3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!

「………やっぱり楽だな」


勝利や俺のエクスライザーを含めたライダーシステムのメンテナンスや修理は2つだけ残して完了した。


強力な力を使用者にもたらし、ライダーを『ライダーを超えた存在』と言わしめるほどの性能を誇るエクスライザー。

しかし、そのエクスライザーはそのハイスペックさに反比例するかのようにその構造は徹底してシンプルなのだ。


簡単な構造の部品や無駄のない基盤の配列。

そして、小型ながらも膨大なエネルギーを発生させるリアクター。


殆どの部品がそこら辺の町工場で作れてしまうほどであり、なんならシステムの根幹を成すリアクター以外なら工夫すれば市販の部品で代用することだって出来てしまうのだ。

これがエクスライザーがRe:BUILDで量産できた最大の理由だ。


だからメンテナンスや修理する俺たちも大助かりなのだ。

現に今回も15分ほどで終わったからな。



「さっ、お前ら………

残ったのさっさと終わらせるぞー」


「はーい………ふぁぁぁ…………」


「へーい………


おぉう………


しっかし………本当にやんの?」



「…………“俺たちだけでも出来る”、じゃなかったのか?」


「うぅ…………でもよ…………」


残ったこの2つのライダーシステムはエクスライザーとはある意味真逆。


残ったのは………ノゾミとセッテのライダーシステムだ。


ノゾミには寝る前にベルトを外させ、セッテからは戦闘妖精の洗礼を受けてダウンしていたので、黙ってライダーブレスの方を拝借してきた。

預かったブレスをメンテナンスモードに切り替え、ゼクターを呼び寄せゼクターをスリープモードにしてからメンテナンスを開始するのだけども……。



「しっかし………本当にやんの?」


「それ、2回目な」


………勝利でもないが、これには閉口してしまう。

ノゾミとセッテのライダーシステムは複数のライダーのテクノロジーを融合させたハイブリッド。


しかし実態はそんな品質のいいものではなく、どちらかと言えばガイアメモリのスロットを強引に後付けしたようなものなのだ。


元々交わることのないライダーのテクノロジーを強引に“合体”させた皺寄せは整備面や耐久性に現れている。

ウィザードライバー型のドライバーやゼクターにガイアメモリのスロットを装着し、ガイアメモリの記憶を解放するための装置のために配線や機構が複雑化しており、これを分解し、部品交換が必要な箇所を探し出すだけでも無駄な時間をとられてしまう。

しかも強引に装着させているため、各部に付加がかかりすぎており、いつライダーシステム自体が破損してもおかしくないほどに不安定なものとなってしまっている。


また、ノゾミやセッテの故郷……所謂魔法世界にしかないであろう材料も何点かあって代用品を探したり作ったりするのに非常に苦労させられた。


それに………セッテはともかく、ノゾミの方はかなり無茶苦茶な使い方をしているのも手伝ってメンテナンスする度にガタが来てる箇所を見つけるのが多かったりする。


同じ希望の魔法使いである操真 晴人(そうま はると)が舞い踊るかの如くスタイリッシュに戦うトリックスターならば、ノゾミはどうみても強力な魔法と能力でゴリ押しするパワーファイター。

本人は自分のライダーシステムを使いこなせている気でいるようだが、実際はスタイリッシュとは程遠い無駄な動きの多さと、耐久性のなさを無視して過剰にエネルギーを放出するせいで余計な付加がライダーシステムに常にかかっており、それが故障に繋がっている。

そしてそれを何度指摘した所でノゾミは付加がかかる前に倒すという風に考えてしまうのか、そのスタイルは全く変わっちゃいない。



むしろ、悪化しているような…………




全く………コイツら他の世界に行ったこともあるとか言ってたが、行った先でライダーシステム故障したらどうしてるんだか。


まぁ………あのじゃじゃ馬娘共が何度ライダーシステムをブッ壊しても俺が直してやるから、せめてライダーシステムの方は整備する奴に優しい設計機構にしてくれ。


ノゾミの場合、武装もメモリも沢山あるんだぞ………こんなもん体もたねーよ!



………おっと、修理する前から思わず愚痴が出てしまった。


まぁ、許してくれよ。


亨多は無傷だが、俺と勝利は満身創痍でメンテナンスしてるんだからさァ………
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