3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!

「さて開店5分前だよ!」


ここで大して負傷しなかった理緒が私とセッテとノエルちゃん、それから千花に声かけをする。

今日は男性陣はほとんど負傷しているので、私たち女性陣だけで店を回すことになった。


どれだけ戦い傷つこうとお客様はこの店に来るし、私たちも生活費を稼がなければならない………これも生きるためだ。



「ノエルちゃん、看板出しといて!」


「わかった」


朝の仕込み作業を終え、ノエルちゃんが『OPEN』とかかれた看板を出すのを確認すると、私は玄関の掃除を始める。



やっぱり飲食店を経営する以上、衛生面は徹底しないとね!




「………ノンたん、ちょっといいか?」


ここで私は勝利くんに呼び出される。


先ほどまでげっそりしてたけど、今はうって変わって眉間に皺を寄せて私を見据える……というかなんか機嫌が悪そうな。



「どうしたの?」


「………言いたくはないけどやっぱり言っとくわ。

流石に『ライダーシステム壊れても魔法でなおせばいい』って発言は勇騎さんの前で絶対に言うなよな」


今日の早朝のアレか………。

確かにちょっと失言だったかも。

でも、なんで急に?



「あのさ………こないだ俺と勇騎さんとノンたんの三人で来栖さんと戦ったじゃん?

あの日の晩な、勇騎さんも相当疲れてたんだろうな………お前のベルトをメンテしてるときに勇騎さんブチ切れてさ………お前のベルト壁に叩きつけて暴れてたんだわ」


「…………は?」


………なんか色々情報量が多すぎて訳がわからない。


勇騎さんが怒った?暴れた?

私のホープドライバーを壁に叩きつけた?


半ばギャグにしか思えない。


私は勝利くんの話が信じられず硬直してしまう。



「お前、勇騎さんに散々言われてたろ?

“ただでさえドライバーに負担かける戦いかたしてるんだから無茶するな”って………


そりゃ再三に渡って忠告無視してベルトに負担かけられ続けりゃ、勇騎さんもキレる……っていうか精神的に参っちまうわ………」


「……………」


うぅ…………何も言い返せない。


勇騎さんはいつも毅然と振る舞い、決して弱音を吐かない人だと思う。

私たちが安心して戦えるように夜中でも私たちのライダーシステムのメンテナンスをしてくれているのは知っている。


昨日だって夜目が覚めた時に、勇騎さんの部屋の方から勝利くんや亨多くんの声が聞こえてきていた。

三人で私たちのベルトを修理したりメンテナンスしてくれてるんだ。


だから私も勇騎さんたちに負担かけないようになるべく負傷したりシステムに負荷がかかる前に決着をつけるよくにしてたんだけど…………全く効果なかったようだ。



「分かってると思うけど、装備関連に関しては今は勇騎さんと亨多だけが頼りだからな………。

俺も最近勉強しながら手伝うようにはしてるけども…………それでもやっぱり人手が足りないんだよ」


「…………」


本当に、なんか悪いこと言ってしまった気がする。


勇騎さんも、勝利くんもこの間の襲撃で負傷に負傷を重ねて、本当なら絶対安静なのにライダーカプセルまで使って私たちのライダーシステムのメンテをしてくれた。


今日だって傷が開いたのか、勇騎さんの体を包む包帯が赤く染まっていた。


そんな絶対安静の怪我人にしかメンテナンスを頼れないほど、私たちを取り巻く状況は日々、悪い方向へと傾きつつある。



「…………ごめん」


「まぁ、軽率な発言は控えるこった。

………寝てる間にオーミネーションに部屋ごと木っ端微塵にはされたくねーだろ?」


「………勇騎さん、もしかしてやろうとしてたの?」


「うん。

オーミネーションに変身してアルティメットとディケイド激情態とムテキとハザードとグランドジオウの力でノンたんを部屋ごと吹っ飛ばそうとしてた………。

助けに来てくれた理緒の色仕掛けで勇騎さん気絶させてどうにかなったけど、俺一人だけじゃ間違いなく止められなかったわ」


「あ、あはは…………」


………マジか……………。


そういえばあの日、なんか勇騎さんの部屋の方が騒がしくて目が覚めたような気がしてたけど私、オーミネーションに部屋ごと吹っ飛ばされる所だったんだ………。


ダメだ…………ここまで来たらなんか、変な笑いが込み上げてくる。



「そうでなくてもお前とセッテのライダーシステムは本当にメンテのことなんかまるで考えてないクソ設計なんだから、あんまり無理するなよな……また俺たちが徹夜しなきゃなんねーし」


「う、うん…………」


…………コレからは気を付けよう。


私は箒を握る手が汗ばむのを感じつつ、そう決意するのでした。まる。
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