3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!

「………いいの?大切な人なんでしょ?」


「いいのっ!」


私は千花の手を引き、無理矢理お店の外に出て、お店の裏口へ。


千花と関係を持って以来、私は毎日のように千花とふたりきりでいる。

他の仲間……特にセッテといると後ろめたさを感じてしまい、今まで以上に遠ざけるようになった。


こうなる前もひとりで過ごすことが多かったが、今ではセッテと顔合わせても、1日中会話せずに終わることだって多くなってしまった。



…………私は千花に逃げたんだ。




「本当にいいんだって………私には千花がいるしっ」


「うーん……それならいいんだけどさ」


私は笑顔を作る。

うまく笑えたかは分からないけど、彼女も困ったように笑ってくれた。


それにフェイトさんには言わないけども、神龍フェリア……フェイトさんと、彼女の姉であり、総ての“神”の根元である原初の神………『創世龍』。



──彼女たちが動き出すのが遅すぎたのだ。


私の世界がこの世界に飲み込まれて半年。


80億の人の数だけあるとされる並行世界……

その殆どがこの世界に飲み込まれて、今この瞬間も消えてなくなっている世界もある。


私たちはこの世界の、この街で戦うしか選択肢はないのだけども、私たちも徐々に疲弊していっているのは事実だし、徐々に世論……一般市民も私たちを敵視するようになった。



……ハルシオンの正体がなんだろうともはや関係ない。


どれだけ力を束ねても、もうこの状況を好転させる術はないのだ。



仮にRe:BUILDとの“戦争”に勝利したところで、私たちの世界が元に戻るとは限らないし。




………たまに思うんだ。



原初の神だというのなら、なんでこの事態を事前に察知出来なかったんだ、と。

なんで……私の家族を助けてくれなかったんだ、と。

綺麗事や正論ばかり言って結局は安全な所にいるだけで、何もしようとしない………。


苦しいのは現場の私たちだって言うのに。



…………身勝手なのは分かってる。


でも、何を憎めばいいの?



何も出来なかった自分自身?

アイツの言う“宿命”って奴?




「千花………」


「へっ、ノゾミお姉ちゃ………っ」


私は千花に憤りをぶつけるように、千花を抱き締め、彼女の唇に自身の唇を重ねる。


柔らかくて暖かい感触。

互いの腕が、互いの体に絡み付く。


千花の手が私のスカートの中に潜り込んでいく。





もう、この快楽に溺れてしまいたい。



…………このまま、全てを忘れてしまいたい。
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