3話:ナカムラ、ヒーロー辞めるってよ……ってそこまでは言ってない!

「……て"い"う"か"………

私"の"歯"治"し"て"よ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"」


地の底から聞こえてくるような、唸り声。

あぁ………歯抜けの間抜……ゲフンゲフン。

…………セッテの声ね。




「………勇騎さん」


「仕方ねぇなぁ………


…………


…………ザイアスペック~」



てっててー♪


……ってやらすなァァァ!!



……失礼しました。気を取り直して。

勇騎さんが何処からともなく取り出したのは片耳に装着するのか、耳にかかるくらいの小型のデバイスと、普通のメガネ。


なんかはじめて見るけど………。




「これは“ザイアスペック”。

俺もはじめて見るデバイスだが、これをメガネと共に装着することで、人間に人工知能と同等の思考速度を与えるんだそうだ。


………ちなみにこないだ通販で買った」



「通販!?通販で買えるんですかそれ!?」



そもそも人工知能と同等の思考速度を与えるって………魔法が発達した世界から来た私には正直なんかよくわからないけどそれって普通に使って大丈夫なものなの?




「ホレ、またやってる」


そんな私の疑問に答える気があるのかないのか。
勇騎さんはテレビを指を差す。

するとテレビでは………




『ジャーパネット♪ジャーパネット♪夢のジャパネットたかた♪』


「…………」


毎度お馴染みの明るい音楽にここに来てから嫌というほどよく見たムービー。


いつもの通販番組だ。


まさか………いや、まさかね。


まさか人工知能と同等の思考速度を与えられるデバイスがこんな通販番組に…………。



『………はいっ!!今日の商品はザイアスペックッッ!!


3年前にZAIAエンタープライズによりリリースされ、今に至るまで新作が出ているこのザイアスペックの最新型っ!

これをメガネと共に装着すればアラ不思議!


なんと人工知能と同等の思考速度があなたのものっっ!!


これでどんな仕事も効率化がはかれちゃいます!!』


「……なっ?言ったろ?」


「えー……………」


えー…………うっそだー……………。


本当にザイアスペックがジャパネットで売ってるよ…………。





「しかも今日も特別価格っ!

ZAIAエンタープライズの天津社長のご厚意によりなんと送料込みで1000円!!

もう一度言いますよ!1000円ですっ!!」



「やっす!!!!!」


いやいやいや。

こっちで数ヶ月働いてこちらの世界の通貨の価値はなんとなくながらも理解してきたけどこれは安すぎない!?


大丈夫!?いろいろと大丈夫なのこれ!?


なんとかステーキを1回我慢すれば3つか4つくらい買えるよ!!



『1000%の頭脳を貴方に…………』


《PRESENTED BY ZAIA……》



「…………うっそでしょ」


「な、すげぇだろ?しかも届くのもドローン郵送だからすごく速いし」



「うーん………本当にソレ、使うんですか?」


「ザイアスペックと俺が継承した“力”を使えば楽勝だ」


そう、勇騎さんは自身の世界で出会ったライダーたちの力を受け継いでいる。

それは変身後の力だけではなく、変身者の素質とかその全ても含めてだ。


だからこそ、あらゆるライダーが集まったこの世界でもリーダーとして戦っていけるわけなんだけども………。


そしてそんな人が人工知能と同等の思考速度を手に入れられれば凄いとは思う。



でもねー…………








「うーん、不安」


「なんでだよ!?」



本体がダシの素だからなぁ………。

ゴメンね、勇騎さん☆
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