完結編

これは怒りか、悲しみか。

いや、違う。

俺の頭を急激に冷やし、クリアにしたこのどす黒い“何か”はそんなものじゃない。


…………これは“憎悪”。


ずっと、俺が………俺たち駅の子が大人たちに、アンゲロスに、そして世界そのものに抱いてきた感情。


そして、俺たちの命の動力源だ。



俺の憎悪に答えるように、エクスライザーがこれまでにみたこともないような目映い光を放つ。





「……うぅぅ…………アァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


憎悪から来る、その衝動に身を任せ叫ぶ。

俺の中に沸き上がる憎悪はエクスライザーにより増幅され、文字通り大地と空を裂く。


エクスライザーから放たれたエネルギーが地割れを起こし、俺の周囲の空間をガラスを割るかのように砕いた。



そしてエクスライザーの放った光が2つのカプセルを形作った。


──時空を破壊するほどの力を持つ2人のライダーの力を宿したカプセルだ。






《ディケイド………!》



《ジオウ!!》



起動したカプセルが元々填まっていたカプセルを弾き飛ばし、カプセルホルダーに装填される。

更にはエクスライザーがひとりでに起動し、カプセルを読み込んだ。


俺の背後には巨大な時計を模したオブジェが、裂けた大地からは蒼き炎が揺らめき、砕けた空間からは漆黒の醜悪な怪物が蠢き、俺を呑み込むかのようにしきりにその腕を伸ばしているのがわかった。


だが、それがなんだと言うのだ。


俺は、意を決して覚悟と共に“その言葉”を口にした。





「…………変身…………ッ!!」




《ファイナルデュアルフュージョン!ヴァルツ!!

ディメンションブレェェェェェクッッ!!》



《最大最強!時空の破壊者!

総てを破壊する魔王ォォォ!!》



時計の針が高速回転し、零時を差した後、10時10分を差す。

それと同時に蒼炎が俺の体を飲み込み、20人の平成ライダーたちの幻影が召喚され俺の体に折り重なる。


“秘密の友人”が教えてくれた20人の平成ライダーたち。


まさかこんな形でその全員の力を借りることになろうとは。



アイツは…………“月音”は………きっと怒るだろうな。

視界が赤く染まると、俺の頬に何かが伝う。



もう、それが何かすら分からないけど。



次に黄金のリングが俺の体の周囲で旋回を初め、空間を裂いて現れた怪物たちがリングに分解されると鎧となる。



やがて完全に鎧が形成されれば、リングが弾けとび変身が完了した。





「か、勝………利………なのか…………?」


「椿…………!」


2人が建物の外から出てきて俺の姿を見て絶句する。


それもそうだろう。
俺の憎悪を反映させたような醜い姿に変身したのだから。


ディケイドやジオウのマゼンタが色褪せ汚れ、血のような赤に染まったような装甲。

古いアンティーク時計を模したような装甲の装飾。
怒りに任せて何度も何度も突き刺したように疎らに配置されたバーコードを模した“通行手形”。


真っ赤に燃える複眼。


そして胸部の装甲を差し抜くように配置されたふたつの“Ⅹ”の文字。



『ジオウ』と『ディケイド』。


全てのライダーの力を統べ、時空すら破壊するほどの力を持つ2人のライダーの力を継承したその姿の名は『ディメンションブレーク』。



その醜い姿は俺の“嘆き”。“恨み”。“憎悪”。

いや………そんなモノじゃない。



この姿は、“俺そのもの”。



自らの宿命を呪いながら、世界を恨みながら生きてきた俺の心の闇そのものだ。
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