
だからこそ、今がチャンスなのかもしれない。
元の世界でふたりの間に凝り固まって染み付いてしまった『前提』を覆す、その最初で最後のチャンス。
おそらくこのチャンスを逃せば、ふたりは取り返しがつかないことになる。
──セッテちゃんもノゾミちゃんも『親友』を永遠に失うことになる。
それは単純な死別よりもずっと重く、ずっと辛いものだ。
だからこそ、ボクたちも慎重にならなければならない。
それは分かっていたはずだ。
でも……
「それどういう意味よ……?」
「………それが分かんないなら、セッテちゃんはノゾミちゃんに近づかないほうがいい。
きっと……貴女もノゾミちゃんも傷つくだけだから。
だから……こんなこと、もうやめよ?」
……なんでこうなってしまうんだろう。
セッテちゃんを傷つける覚悟はしていたはずだ。
そのために心を鬼にする覚悟もしてきたはずだ。
だけど、ボクを睨むセッテちゃんの姿が涙で滲んでいく。
セッテちゃんに親友を死なせてしまった自分自身を重ねてしまったからなのだろう。
彼女に同情してしまっている自分がいる。
そんな風に中途半端に彼女に寄り添っても、結局は傷を広げてしまうだけ。
そんなことなら、そっとしておく方がよかったのかもしれない。
あの時もチャンスを目の前に先走って失敗したというのに、ボクは何をやっているのだろう。
「……分かんないよ。理緒に私の気持ちは」
そんな情けないボクを見たからか、セッテちゃんは力を込めていた手を離し力なく項垂れた。
もうその目にも、その言葉にも生気など宿っていない。
しかし、今度はボクにすがるように両肩を掴んできた。
「ノゾミは私にとって“世界そのもの”だったの……。
私にも友達や家族もいたけど、それでもノゾミの存在は大きかった……でも!!」
ボクの両肩を掴む手に力が入る。
それだけノゾミちゃんの存在が大きかった証拠だ。
ボクはセッテちゃんから視線を外さず、彼女を見据える。
「この世界に来て!……友達も家族もみんないなくなって私にはノゾミしか残されなかった……。
でもそんなノゾミすらも横からあの女が……千花が取り上げた!!!
私はノゾミを奪われたの!
私は、私の世界すらなくなったの!!」
力強く見開いた目からは大粒の涙。
彼女の目から感じられるのはやり場のない怒りと、それから………
「私は……私はどこにいけばいいの!?
誰もいないこんなひとりぼっちの世界で!
こんな空っぽで中身のない私のままで!!」
ボクの両肩を掴んだままボクの体を揺する。
そうだった。ボクとセッテちゃんとで決定的に違うものがある。
ボクが自分から世界から逃げ出したのに対して、セッテちゃんたちは世界を奪われたのだ。
──なんでこんなことも気づかなかったのだろう。
ボクとセッテちゃんとでは根本的に事情が違うんだ。
「ねぇ理緒……教えてよ!!
貴女何でも知ってるんだよね!?
ねぇ!教えてよ!教えなさいよっ!!
お願い………お願いだからぁ………っ!!」
「ごめんね……セッテちゃん……!」
ボクにしがみつき泣き崩れるセッテちゃん。
思わずボクもその場で尻餅をついてしまった。
不安で不安で仕方なくて、それをノゾミちゃんにすら言えなかったんだ。
もう忠告だとか、説教だとかそんなこと以前にセッテちゃんの不安を拭ってやることが先だったはずだ。
ボクはまた判断を誤ったのだ。
「うわぁぁぁぁぁん!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ごめん……ごめんね………!」
小さな子供のように声をあげて、ボクにしがみついて泣き叫ぶ。
セッテちゃんの慟哭が胸に突き刺さるようだ。
ボクもセッテちゃんの体にしがみつくようにして涙を流した。
セッテちゃんが泣くのを邪魔しないように声をなるべく殺して。
心を鬼にして突き放すことも、心に寄り添うことも出来なかったボクには一緒に泣くことくらいしかしてやれないから。
でも……ボクはもっと早く気づくべきだったのだと思う。
ボクの……ボクたちの判断ミスがセッテちゃんが親友をなくす手伝いをしてしまっていたことを。
そして追い詰められた人間が起こす行動がいかに恐ろしく、いかに危ういかということを……。