3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!

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「んんっ………おはよう………ございます………」


午前8時。
私と千花は着替えを済ませると一階のBATTOLERまで向かう。


はい、どーも。

また語り部をつとめます、ノゾミ・ナカムラです。

………って、私は誰に向かって話してるんだろう?


まぁ、いいや。


今日は千花の初仕事の日。


昨日の夜、寝る前に勇騎さんに無理を言って私が千花の教育係にさせてもらったんだ、


でも、その勇騎さんはというと…………



「ノ………ミ…………」


「どうしたんですか勇騎さん!?

ていうか『ゾ』が抜けてます。

それだと私害虫になっちゃいます」


………なんかゲッソリしてました。

目の下にはクマが出来てて、しかも、心なしか包帯の量が増えているような…………。



「だぁれのせいだと思ってるんだァァァァ………」


「出たよドゥンケル勝利」


………バ勝利もなんかゲッソリしてる。

ま、どーでもいいけど。



「おま……そりゃねーだろ………

ただでさえ無茶苦茶なお前とセッテのライダーシステムのメンテを一晩でやってるんだぞ………

しかも、ノゾミの方はいつも変な所がガタ来てるし………それをバラして見つけて直して組み立てて………ってやってんだよ」


「ふーん………魔法使えばいいじゃん魔法使えば」


「アホか。マリーアントワネットかよお前は………。

“パン食えないならケーキ食え”ってか?

……俺と勇騎さんは魔法なんて使えねータダの人間なんだよ。

それにお前とセッテは魔法使えても魔力回復すんのに一晩かかるんだろ?

せっかくライダーシステムなおしたのに肝心なお前らの魔力が十分じゃなきゃ意味ねーだろうが。

だから俺と勇騎さんと……今勇騎さんの部屋で爆睡してる亨多でなおしたんだよ」


「なるほど………」


なるほど………というが、実際は話の内容の半分くらいは聞き流している。

そのくらい軽い気持ちで私は勝利くんの言葉を聞いていたのが、それを見透かしたかのように勝利くんは急に冷たい視線を私に送ってくる。



「な、なんなのさ………?」


「別に。

ただ仮に魔法が使えるとすりゃ、確かに便利かも知れねーが俺は頼りきりになるつもりはねぇよ?


……力の過信は“慢心”に繋がるからな。


そして、成功体験に伴う慢心は………
人の目を曇らせるどころか盲目にするんだよ」


「ふ、ふーん…………」


“盲目”。実に嫌な響きだ。


この時、私はその程度くらいにしか思わなかった。


だって勝利くんは私の後輩だと思ってたし、私が勝利くんを導く側だとずっと思ってたから。



だから………そんな“慢心”のせいで、勝利くんの言葉の真意を理解出来なかったのだと思う。




───私は本当に愚かだった。
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