1話:魔法少女始めました!……ってなんのこと!?

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午後3時30分。

ようやくピークが過ぎて休憩が取れる余裕が出来た。



「あーーーー!疲れた!!」


「毎回思うけどハードすぎだよ………」


私とセッテはカウンター席に座ると突っ伏してしまう。


接客業は初めてではないけども、ここまで繁盛しているお店でのお仕事は初めてだ。



「ふたりともお疲れー!ま、これでも飲んでよ!」


「「あ、ありがと…………」」


カウンター越しに理緒は私たちにコーヒーの入ったマグカップを渡す。


…………うん、やっぱりいい香りだ。

ウェズペリアではあまりコーヒーは飲まなかったけど、ここに来てからこのコーヒーの香りも、その苦味も好きになった。


なんか落ち着くんだよね。

ま、仕事とアイツらとの戦いの両立は本当にきついけど。



「ボクもコーヒー飲もうかな」


自分の分のコーヒーを用意すると、理緒も私の隣にやって来て座る。


それにしても理緒、あれだけの激務をこなしてるのに、顔色ひとつ変えないとかヤバすぎでしょ………。



「……ふたりとも、少しはここでの生活慣れた?」


コーヒーの香りを楽しみつつ、コーヒーを口に含むと、理緒が話しかけてくる。


私は頷くと口に含んだコーヒーを飲み込む。



「…………うん。色々あったけど慣れたよ?ね、セッテ?」


「そうだよね。組織と戦いながらここのお仕事するのは結構大変だけども、それでも毎日楽しいよ」


「そっか……。それならいいんだ」


理緒は自分のコーヒーの入ったマグカップを両手で包み、ふー、ふーとコーヒーを冷まし、コーヒーを口に含み飲み込むと片手をマグカップから離し、私の頭を撫でる。


歳はそんなに変わらない、て言うか私と同じ歳だったはず。


でも、なんだろう。
この懐かしい感触とこの包容力は。



子供の頃、よくこうやって撫でてもらったっけ。
なんか……無性に会いたくなってきたな。
お父さんとお母さんに。それから妹に。




────もう、二度と会えないみんなに。
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