3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!

──JILL SIDE──

さてと。時間は再び現在に戻るよ。

僕、ジル・ロックディールはノゾミとプロメテウス01、それから増援としてやってきた神龍とセッテ、輝と対峙していた。


「別に僕はこれで帰ってもいいんだけどさ…………」


先ほど撤退するのならと抜かしていたが、正直僕もこれで帰ってもいいとすら思っている。
だってそもそもオフだったしね。



だけど、僕はふと他の二人を見る。


アインもイージスも、ものの見事に頭に血が昇っているご様子。


ぷくく………ホントにからかいがいがある奴らだよ。

思わず仮面の下でニヤけてしまう。



「………許さない」


「仇撃ちなら手伝うぜ……?」


「他二人が許してくれなさそうだけどねぇ………まぁ、僕もまだ帰るつもりはないけどっ!」


挑発するかのように、3人目掛けて翠の雷撃を飛ばす。

当然バカふたりはそれを回避し、神龍はションベンタレとプロメテウス01を護るように雷撃を防ぐ。


まぁ、オーソドックスな連携だよね。


………だからこそ読みやすいんだけどさ。




「はぁぁぁっ!」


「そらぁっ!!」


両サイドからやって来るイージスとアインの攻撃。

挟み撃ちによる攻撃のセオリーは、攻撃を与えるだけじゃなくて、攻撃が外れた時に互いの攻撃が射線から外れるように放つのが基本だ。

特に射撃武器とかはそうなんだけど、こいつらはふたりとも拳による攻撃だ。


こいつらが、そこまで気を回せていないというのは奴らの癖や視線を見ていればわかる。


『鬼の篠原』だとか『ナンバーズ』だとか………

そんな大層な肩書きがありながら、こいつらの戦闘技術は僕からしたら素人のソレと大差はない。


これをかわしたらこいつら自滅するんだろうけど、まぁ……ここは敢えて避けないでおいてやるか。



「………っ」


イージスの方の拳をいなし、敢えてアインの拳を受ける。

アナザーRXの強化された装甲でならアイン程度のライダーの攻撃など効きはしない。


だけど、少しだけ押されてるフリをしていればこいつらも気づけないだろう。


特に篠原輝ならせっかく俺の感情を読める能力を身につけているのに、精神的に未熟だからすぐに目の前の結果にほだされてしまう。

だからこそ、せっかくの能力の方も宝の持ち腐れとなっているのが現状というワケ。


ちなみにセッテにはそういった類いの能力はないし、ノゾミは……もはや論外。


警戒するのは自ずと神龍……ユライトだけになる。



《RIDER………KICK》


「っ!」


無論、僕がよろけたその隙を狙ったのだろう…………ユライトは一気に距離を詰めてきた。

確かにスピードは他の連中よりも速い。


元々速さだけが取り柄のような奴だけども、確かに僕ですら油断をすれば攻撃を貰ってしまいそうになる。


トップスピードから繰り出される攻撃も、恐らくアインやイージスなんかよりも重いんだろう。



───流石にこの姿で直撃は嫌、かな。



「うわっ!」


少々わざとらしくなってしまったが声を挙げながら、奴の放った雷のごとき飛び蹴りを後ろに飛び退くようにして衝撃を受け流しつつ、あたかも直撃を喰らって吹っ飛ばされたかのように地面を転がる。

勿論、受け身はちゃんととって衝撃を最小限に押さえている。


………気分は悪役のスーツアクターやスタントマン。


やられ役が華麗にやられることでヒーローの強さを際立たせるのだけど、正直僕だって………






────魅力のないヒーローたちの引き立て役になるつもりは微塵もないよ。






むしろ、こいつら……ライダー同盟こそが僕たちの『引き立て役』だ。


僕の父さん…………ジニア・ロックディールという『悲劇の主人公』が創造神に反逆し、決して逃れることも変えることも出来ない『宿命』を覆す物語の……ね。






そして、僕の夢は父さんの夢を叶えること。



───父さんという『悲劇のヒーロー』を『新世界の創造』という愉快痛快なハッピーエンドに導くことさ。
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