3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!

「やるじゃないか………仮面ラーーーイダの諸君………!


流石に効いたよ…………」


ハイ嘘ー。

………さすがに効いてる訳ないでしょ。


実際はそこまで効いてはいないが、あたかも効いてるフリをしながらリボルケインを杖代わりにしつつ立ち上がるような素振りをする。


………僕、もしかしたらアカデミー賞モノの演技出来てるかも。


少なくともイージスやアインは騙せてる感じだもん。



「ハッ!どうしたよ……Re:BUILDのナンバー2とか言っても大したことねぇなっ!」


鬼のなんちゃらさん、なんかいっちょまえに煽ってますけど……効いてないからね?

そもそも、これで騙されるってどんだけ単純なんだよwwww



…………おっと。

仮面の下で笑いが込み上げてくるんだけど、僕は必死に堪えつつ、『演技』を続ける。


Re:BUILDのナンバー2として好き勝手やってきて、こいつらを散々追い詰めてきたんだ。


そんな僕をあと少しで倒せる……ってシチュエーションだ。


自分達に都合の悪いことなんて考えやしない。



ただ、神龍はちゃんと警戒しないと………だけど




「神龍だけじゃなく、君たちもまさかここまで強く………なってるとはね。

でも………僕にも…………負けられない理由が、あるんだよ………!!」


バックルに翠の煌めきが収束する。


これはシャドームーンもかつて使用した『シャドーフラッシュ』。


BLACK RXが進化前のBLACKのキングストーンフラッシュを引き継いだように、このアナザーRXもシャドーフラッシュをシャドームーンから引き続き使用出来る。




「こいつ………まだそんな力を使えたのか………っ!」


「これが、最大の一撃ね…………!」


「ふたりとも!行くよ!」


アナザーRXの最大の一撃ともいえるシャドーフラッシュがチャージされるのを見て、3人とも警戒をし始める。


そうそう、それでいいんだよ。



そして、次の奴らのアクションも大体予測ついてるから……………




「これが最大のっ!!」


「させねぇよっ!」


直後、僕の体は動かなくなる。

これはアイン・ゲンブフォームの『蛇の目』。


これに睨まれたものは蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。


………ぶっちゃけ破ろうと思えば全然破れるんだけどさ、破るだけじゃ“面白くない”だろ?




「しまっ………!」


「決めろ!ふたりとも!!」


「わかった……!」


「任せて………」


アインの一声により、ふたりとも必殺技のスタンバイフェーズとなる。


イージスはゼクターをさながら弓のような形状に変え構えて、ユライトはゼクターを引き抜き、何かのアニメで見たことがあるような大剣形態とした。



《RIDERS ARROW》


シンプルに弦を引くイージス。

唯一にして、最強の矢の一撃。それが『このライダーズアロー』だ。



《Load Cartridge.Rider power get set.》

《RIDER BREAKER》


対するこちらはガコンッという音と共にカートリッジが数発分、装填され膨大な量のエネルギーが切っ先に集中する。



「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」


ふたりの武器に宿る強大な力。

それはアインの力により身動きの取れない僕に容赦なく放たれた。



普通なら絶体絶命。

これで僕もTHE END。


何度も言うけど、“普通なら”ね。










「───さて、と」


…………そろそろ頃合いかな。


僕はここでNS能力を発動する。

………そう、目の前の神龍やションベンタレと同じ能力だけど、その能力の練度は段違い。



ふたりの放った必殺技の質量がデタラメに大きいことを利用し、ほんの少しだけ自分の周囲の空間をねじ曲げる。

すると僕を飲み込まんとするエネルギーの奔流はまるで僕の体を避けるようにして流れていき、そのまま地面を抉り大量の土煙を巻き上げる。


直後、爆炎が僕の体を包み込む。



奴らから見れば、それは僕が奴らの必殺技の直撃を喰らって爆発四散したようにしか見えないだろう。



「やったか!?」


鬼のなんちゃらさん………いやアインがお決まりの言葉をいい放つ。


さてさてさぁて………。
主役の引き立て役、ご苦労様でしたモブキャラの諸君。


華麗にネタバラシいきますか………!




「ふふふ………残念でした」


「「「なっ………!?」」」


爆炎が晴れ、奴らのマヌケ顔が見えてきた。




「無傷…………!?そんな…………」


ここでこの場で一番のマヌケ顔のションベンタレ……ノゾミが口を挟む。


こいつ……本気で騙されてたのかよ。

本当に哀れとしかいいようがないよね。



僕はジュエルを外し、変身を解除した。




「………僕たちは戦争をやってるんだけどさ………


お前たちとは『戦争』にもなりやしない。

軽い気持ちでライダーの力に手を出して、軽い気持ちで戦って、自分の力に酔いしれて粋がってる。


戦争は互いの信念をぶつけ合うもの………僕個人はお前たちと“戦争”する気はない。

お前たちに僕たちと釣り合うだけの信念は見えないからね」



《DUAL FACE……… CAPSULE GEAR》


ジュエルドライバーも外し、代わりに取り出したのはエクスライザーやライダーカプセルの技術を用いて作ったカプセル型アイテムだ。

カプセルの底にはダイヤルがついている。


これが僕だけの“チカラ”……『DFカプセルギア』。



「お前たちとの戦いはもうただの“遊び”だよ。

───そんなにイジめてあそんで欲しいんなら望み通りにしてやるよ」


《Knockout Fighter Awaking KIKAI&GINGA!》


ダイヤルを左に90度回す。

ダイヤルを回すことでこのカプセルは起動する。



さぁて……僕の活躍を端末の画面で見ている画面前の君たち。


ちょっと前に出したクイズわかったかな?



『“人間を一番失望させるもの”ってなーんだ?』ってアレ。



───正解は『ぬか喜び』。


希望をちらつかせて一気に絶望に叩き落とされるその瞬間………人間は最も傷つくんだ。




そう、僕の目の前にいるマヌケ面どものようにね。





「…………変身」


────悪ふざけはここまでにしようか。


僕はDFカプセルギアを構えると静かにお決まりの掛け声を呟くのだった。


design
70/82ページ
スキ