3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!

「ぐっ…………!」


地面に崩れ落ちるように倒れ混む。

幸い変身は解除されてはいないが、電撃によるダメージが全身に及んでいるのか体に力が入らない。



「どぉして………だよぉぉぉ…………!」


──惨めだった。ただただ惨めだった。


絶対に許せない敵が目の前にいるのに、奴に全く敵わない。

それどころか千花の事すら全く省みずに突っ込んでいってまた同じ過ちを繰り返してしまった。



私は…………愚かだ。




「ホラ、立ちなって。

せっかく手加減してやったんだから、さァ!」


………しかし、敵は容赦などしてくれない。


横たわる私の腹を何度も何度も蹴り続ける。

何度かの蹴りが入ると当たり所が悪かったようで、バイザーの中で嘔吐してしまい、バイザーや首元が撒き散らされた吐瀉物で汚れる。

服が吐瀉物により濡れ、首もとに貼り付く不快感と吐瀉物の臭いによる不快感が頭を支配する。

それでも私には立ち上がる力などもう残されてはいない。


後ろには千花もいるというのに………結局私は…………。



奴は私の体を無理やり立ち上がらせる。




「…………父さんでもないけどさ、お前……本当にイタイよね。

仮面ライダーに勇者に、聖遺物にウルトラマンの力にNS………欲張って節操もなしに力を取り込んで………それで強くなったって勘違いして、粋がってる。

元々相容れることのない力を強引に纏めたんだ………悪影響がない訳、ないだろ?」


「え……悪影響………?」


奴の口から語られる真実。

それはあまりに残酷で、そして……



私がこれまでやって来たことを、これまでの戦いで培ってきたものすべてを否定するものであった。



私はこの時ほど、奴の言葉に耳を傾けたことを後悔したことはなかった。





「…………知らないようだから教えといてあげるよ。

『戦士の力』って一言で言ってもね、相性みたいなのがあるんだよ。

仮面ライダー同士だってそうじゃん。


だから、ガンバライジング社ではね、それを研究してたんだよ。

そして、ガンバライジング社でも“異なる戦士の力の融合”を試みた。


その結果、ガンバライジング社では、ライダーの力の適合率………『戦士の魂ライダーソウル』が高いものが『バーストエボルブ』というガンバライダーを中心に召喚したライダーを自らの力に還元し、自らの強化させることができることを突き止めた。

お前の知る仲間だったら神崎俊哉がそれさ………。


でもね、これでわかったことが更に2つあったんだよ。




それは『戦士の魂ライダーソウルの強さが仮面ライダーとしての素質そのものであること』。


そして、『仮面ライダー以外の戦士の力は戦士の魂ライダーソウルを逆に弱めてしまう』ってこと」



「…………は?」



耳を疑う事実。

こいつは何を言ってるんだ?


これじゃまるで……………




「……元々仮面ライダーの存在しない世界は滅ぶ運命さだめだった。

当然、ウルトラマンのような仮面ライダーと肩を並べるような戦士も例外じゃないさ。


現にそれがきっかけで“タイムジャッカー”という集団が仮面ライダーの世界を統合しようと暗躍した時期があったくらいだ。


まぁ、お前の世界の連中のように仮面ライダーのいる世界と融合することで消滅を免れたやつらもいるけど、それでも本来なら交わることなく消え行く運命だったものだ。

手当たり次第に強引に取り込んで、悪影響がないなんてそんな都合のいい話なんてあるものか。


それに実際お前だって……取り込んだ力に頼りきりだったせいで、コッチの世界に来てライダー以外の力が使えなくなってから、自分が急に弱くなったように感じてただろ?」



「嘘だ…………嘘だぁぁっ!」



吐瀉物でぐちゃぐちゃになった顔が今度は涙や鼻水でぐちゃぐちゃになっていくのが解る。

奴の言葉が本当なら私のやって来たことは全て無駄。

全くを持って意味のないことだったんだ。




「僕は戦った相手の能力は計測するタイプでね…………。

思った通り、お前はライダー同盟………いや、現存するライダーの中で最も戦士の魂ライダーソウルが弱かった。



これでわかった?





────お前、強くなってたどころか……自分で自分を弱くしてたんだよ。
最初からお前は仮面ライダーの才能なかったんだよ。

まぁ、そうじゃなくてもお前は仮面ライダーに向いてないけどさ」



「嘘だ…………嘘だそんなことォォォォォ!!」



私の叫びが森にこだまする。

私は仮面ライダーだった両親に憧れて仮面ライダーになった。



そして、仲間たちから『希望』と呼ばれて私は強くなりたいと願った。

力が欲しいと願った。



そして……たくさんの力をその身に宿した。



でも、それが………私を弱く頼りなくしていたのか。


そして……私を『私の夢』から遠ざけていたのか。




──こんなの…………こんなのって、ないよ。
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