4話:今!(この世との)別れの時~♪(あの世へ)飛び立とう~♪……って、黙れや!!

「よかった………意外とウケがいいみたいで」


「おのれぇぇぇぇ!俺の体を勝手に食うんじゃねぇぇぇぇぇ!!」


激昂した残パントムは持っていた刀を振り回しながらマイスシーに肉薄。

その動きは無駄があまりに多く、俺でもタコの刺身を食べながら付け入る隙を見つけられるくらいだ。



「おっ、怒るなよっ!」


しかし、寿司夫は恐らく残パントム以上に戦闘に不慣れなのだろう。

奴の勢いに完全に押され気味だ。



だから………



「うわっ!?」


攻撃こそ咄嗟に防げたが構えた刀を弾き落とされてしまった。

そこから更に加わる触手による連撃。


形勢は逆転したかに見えた。




「お、おい!?」


素人同士の戦いだが、見ちゃいられない。

俺はアインギアを紛失したことすら忘れて駆け出そうとするが、スウォルツ太郎に止められてしまう。




「なにすんだ!?」


「………いいからうちの板前を信じろ。

伊達に鍛えちゃいない」


スウォルツ太郎の自信に満ちた目。

そして俺はマイスシーの方を見やる。




「は…………?」


一方的にやられているかに見えた。

だがよく見てみると…………




「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃーーーー!!」



弾かれたと思われたカジキカリバーで奴の触手を切り裂いているではないか。


………ってどゆこと!?




「なっ!?」


弾かれた刀が落ちた方を見る。

そこに転がっていたのはカジキの尾を模した鞘のみ。


まさかあのタイミングで奴の攻撃を鞘で防いでいたっていうのか!?




「な、なにぃぃぃぃぃぃぃ!?」


「僕も伊達に親方に鍛えられてる訳じゃないんだ!!」



完全に触手を切り尽くすと、マイスシーは腰のホルダーにぶら下げられていた寿司をひとつ取り出した。

マイスシーのベルトに装填されたマグロより薄いピンクのカラーリングになっているところを見るとこれはサーモンだろうか。



「マグロの次はサーモンかよ………」


最初にとんでもないものを見せられたので、さすがにもう驚きはしないが、それでもやっぱりこれは慣れるまで時間かかるな…………。



《サーモン!一丁!!》


《スッシクイネェェェ~!》



「うぉぉぉぉっ!?」




マイスシーが、寿司を握り、醤油皿型のスキャナーに寿司を読み込ませる。
その瞬間、俺の足元から巨大なサーモン……もといシャケが飛び出してきた。



「しゃ、シャケだだだだだだだだ!?」


驚き、動揺するより早く俺の頬に叩き込まれるシャケの尾によるビンタ。


いや、納得出来ねぇ!


ノゾミでもねぇけど言わせろ…………





「ど"お"し"て"だ"よ"お"お"!!」
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