2話:魔法少女としてがんばります!……ってどおしてだよォォ!!

「ていうか昨日まで包帯ぐるぐる巻きにしてたのに大丈夫なの!?」


「顔までぐるぐる巻きにされてたら飯食えねーよ」


顔こそ包帯を取り外しているが、勝利くんはやはり怪我が酷いのか慣れない松葉杖をつきながらテーブルまで行き椅子に座る。

そしてその膝の上にはヒメが飛び乗る。


テーブルには私が起きてくるのを見越したようにお味噌汁とご飯、焼き魚が置いてある。


私も自分の席に座ると両手を合わせて



「「いただきます………!」」


なんか勝利くんとハモってしまったが、朝食を食べはじめる。



「昨日の戦い、よほどハードだったんだな………もう11時だ………。

理緒とかセッテとかは出掛けたみたいだぜ?」


「お出かけ?どこに?」


「買い物じゃねぇかな?ムトーナノカドーの方に行ってたみたいだし」


「………そっか」


我ながらそっけない返事しか返せないのは少し申し訳ないと思う。

ふたりで昼食に近い朝食を食べるのだが、やっぱり少し気まずい気がする。


だって私は勝利くんのお父さんを………。




「あっ、美味しい!このお魚!」


「だろ?俺が市場で選んできたんだよ。

なんせ正しい目利きの仕方習ってきましたから!」


「あんたにしては上出来じゃない?」


「お褒めに預り光栄です我が女王」


「料理したのはあんたじゃないでしょ~……」


よく喋る勝利くんのおかげか、美味しいご飯のおかげか。

意外にも他愛のないやり取りが続く。


しかし、この焼き魚は本当に美味しい。

塩味が絶妙だ。

誰が焼いたんだろう?やっぱり理緒かな?




「このお味噌汁は………!ん~~!!

やばっ!なにこれ!すごい美味しい!」


「語彙力死んでんぞ我が女王………

んなぁ~~………!!」


「あんたも語彙力死んでんじゃんっ」


このお味噌汁も美味しい。いや美味しすぎる!

飲んだ瞬間に広がる味噌の旨味。

そして磯の匂い。

まさに海原を駆け巡るその風のように。


具は大根と豆腐などだが……いや、そのシンプルさがかえっていいのかも知れない。



でも………ここまで美味しすぎると不安になることがひとつ。



「………ねぇ」


「ん?どうしたノンたん?」


「これ、ヒューマンのダシっていうオチないよね?」


「や め ろ。

せっかくの飯が不味くなる」


私の一言に勝利くんの顔が一瞬にして青くなる。

なんかそれを見ていたら私までなんか気分が………。


そうだ………我々人類はあの忌まわしき記憶とロストテクノロジーこそいち早く忘れるべきだったんだ。
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