4話:今!(この世との)別れの時~♪(あの世へ)飛び立とう~♪……って、黙れや!!

「…………また来ます」


俺は一言お墓に告げ、一礼すると踵を返し細い道を通りぬけ、本堂へと向かう。


………筆舌に尽くしがたい、なんとも言えない気分だ。


アンゲロスの性質上、こういうことになるのは分かっていた。

理不尽に怪物にされて、怪物として“駆除”されて、遺族の元にも帰れずに無縁仏として葬られた。


確かに復讐心に駆られて暴力を振るってはきたが、遊びでやってた訳じゃない。




「帰らなきゃ、だよな………」


───だけど、悩んでいる暇なんてない。

立ち止まっている時間も。


それに、今は理緒たちを待たせてるんだ。早くバイトに戻らないと。


服の袖で目を擦ると、少しだけ滲んでいた視界がはっきりとした。



よし、俺は大丈夫!


自らを鼓舞するように心のなかで呟くと、俺は出入口である仁王門へと向かった。



しかし……………




「……………お前も来てたんだな」


俺の背後から声が聞こえてきた。



───懐かしい声。

しかしそれは俺の記憶の中の優しい声ではなく、どこかなにかを諦めきった様子の怒りとも嘆きともつかない、虚無に満ちた声。


その声を聞いた時、俺は反射的に身構えてしまう。



そして振り向いた時に目に飛び込んできたのは、出会った時と何一つ変わらない姿の男。



かつて、俺を育ててくれた“先生”。

俺に勉強も生き方も教えてくれた“お父さん”。



だが…………今は世界を破壊する“魔王”。




「ジニア…………!」


身構えるものの、ここ数週間、俺の手元にはエクスライザーはない。

ノンたんに貸したきり返して貰ってないのだ。


昔使ってた変身アイテムである『コルプスレイザー』も今は亨多に預けてるし……………



「クソッ…………!こんなときに限って………」


最悪だ。

ここで奴に戦う意志があるのなら、俺は終わりだ。

普通に変身して戦っても勝てなかったのに、ましてや変身できない状況で奴と出くわすとは。


どうにか勇騎さんたちに連絡を取れないか考える。

しかし…………





「安心しろよ………俺にゃ戦う意志はねぇよ」


奴の口から語られた言葉は意外なものだった。
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