3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!
──VALZ SIDE──
「ごめんな………せっかくドラゴンのお姉さんとの感動の再会だってのに」
ノンたんはドラゴンのお姉さん……英華さんの顔を見るや否や、千花と共にそそくさと出ていってしまった。
俺……椿 勝利は英華さんと顔を見合わせる。
「いいの。何か事情があるんでしょうね……」
「だよね………」
まぁ、そうじゃなきゃフツーに感動の再会、だもんな。
最近、明らかに様子がおかしかったもんなノンたん………。
元からひとりでいることが多かったと思うけど、千花がうちで働くようになってからは千花と話してる所しか見たことない。
セッテが寂しそうにしてたから、俺と理緒でセッテを誘って飯食いに行ったこともあったくらいだし。
でも………ノンたんにその事情は流石に聞けない。
やっぱり仲間だって言っても踏み込んでいい領域とそうでない領域はあると思う。
俺自身もそうだし。
恐らくこれは……踏み込んじゃいけない領域なんだ。
それこそ、親友のセッテにすら許されない領域。“ノンたんだけの世界”。
だからといってこのまま放っておくことがいいことだとも思えないし……
うーん……どうしたものか。
ノンたんは暴力的で色気は皆無だけど、あれでも女の子だ。
それもかなりナイーブなヤツ。
繊細で、寂しがりやで、泣き虫で……やっぱり男の俺とは根本が違う。
だから、俺とか勇騎さんとかが自分のやり方で無理やり踏み込んだ所でノンたんの傷を深くするだけだ。
俺もそれで傷ついたことがあるから分かる。
でも、このまま静観……ってのも、無責任だと自覚してる。
だからせめて自分が出来ることとして、ノンたんがあんな感じな以上、代わりにセッテのフォロー……というかセッテの愚痴を聞くのと飯を奢るくらいのことはやってる。
あぁ………理緒みたいに器用に立ち回れたらな。
時々あの子が本当に羨ましくなってしまう。
「でも、下手に踏み込めないよな…………
ノンたんもノンたんなりに何か抱えてるんだからさ」
「そうね………」
俺たちはふたりして、黙りこんでしまう。
───少なくともノンたんの中で“仲間”になれていない俺にはその資格などない。
アイツの………いや、あの子の作った溝を無理やり飛び越えて、あの子の手を引いて走り出す、その資格は。
それは昔からの仲間とはいえ、きっとドラゴンのお姉さん……英華さんも同じ想いなんだろう。
………だから彼女はノンたんを見て何かを察したのに、それを聞けずにいるんだ。
ノンたんを追いかけなかった………いや、追いかけられなかったんだ。
「そうだ……この間のお礼、しなきゃな……。
ドリンク奢るよ。何がいい?」
「珈琲のブラックでお願い………」
「わかった」
──だから俺はせめて自分に出来る事をしよう。
今出来るのはドラゴンのお姉さんに、月音や理緒に教わった覚えたての特製ブレンド珈琲を入れてやることだ。
俺は徐にエプロンを引っ張り出すとエプロンを着け、カウンターへと立つのであった──。
「ごめんな………せっかくドラゴンのお姉さんとの感動の再会だってのに」
ノンたんはドラゴンのお姉さん……英華さんの顔を見るや否や、千花と共にそそくさと出ていってしまった。
俺……椿 勝利は英華さんと顔を見合わせる。
「いいの。何か事情があるんでしょうね……」
「だよね………」
まぁ、そうじゃなきゃフツーに感動の再会、だもんな。
最近、明らかに様子がおかしかったもんなノンたん………。
元からひとりでいることが多かったと思うけど、千花がうちで働くようになってからは千花と話してる所しか見たことない。
セッテが寂しそうにしてたから、俺と理緒でセッテを誘って飯食いに行ったこともあったくらいだし。
でも………ノンたんにその事情は流石に聞けない。
やっぱり仲間だって言っても踏み込んでいい領域とそうでない領域はあると思う。
俺自身もそうだし。
恐らくこれは……踏み込んじゃいけない領域なんだ。
それこそ、親友のセッテにすら許されない領域。“ノンたんだけの世界”。
だからといってこのまま放っておくことがいいことだとも思えないし……
うーん……どうしたものか。
ノンたんは暴力的で色気は皆無だけど、あれでも女の子だ。
それもかなりナイーブなヤツ。
繊細で、寂しがりやで、泣き虫で……やっぱり男の俺とは根本が違う。
だから、俺とか勇騎さんとかが自分のやり方で無理やり踏み込んだ所でノンたんの傷を深くするだけだ。
俺もそれで傷ついたことがあるから分かる。
でも、このまま静観……ってのも、無責任だと自覚してる。
だからせめて自分が出来ることとして、ノンたんがあんな感じな以上、代わりにセッテのフォロー……というかセッテの愚痴を聞くのと飯を奢るくらいのことはやってる。
あぁ………理緒みたいに器用に立ち回れたらな。
時々あの子が本当に羨ましくなってしまう。
「でも、下手に踏み込めないよな…………
ノンたんもノンたんなりに何か抱えてるんだからさ」
「そうね………」
俺たちはふたりして、黙りこんでしまう。
───少なくともノンたんの中で“仲間”になれていない俺にはその資格などない。
アイツの………いや、あの子の作った溝を無理やり飛び越えて、あの子の手を引いて走り出す、その資格は。
それは昔からの仲間とはいえ、きっとドラゴンのお姉さん……英華さんも同じ想いなんだろう。
………だから彼女はノンたんを見て何かを察したのに、それを聞けずにいるんだ。
ノンたんを追いかけなかった………いや、追いかけられなかったんだ。
「そうだ……この間のお礼、しなきゃな……。
ドリンク奢るよ。何がいい?」
「珈琲のブラックでお願い………」
「わかった」
──だから俺はせめて自分に出来る事をしよう。
今出来るのはドラゴンのお姉さんに、月音や理緒に教わった覚えたての特製ブレンド珈琲を入れてやることだ。
俺は徐にエプロンを引っ張り出すとエプロンを着け、カウンターへと立つのであった──。