3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!
───
「ノゾミお姉ちゃん………」
「なぁに?」
ここは、私の部屋。
私………ノゾミ・ナカムラと桜ノ宮 千花は、一人用のベッドに横たわりボンヤリとしていた。
千花は私の貸したTシャツに身を包み、私はノエルちゃんから借りたワンピースに着替えて。
うん…………本当は買い出しなんて、嘘。
本当はフェイトさんとも、セッテとも顔を合わせたくなかっただけ。
適当にコンビニに行って、適当にお買い物して帰ってきただけ。
テレビを見ながら、ボンヤリとしていた私の額に柔らかいものがあたる。
千花が私の額にキスをしたのだ。
「………千花」
「アタシ、その……………」
「うーん………あなたの言いたいこと、当ててあげよっか?」
「へっ?」
きょとんとした千花の顔。
たった2週間とちょっとだが、千花と濃密な時間を過ごして私は彼女が本当の妹のように……否、生涯のパートナーのように思えてきた。
もう、千花のことならなんでも分かっているとすら自負している。
「蛍、見に行きたいんでしょ?」
「すっごーい!なんでわかったの!?」
私の予測にぱぁっと表情が明るくなる千花。
その無垢な笑顔は、私とそこまで歳は変わらないはずなのにどこか子供のよう。
「私が魔法使いだから♪」
「えー、何それー!?」
──私は最初、彼女は代替品だと思っていた。
失ったものの代わり。
妹や徐々に会話することも少なくなっていったセッテの代価品。
決して埋まらない心のスキマを埋めてくれるものでしかないと。
でも今は違う。
千花は私の“王子様”。
男の子のように凛々しくて、かっこよくて、私に出来ないことをなんでも出来てしまう。
そして親友ですらくれなかった愛をくれる。
私に優しくしてくれる私だけの“お姫様”……。
……それが彼女……桜ノ宮 千花なのだと。
「冗談だよ冗談。テーブルに雑誌が起きっぱなしになってたから」
「もー!からかわないでよぉ」
頬を膨らませた彼女を見て笑うと、私は風船のように膨らんだ彼女の頬をつつく。
彼女の頬はハリがあって、それでいて柔らかくて、思わず頬擦りしたくなるほどの心地いい感触であった。
ちなみに、私が見た雑誌には姫矢の街の観光スポットを紹介する特集が組まれており、あと半年……冬が過ぎて夏になれば、望葉区の『桜ノ宮川』という小川にて沢山の蛍が見れるのだそうな。
確かに千花と一緒にお風呂に言った時に桜ノ宮川を見てきたが、同じ姫矢の街とは思えないほどに綺麗な川だった。
それにしても『桜ノ宮川』か………千花と同じ名前………。
「ごめんごめん………そんなにガッカリしないでよぉ……ねっ?
蛍、見に行こうよ、それこそ今日でも!」
我ながら無責任だと思った。
本当は夜の闇が怖い癖に……夜にしか見れない蛍を一緒に見に行こうだなんて。
「ノゾミお姉ちゃん……蛍は夏にしか見れないんだよ?」
「へっ?そうなの?」
「………それに、ノゾミお姉ちゃん……その…………大丈夫なの?」
千花もそれを分かっていたのか、私を心配そうに見つめてきた。
彼女の琥珀色の瞳が少しだけ潤んでいたように見えた。
でも、私は…………
「大丈夫!大丈夫に決まってるじゃん!
千花がいるんなら私は大丈夫!」
「ほんと?………ノゾミお姉ちゃん、頼りないからなぁ」
「酷いザマスッ!!」
「ザマスって………ノゾミお姉ちゃん……」
そしてふたりで顔を見合わせて、笑い出す。
ふたりしてベッドに転がり笑いあう。
この世界に来て………いや、生まれてはじめてだったと思う。
こんなに幸せだったのは。
戦いのことも、しがらみも何もかも忘れて、こんな風に笑えたのは。
「千花………約束する。
今年の夏、ふたりで蛍を見に行こう」
「いいの?」
「うんっ。お姉ちゃんがんばるっ!
頑張って暗いの克服するから!」
そうやってふたりでゆびきりをして、抱き合ってキスをして。
そうやって、私たちは互いに約束を交わした。
ちいさな、そして……ささやかな約束。
『桜ノ宮川でふたりで一緒に蛍を見る』と。
千花は大切な『妹』。
それから私の王子様でお姫様。
私は、この約束だけは必ず果たすと誓った。
大切な人たちにやってこれなかった分この子には私なりに愛を与えると……そう誓った。
でも、そのかわされた約束は────。
「ノゾミお姉ちゃん………」
「なぁに?」
ここは、私の部屋。
私………ノゾミ・ナカムラと桜ノ宮 千花は、一人用のベッドに横たわりボンヤリとしていた。
千花は私の貸したTシャツに身を包み、私はノエルちゃんから借りたワンピースに着替えて。
うん…………本当は買い出しなんて、嘘。
本当はフェイトさんとも、セッテとも顔を合わせたくなかっただけ。
適当にコンビニに行って、適当にお買い物して帰ってきただけ。
テレビを見ながら、ボンヤリとしていた私の額に柔らかいものがあたる。
千花が私の額にキスをしたのだ。
「………千花」
「アタシ、その……………」
「うーん………あなたの言いたいこと、当ててあげよっか?」
「へっ?」
きょとんとした千花の顔。
たった2週間とちょっとだが、千花と濃密な時間を過ごして私は彼女が本当の妹のように……否、生涯のパートナーのように思えてきた。
もう、千花のことならなんでも分かっているとすら自負している。
「蛍、見に行きたいんでしょ?」
「すっごーい!なんでわかったの!?」
私の予測にぱぁっと表情が明るくなる千花。
その無垢な笑顔は、私とそこまで歳は変わらないはずなのにどこか子供のよう。
「私が魔法使いだから♪」
「えー、何それー!?」
──私は最初、彼女は代替品だと思っていた。
失ったものの代わり。
妹や徐々に会話することも少なくなっていったセッテの代価品。
決して埋まらない心のスキマを埋めてくれるものでしかないと。
でも今は違う。
千花は私の“王子様”。
男の子のように凛々しくて、かっこよくて、私に出来ないことをなんでも出来てしまう。
そして親友ですらくれなかった愛をくれる。
私に優しくしてくれる私だけの“お姫様”……。
……それが彼女……桜ノ宮 千花なのだと。
「冗談だよ冗談。テーブルに雑誌が起きっぱなしになってたから」
「もー!からかわないでよぉ」
頬を膨らませた彼女を見て笑うと、私は風船のように膨らんだ彼女の頬をつつく。
彼女の頬はハリがあって、それでいて柔らかくて、思わず頬擦りしたくなるほどの心地いい感触であった。
ちなみに、私が見た雑誌には姫矢の街の観光スポットを紹介する特集が組まれており、あと半年……冬が過ぎて夏になれば、望葉区の『桜ノ宮川』という小川にて沢山の蛍が見れるのだそうな。
確かに千花と一緒にお風呂に言った時に桜ノ宮川を見てきたが、同じ姫矢の街とは思えないほどに綺麗な川だった。
それにしても『桜ノ宮川』か………千花と同じ名前………。
「ごめんごめん………そんなにガッカリしないでよぉ……ねっ?
蛍、見に行こうよ、それこそ今日でも!」
我ながら無責任だと思った。
本当は夜の闇が怖い癖に……夜にしか見れない蛍を一緒に見に行こうだなんて。
「ノゾミお姉ちゃん……蛍は夏にしか見れないんだよ?」
「へっ?そうなの?」
「………それに、ノゾミお姉ちゃん……その…………大丈夫なの?」
千花もそれを分かっていたのか、私を心配そうに見つめてきた。
彼女の琥珀色の瞳が少しだけ潤んでいたように見えた。
でも、私は…………
「大丈夫!大丈夫に決まってるじゃん!
千花がいるんなら私は大丈夫!」
「ほんと?………ノゾミお姉ちゃん、頼りないからなぁ」
「酷いザマスッ!!」
「ザマスって………ノゾミお姉ちゃん……」
そしてふたりで顔を見合わせて、笑い出す。
ふたりしてベッドに転がり笑いあう。
この世界に来て………いや、生まれてはじめてだったと思う。
こんなに幸せだったのは。
戦いのことも、しがらみも何もかも忘れて、こんな風に笑えたのは。
「千花………約束する。
今年の夏、ふたりで蛍を見に行こう」
「いいの?」
「うんっ。お姉ちゃんがんばるっ!
頑張って暗いの克服するから!」
そうやってふたりでゆびきりをして、抱き合ってキスをして。
そうやって、私たちは互いに約束を交わした。
ちいさな、そして……ささやかな約束。
『桜ノ宮川でふたりで一緒に蛍を見る』と。
千花は大切な『妹』。
それから私の王子様でお姫様。
私は、この約束だけは必ず果たすと誓った。
大切な人たちにやってこれなかった分この子には私なりに愛を与えると……そう誓った。
でも、そのかわされた約束は────。