4話:今!(この世との)別れの時~♪(あの世へ)飛び立とう~♪……って、黙れや!!

「はぁぁぁぁぁ!!」


地面を強く蹴り、加速。

今までより一層強い踏み込み。


変身することで上昇した身体能力にものを言わせ、一瞬にしてトップスピードに達する。


瞬きする瞬間よりも早く奴との距離が縮ま…………




「───遅い」


「!?」


ドスンッ、という大気を振るわせるほどの轟音と遅れてやってくる衝撃。痛み。


最初の一撃を相手に譲ってしまったことに気づいた頃には、私の体は大きく仰け反っていた。




「ぐっ………!」


体勢を立て直すと、私はすぐさま指輪を付け替え、反撃に転じる。

私を中心に水が収束していき無数の水の塊が形成されていく。

これはウェズぺリアの魔法で私自身が得意とする下級魔法・『ウォーターバレット』だ。




《チョーイイネ!サンダー!サイコー!!》


「いけぇぇぇぇぇぇ!!」


更にその水の弾丸を指輪の魔法『サンダー』により強化し、電撃を纏った無数の水の弾丸が奴に迫る。


威力こそ低めだが、その分魔力によるコントロールが容易であり、水の弾丸は文字通り相手に命中するまで追いかける。


更に電撃を纏ったことで、威力の上昇だけでなく麻痺効果による拘束も狙える。

まさに牽制にうってつけの技だ。



しかし…………





「ふんっ!!」


しかし奴はその攻撃を避けることも防ぐこともせず、拳を振るうと地面に叩きつけた。

奴を中心に巻き上がる土煙。


それに弾き飛ばされるようにして全ての水の弾丸は掻き消されてしまった。




「嘘ッ!?」


「お前では話にならん」


《シン!》


確かに威力は低いが牽制くらいにはなると思っていた。

まさか牽制にすらならないとは。


唖然としていたところに奴が現れると、奴は数回私の体に拳を叩きつけ、殴り飛ばすと奴は手にしていた時計型のアイテムを起動した。


奴の右手の生体装甲がガコンと展開し、ヌメリのある液体と共に無数の棘のような形をしたカッターが現れた。


それと同時に高周波でカッターが振動し始める。




───まずい!強力な攻撃が来る!!




「───ッ!!」


奴が肉薄してきた瞬間、私は咄嗟にシザースセイバーガンで奴の攻撃を防ぐ体勢を取ってしまう。

シザースセイバーガンは私の魔武器たちが融合することで誕生する武装。

すなわちこの武器すら私の仲間であり、私の家族なのだ。



だが……私は次の瞬間、その選択を後悔することになる。




「……きゃあああああああああ!!」


奴の右腕のカッター……『スパインカッター』はその高速振動によりありとあらゆるものを無慈悲に切り裂く。


シザースセイバーガンがまるで豆腐のように容易く切り裂かれてしまうと、ホープの装甲は深々と切り裂かれてしまったのだ。
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