4話:今!(この世との)別れの時~♪(あの世へ)飛び立とう~♪……って、黙れや!!

「じょ、冗談だよ冗談………あはは………」


「…………」


ジトーっとした視線が俺を貫く。

おおぅ………俺のギャグが見事に滑りおった。

まぁドラゴンのお姉さんは明らかにカタツブそうだし、きっと普段でもギャグは通じないんだろうな。



「まぁ、いいけど………」


「まぁまぁ……ハーブティーでも飲んで機嫌直してよ」


俺はこの空気を変えるべく、カウンターに立つとドライハーブの入った缶を用意する。


そもそも最初からハーブティーを振る舞うためにドラゴンのお姉さんにはここで待ってもらっていたのだ。


まずは馬鹿をやりながらもあらかじめ温めておいたティーポットにドライハーブをティースプーン一杯と半分程度入れる。


それからケトルで沸騰させたお湯を注ぎ、素早く蓋を閉め、タイマーをセット。

時間は3分半。


理緒や月音から教わった入れ方を俺なりに整理し、導きだした完璧なる結論パーフェクトコンクルージョン………ゲフンゲフン。

これだと滅茶苦茶ヤバい奴になるな。


2人の意見を元に研究を重ね、一番旨かったのがだいたいこの時間だ。



「意外ね………こういうの得意なの?」



「まぁね……俺もこういうお洒落なのはガラじゃないけどさ、ここで働くうちに手慣れてったんだよ。


ホラ、ノンたんとかセッテとかは……

その………明るさだけが取り柄みたいなとこあるし、俺もフォローしてやんないと」


そう、ノンたんたちが来てから俺も色々考えるようになった。

特にノンたんは戦ってる時だけではなくBATTOLERで働いているときも暴走しがちなのだ。


ベルトだけじゃなくて店の備品も壊すしで、勇騎さんたちの負担もかなり増えている。


ウェズぺリアとかいう世界では『希望の担い手』とか言われてたみたいだけど、ノンたんが俺たちにもたらしたのは『希望』じゃなくて『負担』。


ぶっちゃけ『疫病神』って言っても過言じゃない………流石に俺もこれは本人には言わないけども。




「そうね……

本当は私もフォローしたいのだけど、今の私じゃきっとまた喧嘩になりそうね………」



「だ・か・ら。

今はリラックスするのが一番!」


タイマーが鳴り響く中、俺はタイマーを止めティーカップにハーブティーを注ぐ。

目の細かい茶漉しを使い、ハーブの茶葉が入らないようにしながらだ。


ハーブの香りが鼻腔をくすぐる。


………あぁ、これだよこれ。

今日もうまく出来た。




「ほいっ、出来たよハーブティー!」


「ありがとう………」


そしてハーブティーの入ったティーカップをドラゴンのお姉さんの前に差し出した。


差し出されたハーブティーのティーカップを受けとると彼女は微笑むのだった。
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