4話:今!(この世との)別れの時~♪(あの世へ)飛び立とう~♪……って、黙れや!!
「なんであんたはっ………!」
「………お前、俺と出会った時のこと覚えてるか?」
「…………」
唐突な問いに思わず俺は目を丸くした。
──忘れる訳などない。
二束三文の命だった俺たちに居場所をくれたのは……あの地獄から救ってくれたのは、紛れもなくこの人だ。
俺は静かに頷いた。
「………初めてお前と出会った時、お前は人形のようだった。
泣きもしない、笑いもしない。
それどころかまともに言葉を話すことすらしない。
人の形をしているが、まるで魂がそこにないような………。
でもそれは………泣いて叫んだって、誰も助けてくれないことを理解してたからだろ?」
確かにこの男の言葉通りだ。
当時の姫矢は周囲の都市から隔絶され、誰も助けが来ない中で『怪物に襲われるかもしれない恐怖』、『周囲の人間が怪物かもしれない恐怖』、そして『自分が怪物になるかもしれない恐怖』の中で生活しなければなかった。
特に親が怪物に殺され、駅の子となった俺のような子供たちは最悪だった。
自らの命を脅かす敵が怪物だけじゃなかったからだ。
むしろ………怪物以上の天敵がいた。
それが『人間』の大人たち。
俺たち駅の子にそのストレスの捌け口を求め、暴力を振るい続けた。
中には強姦された奴だっていた。
食事もまともに与えられないから餓死した奴もいたが、大半の駅の子たちは大人たちの暴力のせいで死んだのだ。
俺なんかしょっちゅう殴られていた。
小さくて弱かったからな。
だから……知ってるんだ。
助けなんて呼んだって誰も助けてくれない。
希望など持ったところで大人たちは暴力を振るい続けるし、飯にもありつけないし腹も減る。
………どっかの希望の担い手の語る『希望』がどれだけ曖昧で、どれだけ中身のないものなのかも、嫌というほど身体中に傷として刻みこまれている。
初めてあの希望の担い手に出会った時は、片方の側面からしか物を見ず浅はかな判断と浅い知識で薄っぺらい言葉を押し付ける様に怒りを通り越して呆れ返ったのを今でも覚えているくらいだ。
所詮、何度種を植えても、どれだけ綺麗な花を咲かせても人は簡単に踏み潰すし、簡単に吹き飛ばす。
たとえそれを命より大事にしていても。
………悲しいが、それが現実なのだ。
「……それがなんなんだよ?」
───嫌なことを思い出してしまった。
俺は奴のせいとでも言いたかったのか、奴を睨み付ける。
しかし、奴はそれに大した反応も見せずに話を続ける。
「でも、そんな事が起こってるのはこの世界だけじゃない。
どの世界でも、誰かが笑ってるその裏で誰かが泣いてるんだ………。
俺はその泣いてる奴らを救いたかった。
だが…………それも幻想だった」
「だからリセットってか?新世界の想像ってか?
そんなもんただの殺戮じゃねぇか!
『泣いてる奴』と『笑ってる奴』が入れ替わるどころじゃない………どっちも『泣いてる奴』になるだけのただの殺戮だ!!」
──我慢ならなかった。
奴の語る内容など、殆どどうでもよかった。
ジニアが………“俺たちの父さん”が自分の過ちを正当化しているように見えたのもそうだが、それ以上に目の前の男が………俺たち駅の子に心をくれた男が全てに疲れ果て諦め切ったようなそんな弱々しい目をしていたのが。
そんな姿を俺に見せたのが、我慢ならないくらいに悲しくて、悔しくて仕方なかった。
───目の前の男を口汚く罵る度、俺の視界が滲み熱いものが頬を伝っていくのがわかった。
「………お前、俺と出会った時のこと覚えてるか?」
「…………」
唐突な問いに思わず俺は目を丸くした。
──忘れる訳などない。
二束三文の命だった俺たちに居場所をくれたのは……あの地獄から救ってくれたのは、紛れもなくこの人だ。
俺は静かに頷いた。
「………初めてお前と出会った時、お前は人形のようだった。
泣きもしない、笑いもしない。
それどころかまともに言葉を話すことすらしない。
人の形をしているが、まるで魂がそこにないような………。
でもそれは………泣いて叫んだって、誰も助けてくれないことを理解してたからだろ?」
確かにこの男の言葉通りだ。
当時の姫矢は周囲の都市から隔絶され、誰も助けが来ない中で『怪物に襲われるかもしれない恐怖』、『周囲の人間が怪物かもしれない恐怖』、そして『自分が怪物になるかもしれない恐怖』の中で生活しなければなかった。
特に親が怪物に殺され、駅の子となった俺のような子供たちは最悪だった。
自らの命を脅かす敵が怪物だけじゃなかったからだ。
むしろ………怪物以上の天敵がいた。
それが『人間』の大人たち。
俺たち駅の子にそのストレスの捌け口を求め、暴力を振るい続けた。
中には強姦された奴だっていた。
食事もまともに与えられないから餓死した奴もいたが、大半の駅の子たちは大人たちの暴力のせいで死んだのだ。
俺なんかしょっちゅう殴られていた。
小さくて弱かったからな。
だから……知ってるんだ。
助けなんて呼んだって誰も助けてくれない。
希望など持ったところで大人たちは暴力を振るい続けるし、飯にもありつけないし腹も減る。
………どっかの希望の担い手の語る『希望』がどれだけ曖昧で、どれだけ中身のないものなのかも、嫌というほど身体中に傷として刻みこまれている。
初めてあの希望の担い手に出会った時は、片方の側面からしか物を見ず浅はかな判断と浅い知識で薄っぺらい言葉を押し付ける様に怒りを通り越して呆れ返ったのを今でも覚えているくらいだ。
所詮、何度種を植えても、どれだけ綺麗な花を咲かせても人は簡単に踏み潰すし、簡単に吹き飛ばす。
たとえそれを命より大事にしていても。
………悲しいが、それが現実なのだ。
「……それがなんなんだよ?」
───嫌なことを思い出してしまった。
俺は奴のせいとでも言いたかったのか、奴を睨み付ける。
しかし、奴はそれに大した反応も見せずに話を続ける。
「でも、そんな事が起こってるのはこの世界だけじゃない。
どの世界でも、誰かが笑ってるその裏で誰かが泣いてるんだ………。
俺はその泣いてる奴らを救いたかった。
だが…………それも幻想だった」
「だからリセットってか?新世界の想像ってか?
そんなもんただの殺戮じゃねぇか!
『泣いてる奴』と『笑ってる奴』が入れ替わるどころじゃない………どっちも『泣いてる奴』になるだけのただの殺戮だ!!」
──我慢ならなかった。
奴の語る内容など、殆どどうでもよかった。
ジニアが………“俺たちの父さん”が自分の過ちを正当化しているように見えたのもそうだが、それ以上に目の前の男が………俺たち駅の子に心をくれた男が全てに疲れ果て諦め切ったようなそんな弱々しい目をしていたのが。
そんな姿を俺に見せたのが、我慢ならないくらいに悲しくて、悔しくて仕方なかった。
───目の前の男を口汚く罵る度、俺の視界が滲み熱いものが頬を伝っていくのがわかった。