4話:今!(この世との)別れの時~♪(あの世へ)飛び立とう~♪……って、黙れや!!
「もうやめて!!」
私とトカゲ女を中心に広がる張り詰めた空気。
特に私とトカゲ女の間は険悪なムードとなる。
しかし、その空気を壊すかのように叫ぶものがいた。
「…………千花」
そう、この騒動の中心にいる千花だ。
千花は今までみたことないくらいに涙をその目に貯めている。
そして、千花は私の服の裾を掴みながら私を見つめる。
彼女の手から不安が伝わってくる。
「アタシは大丈夫だから………!
へ、“兵器”だけど“平気”だよ!…
…な、なんちゃって…………」
「ごめん………」
「な、なんで、なんでノゾミお姉ちゃんが謝るの……?
ホラ、ここ笑うところっ!笑うところだからっ………!」
無理やり笑顔を作って、おどけてみせる千花。
直視すら出来ない。
こんなにも無理をさせて、申し訳なかったのだ。
本当に泣きたいのは、怒りたいのは千花のはずなのに。
「だっ……………だから、笑ってって言ってるじゃん………
アタシは本当に大丈夫だから
……笑ってよ…………笑ってったら………
お願いだからぁ…………!!」
人に笑えといいながら涙をボロボロと溢しながら、溢れる涙を拭いなから、彼女は無理に笑顔を作る。
しかし、無理やり作った笑顔も消えていくと彼女はペタンと座り込むと人目もはばからず大声で泣き叫んだ。
それは両親の喧嘩を見せつけられた幼い子供が恐怖から泣き叫ぶ姿のそれで、ただただ胸が痛かった。
大好きな人が、大切な人がこんなにも無理をして…………。
でも、それすらも出来なくなったんだ。
気がつけば私はトカゲ女を掴んだ手を離し千花を抱き締めていた。
藁にでもすがるように私の体にしがみつく大好きなひと。
───悲しみなんてものじゃない。これは“慟哭”だ。
耐えようのない悲しみ。抑えきれない嘆き。
誰も頼れるもののいない世界で、自らの存在さえ揺らいだ彼女の悲しみが、嘆きがどれだけのものか。
ここにいる誰もがそれを理解しちゃいない。
私だってそうだ。
人にも、才能にも、環境にも恵まれて育ち、周囲からチヤホヤされ、産地直送の箱入り娘として育てられた私には、きっと彼女の抱える苦しみは完全には理解できないのだと思う。
───少なくとも、それを『理解している』なんておこがましくて決して口には出せない。
でも……………。
「千花…………よく聞いて」
彼女から少しだけ離れ、両手を伸ばし彼女の両頬に手を当てる。
彼女の頬は暖かくて、濡れている。
彼女の琥珀色の大きな瞳からは涙が溢れ、私の手を伝う。
………不謹慎ながら美しいと思ってしまった。
私の体の全てが彼女を求めている。
あぁ、そうか。私はそんな彼女に恋をしたんだ。
自分の気持ちに正直で、誰よりも綺麗な心を持った千花。
私の持ってないものを全て持った彼女。
…………私は彼女に憧れてたんだ。なりたかったんだ。
純粋で幼子のような千花と言う一人の女の子に。
「………例え貴女がなんだろうと、関係ない!
私は貴女の味方っ!絶対にぜーったいに貴女の味方っ!!
貴女は“人間”………!どこも変わらない普通の女の子!!
男の子みたいなのに恥ずかしがりやで!
ツッコミが辛辣な癖に
夜になると途端に甘えん坊になって!
貴女はそんなどこにでもいるただの人間なの!!
絶対に兵器なんかじゃないっ!!兵器だなんて言わせない!!」
我ながら子供の戯言だと思う。
幼稚で拙宅な言葉の羅列。
もう少し綺麗な言葉で纏められればいいのに。
頭に浮かんだ言葉を無駄に、衝動的に垂れ流してるだけ。
私は馬鹿だ。大馬鹿だ。
でも、伝えたかったんだ。
何も飾らない本当の私の想いを。
「ノゾミお姉ちゃん…………っ!
ノゾミお姉ちゃぁぁぁん!!」
彼女は私の背中に手を回し、私の胸に顔を押し当てて泣いた。
私も泣いた。声を張り上げて、泣いた。
今は、先の見えない地獄の中にいる。
でも、ここには千花がいる。
昔、『恋とは落とし穴だらけの道を歩くようなものだ』と誰かが言った。
それだけ簡単に落ちるのだと。
だが、私には縁のないものだと思っていた。
周りに恋愛対象になり得る輩はいなかったし。
でも……千花に出会っていつの間にか彼女に恋い焦がれている自分がいた。
例えそれが“執着”でも“エゴ”でも、私の彼女への想いは偽りなどではない。
例え盲目になろうとも、“恋”と名付けられたこの落とし穴に……この闇の底に落ちたことを、後悔していない。
後悔するはずない。
「……………ノゾミ」
───例え、それが親友を傷つけることになろうとも。
親友の心の内すら見えなくなろうとも。
それでも私は…………。
私とトカゲ女を中心に広がる張り詰めた空気。
特に私とトカゲ女の間は険悪なムードとなる。
しかし、その空気を壊すかのように叫ぶものがいた。
「…………千花」
そう、この騒動の中心にいる千花だ。
千花は今までみたことないくらいに涙をその目に貯めている。
そして、千花は私の服の裾を掴みながら私を見つめる。
彼女の手から不安が伝わってくる。
「アタシは大丈夫だから………!
へ、“兵器”だけど“平気”だよ!…
…な、なんちゃって…………」
「ごめん………」
「な、なんで、なんでノゾミお姉ちゃんが謝るの……?
ホラ、ここ笑うところっ!笑うところだからっ………!」
無理やり笑顔を作って、おどけてみせる千花。
直視すら出来ない。
こんなにも無理をさせて、申し訳なかったのだ。
本当に泣きたいのは、怒りたいのは千花のはずなのに。
「だっ……………だから、笑ってって言ってるじゃん………
アタシは本当に大丈夫だから
……笑ってよ…………笑ってったら………
お願いだからぁ…………!!」
人に笑えといいながら涙をボロボロと溢しながら、溢れる涙を拭いなから、彼女は無理に笑顔を作る。
しかし、無理やり作った笑顔も消えていくと彼女はペタンと座り込むと人目もはばからず大声で泣き叫んだ。
それは両親の喧嘩を見せつけられた幼い子供が恐怖から泣き叫ぶ姿のそれで、ただただ胸が痛かった。
大好きな人が、大切な人がこんなにも無理をして…………。
でも、それすらも出来なくなったんだ。
気がつけば私はトカゲ女を掴んだ手を離し千花を抱き締めていた。
藁にでもすがるように私の体にしがみつく大好きなひと。
───悲しみなんてものじゃない。これは“慟哭”だ。
耐えようのない悲しみ。抑えきれない嘆き。
誰も頼れるもののいない世界で、自らの存在さえ揺らいだ彼女の悲しみが、嘆きがどれだけのものか。
ここにいる誰もがそれを理解しちゃいない。
私だってそうだ。
人にも、才能にも、環境にも恵まれて育ち、周囲からチヤホヤされ、産地直送の箱入り娘として育てられた私には、きっと彼女の抱える苦しみは完全には理解できないのだと思う。
───少なくとも、それを『理解している』なんておこがましくて決して口には出せない。
でも……………。
「千花…………よく聞いて」
彼女から少しだけ離れ、両手を伸ばし彼女の両頬に手を当てる。
彼女の頬は暖かくて、濡れている。
彼女の琥珀色の大きな瞳からは涙が溢れ、私の手を伝う。
………不謹慎ながら美しいと思ってしまった。
私の体の全てが彼女を求めている。
あぁ、そうか。私はそんな彼女に恋をしたんだ。
自分の気持ちに正直で、誰よりも綺麗な心を持った千花。
私の持ってないものを全て持った彼女。
…………私は彼女に憧れてたんだ。なりたかったんだ。
純粋で幼子のような千花と言う一人の女の子に。
「………例え貴女がなんだろうと、関係ない!
私は貴女の味方っ!絶対にぜーったいに貴女の味方っ!!
貴女は“人間”………!どこも変わらない普通の女の子!!
男の子みたいなのに恥ずかしがりやで!
ツッコミが辛辣な癖に
夜になると途端に甘えん坊になって!
貴女はそんなどこにでもいるただの人間なの!!
絶対に兵器なんかじゃないっ!!兵器だなんて言わせない!!」
我ながら子供の戯言だと思う。
幼稚で拙宅な言葉の羅列。
もう少し綺麗な言葉で纏められればいいのに。
頭に浮かんだ言葉を無駄に、衝動的に垂れ流してるだけ。
私は馬鹿だ。大馬鹿だ。
でも、伝えたかったんだ。
何も飾らない本当の私の想いを。
「ノゾミお姉ちゃん…………っ!
ノゾミお姉ちゃぁぁぁん!!」
彼女は私の背中に手を回し、私の胸に顔を押し当てて泣いた。
私も泣いた。声を張り上げて、泣いた。
今は、先の見えない地獄の中にいる。
でも、ここには千花がいる。
昔、『恋とは落とし穴だらけの道を歩くようなものだ』と誰かが言った。
それだけ簡単に落ちるのだと。
だが、私には縁のないものだと思っていた。
周りに恋愛対象になり得る輩はいなかったし。
でも……千花に出会っていつの間にか彼女に恋い焦がれている自分がいた。
例えそれが“執着”でも“エゴ”でも、私の彼女への想いは偽りなどではない。
例え盲目になろうとも、“恋”と名付けられたこの落とし穴に……この闇の底に落ちたことを、後悔していない。
後悔するはずない。
「……………ノゾミ」
───例え、それが親友を傷つけることになろうとも。
親友の心の内すら見えなくなろうとも。
それでも私は…………。