4話:今!(この世との)別れの時~♪(あの世へ)飛び立とう~♪……って、黙れや!!
「お前の言う通りだよ、勝利。
俺がどれだけ綺麗な言葉で自分の信念を語ろうが所詮は人殺し。
ただの虐殺。それは認めるよ…………」
「だったら…………!
…………!!」
『投降しろ』、とでも言いたかったのだろうか、目元を拭うと俺はやりきれない想いをぶつけるかのように奴を睨む………がすぐに奴の目を見ると気圧されたかのように後退りした。
ハッキリとした視界に飛び込んできた奴の目が先ほどの弱々しさからは程遠いものだったからだ。
敢えて言うなら『覚悟を決めた戦士の目』。
俺はもちろん………将さんや勇騎さんでも、ここまで覚悟を決めた強い意思を感じる目をしているのは見たことがなかったからだ。
「──だが、それでも俺“この道”に全てを懸けた。
命を奪う責任も、それに懸ける覚悟もお前たちとは決定的に違う。
なんせ、80億の2乗の命を消し去る魔王になるんだからな」
“80億の2乗の命”。
あまりに数が大きすぎて一瞬ピンと来なかった。
だが並行世界というものは世界中の人々………世界の人口の数だけあり、それらの世界にも同じだけの人がいる。
80億の並行世界にそれぞれ70億の人がいるから、『80億の2乗』。
ハルシオンとかいう訳の分からないものに頼ってでも……そんな計算すら億劫になるような、気も遠くなるような数の命を奪ってでも、奴は新世界を………誰も傷つかない優しい世界を作ろうというのか。
俺は何も言えずに黙り込んでしまう。
反論する言葉など持ちあわせていなかったから。
どれほどの憎しみを抱えればそこまでの狂気に身を委ねられるのか分からなかったから。
そして…………ジニアを否定する資格が自分にないことを本能的に理解したから。
「だからこそ、その罪を、責任を誰にも押し付ける気はない。
その十字架は、俺ひとりで背負ってみせる………。
───それが俺の“宿命”だ」
何も否定出来なかった。逆にその想いを受け止めることも。
俺の10数年の人生ではあの男が抱える孤独を、怒りを、悲しみを、そして憎悪を理解することなどかなわなかった。
溢れだしてくる言葉を紡ぐことも、そしてそれを声として出すこともかなわない。
思考がぐちゃぐちゃになる。
溢れてくる想いが、言葉が一瞬で頭の中を満杯にし、破裂寸前にまで膨れ上がる。
この男の過去に何があったかなんて俺には分からない。
でもその憎しみと悲しみを宿した目を見れば分かる。
この男も俺と同じなのだと。
───俺以上の物を抱えながらも、俺以上の覚悟で戦いに臨んでいるのだと。
俺がどれだけ綺麗な言葉で自分の信念を語ろうが所詮は人殺し。
ただの虐殺。それは認めるよ…………」
「だったら…………!
…………!!」
『投降しろ』、とでも言いたかったのだろうか、目元を拭うと俺はやりきれない想いをぶつけるかのように奴を睨む………がすぐに奴の目を見ると気圧されたかのように後退りした。
ハッキリとした視界に飛び込んできた奴の目が先ほどの弱々しさからは程遠いものだったからだ。
敢えて言うなら『覚悟を決めた戦士の目』。
俺はもちろん………将さんや勇騎さんでも、ここまで覚悟を決めた強い意思を感じる目をしているのは見たことがなかったからだ。
「──だが、それでも俺“この道”に全てを懸けた。
命を奪う責任も、それに懸ける覚悟もお前たちとは決定的に違う。
なんせ、80億の2乗の命を消し去る魔王になるんだからな」
“80億の2乗の命”。
あまりに数が大きすぎて一瞬ピンと来なかった。
だが並行世界というものは世界中の人々………世界の人口の数だけあり、それらの世界にも同じだけの人がいる。
80億の並行世界にそれぞれ70億の人がいるから、『80億の2乗』。
ハルシオンとかいう訳の分からないものに頼ってでも……そんな計算すら億劫になるような、気も遠くなるような数の命を奪ってでも、奴は新世界を………誰も傷つかない優しい世界を作ろうというのか。
俺は何も言えずに黙り込んでしまう。
反論する言葉など持ちあわせていなかったから。
どれほどの憎しみを抱えればそこまでの狂気に身を委ねられるのか分からなかったから。
そして…………ジニアを否定する資格が自分にないことを本能的に理解したから。
「だからこそ、その罪を、責任を誰にも押し付ける気はない。
その十字架は、俺ひとりで背負ってみせる………。
───それが俺の“宿命”だ」
何も否定出来なかった。逆にその想いを受け止めることも。
俺の10数年の人生ではあの男が抱える孤独を、怒りを、悲しみを、そして憎悪を理解することなどかなわなかった。
溢れだしてくる言葉を紡ぐことも、そしてそれを声として出すこともかなわない。
思考がぐちゃぐちゃになる。
溢れてくる想いが、言葉が一瞬で頭の中を満杯にし、破裂寸前にまで膨れ上がる。
この男の過去に何があったかなんて俺には分からない。
でもその憎しみと悲しみを宿した目を見れば分かる。
この男も俺と同じなのだと。
───俺以上の物を抱えながらも、俺以上の覚悟で戦いに臨んでいるのだと。