3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!
「………ノゾミお姉ちゃん、アタシね」
「どうしたの、千花……?」
寒空の下、千花のぬくもりに身を委ねる私に千花が語りかける。
幼い子供のように彼女の胸に顔を押し付けていた私は顔をあげる。
千花に抱きつき、彼女の顔を見上げる私はもう妹どころか子供にすら見えてしまうのだろうか。
「……昔のこと、何も覚えてないんだよねー。
それこそ、ノゾミお姉ちゃんたちに出会うまでの記憶がスッポリ。
………分かってたのはあのお店……BATTOLERに行き先だけ。
正直、本当に怖かったよ。
自分のことが全く分からないのにBATTOLERの行き先だけしかわかんないんだよ?
行ったところでどうなるかなんて分からなかったから………」
「……………」
どこか遠くを見つめる千花の目。
記憶が全くない……それも自分自身が何者なのか、それすらも全く分からなくて………それがどれだけ恐ろしいかは私にも想像はできる。
でも私が想像しているより、もっと心細くて恐ろしいのだろう。
それでも………この子は必死に耐えているんだ。
「最初は不安で仕方なかったよ?BATTOLERも臨時休業だったし……
でも、こうやってノゾミお姉ちゃんとも出会えたしオールオッケー!ってね」
「………」
──本当にこういうときこそちゃんとした受け答えが出来れば、と思う。
何か気の効いた言葉をかけてあげられればよかったのに、どうも私は肝心な時に言葉が出なくなってしまう。
だからこの世界でも散々誤解も招いてきた。
………本当に自分が嫌になってしまう。
「でも昨日も今日もこうして二人で話してみてわかった。
アタシ、きっとノゾミお姉ちゃんに出逢うために生まれてきたんだって………。
……だから、アタシがノゾミお姉ちゃんの“希望 ”になる」
聖母のように微笑む千花。
その優しい笑顔と、彼女の手のぬくもり。柔らかさ。
何もかも、私が欲していたものだ。
信じていたものも帰る場所も何もかも奪われて私はさ迷い歩いて、この街にたどり着いた。
セッテにすら本心を打ち明けられず、気がつけば私は彼女を避けていた。
極限状態において“人間”はその醜さを露にするという。
そして、それは私も例外ではなく、取り繕うのも限界に達したのだ。
きっと………私の醜い部分を見られればセッテも私から離れていく。
それが怖くて……怖くて仕方ないのだ。
「…………ノゾミお姉ちゃんになら何されてもいいよ」
──熱を帯びた囁き。
ギリギリで踏ん張っていた私の理性を溶かしていく甘い声。
私の中の“ナニカ”が疼きだす。
吐息が熱を帯びて、呼吸が荒くなって、体が火照って………。
───そうだ。私は手に入れたんだ。
“家族の代換品”を。
私の全てを受け止めるくれる存在を…………
だったら…………もう、いいよね。
何をしても…………………
───ドォォォォォォン!!
地面を揺るがすほどの爆発が響き渡る。
私には“その資格”すらないと告げるように。
「っ!!なんでっ………!なんでこんな時に………!」
───泣きたかった。とにかく泣きたかった。
こんなに苦しんだんだから、やっと許されるって………そう思ってたのに。
私は千花から離れると爆発音がした方向へと駆け出す。
「の、ノゾミお姉ちゃん!?」
「千花!先に帰っててっ!」
そうだ………私は戦わなきゃいけない。
私から全てを奪ったあいつらと。
そして、今でも私たちを苦しめるあいつらと。
私は……千花を残し、現場に赴く。
………“敵”を、全て滅ぼすために。
「どうしたの、千花……?」
寒空の下、千花のぬくもりに身を委ねる私に千花が語りかける。
幼い子供のように彼女の胸に顔を押し付けていた私は顔をあげる。
千花に抱きつき、彼女の顔を見上げる私はもう妹どころか子供にすら見えてしまうのだろうか。
「……昔のこと、何も覚えてないんだよねー。
それこそ、ノゾミお姉ちゃんたちに出会うまでの記憶がスッポリ。
………分かってたのはあのお店……BATTOLERに行き先だけ。
正直、本当に怖かったよ。
自分のことが全く分からないのにBATTOLERの行き先だけしかわかんないんだよ?
行ったところでどうなるかなんて分からなかったから………」
「……………」
どこか遠くを見つめる千花の目。
記憶が全くない……それも自分自身が何者なのか、それすらも全く分からなくて………それがどれだけ恐ろしいかは私にも想像はできる。
でも私が想像しているより、もっと心細くて恐ろしいのだろう。
それでも………この子は必死に耐えているんだ。
「最初は不安で仕方なかったよ?BATTOLERも臨時休業だったし……
でも、こうやってノゾミお姉ちゃんとも出会えたしオールオッケー!ってね」
「………」
──本当にこういうときこそちゃんとした受け答えが出来れば、と思う。
何か気の効いた言葉をかけてあげられればよかったのに、どうも私は肝心な時に言葉が出なくなってしまう。
だからこの世界でも散々誤解も招いてきた。
………本当に自分が嫌になってしまう。
「でも昨日も今日もこうして二人で話してみてわかった。
アタシ、きっとノゾミお姉ちゃんに出逢うために生まれてきたんだって………。
……だから、アタシがノゾミお姉ちゃんの“
聖母のように微笑む千花。
その優しい笑顔と、彼女の手のぬくもり。柔らかさ。
何もかも、私が欲していたものだ。
信じていたものも帰る場所も何もかも奪われて私はさ迷い歩いて、この街にたどり着いた。
セッテにすら本心を打ち明けられず、気がつけば私は彼女を避けていた。
極限状態において“人間”はその醜さを露にするという。
そして、それは私も例外ではなく、取り繕うのも限界に達したのだ。
きっと………私の醜い部分を見られればセッテも私から離れていく。
それが怖くて……怖くて仕方ないのだ。
「…………ノゾミお姉ちゃんになら何されてもいいよ」
──熱を帯びた囁き。
ギリギリで踏ん張っていた私の理性を溶かしていく甘い声。
私の中の“ナニカ”が疼きだす。
吐息が熱を帯びて、呼吸が荒くなって、体が火照って………。
───そうだ。私は手に入れたんだ。
“家族の代換品”を。
私の全てを受け止めるくれる存在を…………
だったら…………もう、いいよね。
何をしても…………………
───ドォォォォォォン!!
地面を揺るがすほどの爆発が響き渡る。
私には“その資格”すらないと告げるように。
「っ!!なんでっ………!なんでこんな時に………!」
───泣きたかった。とにかく泣きたかった。
こんなに苦しんだんだから、やっと許されるって………そう思ってたのに。
私は千花から離れると爆発音がした方向へと駆け出す。
「の、ノゾミお姉ちゃん!?」
「千花!先に帰っててっ!」
そうだ………私は戦わなきゃいけない。
私から全てを奪ったあいつらと。
そして、今でも私たちを苦しめるあいつらと。
私は……千花を残し、現場に赴く。
………“敵”を、全て滅ぼすために。