完結編
───『駅の子』。
6年前のあの災害で家族を亡くした俺たちはそう呼ばれていた。
引き取り手がおらずホームレスになった俺たちは、姫矢市の駅を根城にしていたことからそう呼ばれていた。
駅の前で物請いしたり、盗みを働いたり、女の子だったら文字通り体を売ったり………。
本来の首都である東京が既に機能しておらず、姫矢の街が事実上この国の経済の中心であったため姫矢の街の復旧が最優先された背景もあり、駅の子による犯罪や売春は増加の一途を辿った。
それだけではない。
アンゲロスという怪物たちによってもたらされた大量虐殺が行われ、まだ生き残った市民がいたにも関わらず、姫矢の街は封鎖されたのだ。
アンゲロスの正体を知っていれば“当然のこと”。
しかし、なにも知らない市民たちの間では不安や恐怖が蔓延し、疑心暗鬼に陥ったものたちが暴動を起こしていたのも事実。
だからこそ、だ。
事実上、俺たち『駅の子』がその市民たちの怒りを沈める生け贄とされたのだ。
大人たちの暴力によって死んだ仲間も、病気にかかって医者にも看てもらえずに死んだ仲間もいた。
そして、俺たちの駅の子としての生活は、“先生”……ジニア・ロックディールに拾われるまでの数年間続いた。
「なんでだよ…………」
俺は立ち上がるとフラリフラリと強化ガラスの向こう側にいる肉塊たちに近づいていった。
肉塊たちと目が合う。
すると、肉塊たちは蠢くようにして俺の側にやってくる。
デミグラスソースのような茶色の体液を滴らせながら這うようにして動く様はナメクジのよう。
そして俺が強化ガラスに手を添えると、肉塊のうち一体も、俺の手に自身の“手”を重ねるように、その体の一部を伸ばす。
べちょっという音が響き渡った。
………もう、どこが腕かどこが頭かなんて判別出来ない。
目の前に映る肉塊の姿が滲んで見えた。
「ショ、ショ…リ……………ニイ、チャン……………」
「………カズ……?お前、カズなのか!?」
孟や亨多と出会うより前、俺もまだ駅の子と呼ばれていた頃、ひとりだけ俺の事を兄貴のように慕ってくれたやつがいたんだ。
一緒にいられた時間は短かったけど、それでもこいつのことは今でも覚えてる。
なんで、こんな再会になっちゃったのかな………?
「…………カズくんという名前でしたか、彼は。
いやぁ………彼は惜しいところまで行ったのですよ。
もう少しでアークアンゲロスになれたはずなのに、ここに運ばれて来た頃に衰弱していたのが仇になって体の細胞を維持出来なくなった。
ですが、貴重なサンプルには変わりはない。
これで部下たちも困らなくて済む。
……ホルマリン漬けの瓶に貼るラベルの名前に」
「ふざけるなァァァァァァァァァァ!!」
「待て勝利!」
「うるさいっ!!」
今の俺では奴に勝てない事も、BATTOLERに残した仲間が人質にとられている以上、下手に変身出来ないので、勇騎さんは怒り狂う俺を止めようとするのだが、俺は勇騎さんを突き飛ばしてしまう。
そして俺はエクスライザーを構える。
「おやおや………素晴らしい。その気迫、その殺気……。
やはり君は追い詰め甲斐がある。
では………一騎討ちといきましょうか。ただし」
ナイメアが指をならすと、勇騎さんと将さんの二人は仮面の大男に拘束されてしまう。
「「ぐっ………!」」
「リベル、それからクロス………この戦いに泥を塗るのなら、貴殿方の拠点に残してきた仲間がどうなるか……分かってますね?」
「てめぇ………!!」
あくまでも俺………否、ヴァルツとの一騎討ちを望む戦闘狂。
戦闘狂が部外者の乱入を許す訳もなく、勇騎さんや将さんが変身をした瞬間、仮面の大男にBATTOLERを襲撃させるつもりでいるのだろう。
勇騎さんが、ナイメアを睨む。
怒りに震える目。奴への怒りは勇騎さんの方が明らかに上だ。
しかし………
「わりぃ………勇騎さん、将さん。手を出さないでくれ。
アイツだけは……俺が………!」
《リヒト!》《ドゥンケル!》
「…………絶対に倒す!!変身!!」
《デュアルフュージョン!ヴァルツ!ベーシック!》
《光と闇のマリアージュ!今こそ目覚めよ最強のライダー!!》
光と闇が俺の体を包む。
そしてそれらが鎧に変われば、インナースーツにエネルギーが蓄積され、赤く輝く。
こうして完了される“変身”。
黒き鎧に燃える赤き瞳の戦士こそが俺が最初に変身したヴァルツの姿。
そして………これが奴への死刑宣の合図。
そして………第二ラウンドの幕開けだ。
「…………オォォォォォォォ!!」
拳を握りしめると俺は、奴目掛けて走り出していった。
6年前のあの災害で家族を亡くした俺たちはそう呼ばれていた。
引き取り手がおらずホームレスになった俺たちは、姫矢市の駅を根城にしていたことからそう呼ばれていた。
駅の前で物請いしたり、盗みを働いたり、女の子だったら文字通り体を売ったり………。
本来の首都である東京が既に機能しておらず、姫矢の街が事実上この国の経済の中心であったため姫矢の街の復旧が最優先された背景もあり、駅の子による犯罪や売春は増加の一途を辿った。
それだけではない。
アンゲロスという怪物たちによってもたらされた大量虐殺が行われ、まだ生き残った市民がいたにも関わらず、姫矢の街は封鎖されたのだ。
アンゲロスの正体を知っていれば“当然のこと”。
しかし、なにも知らない市民たちの間では不安や恐怖が蔓延し、疑心暗鬼に陥ったものたちが暴動を起こしていたのも事実。
だからこそ、だ。
事実上、俺たち『駅の子』がその市民たちの怒りを沈める生け贄とされたのだ。
大人たちの暴力によって死んだ仲間も、病気にかかって医者にも看てもらえずに死んだ仲間もいた。
そして、俺たちの駅の子としての生活は、“先生”……ジニア・ロックディールに拾われるまでの数年間続いた。
「なんでだよ…………」
俺は立ち上がるとフラリフラリと強化ガラスの向こう側にいる肉塊たちに近づいていった。
肉塊たちと目が合う。
すると、肉塊たちは蠢くようにして俺の側にやってくる。
デミグラスソースのような茶色の体液を滴らせながら這うようにして動く様はナメクジのよう。
そして俺が強化ガラスに手を添えると、肉塊のうち一体も、俺の手に自身の“手”を重ねるように、その体の一部を伸ばす。
べちょっという音が響き渡った。
………もう、どこが腕かどこが頭かなんて判別出来ない。
目の前に映る肉塊の姿が滲んで見えた。
「ショ、ショ…リ……………ニイ、チャン……………」
「………カズ……?お前、カズなのか!?」
孟や亨多と出会うより前、俺もまだ駅の子と呼ばれていた頃、ひとりだけ俺の事を兄貴のように慕ってくれたやつがいたんだ。
一緒にいられた時間は短かったけど、それでもこいつのことは今でも覚えてる。
なんで、こんな再会になっちゃったのかな………?
「…………カズくんという名前でしたか、彼は。
いやぁ………彼は惜しいところまで行ったのですよ。
もう少しでアークアンゲロスになれたはずなのに、ここに運ばれて来た頃に衰弱していたのが仇になって体の細胞を維持出来なくなった。
ですが、貴重なサンプルには変わりはない。
これで部下たちも困らなくて済む。
……ホルマリン漬けの瓶に貼るラベルの名前に」
「ふざけるなァァァァァァァァァァ!!」
「待て勝利!」
「うるさいっ!!」
今の俺では奴に勝てない事も、BATTOLERに残した仲間が人質にとられている以上、下手に変身出来ないので、勇騎さんは怒り狂う俺を止めようとするのだが、俺は勇騎さんを突き飛ばしてしまう。
そして俺はエクスライザーを構える。
「おやおや………素晴らしい。その気迫、その殺気……。
やはり君は追い詰め甲斐がある。
では………一騎討ちといきましょうか。ただし」
ナイメアが指をならすと、勇騎さんと将さんの二人は仮面の大男に拘束されてしまう。
「「ぐっ………!」」
「リベル、それからクロス………この戦いに泥を塗るのなら、貴殿方の拠点に残してきた仲間がどうなるか……分かってますね?」
「てめぇ………!!」
あくまでも俺………否、ヴァルツとの一騎討ちを望む戦闘狂。
戦闘狂が部外者の乱入を許す訳もなく、勇騎さんや将さんが変身をした瞬間、仮面の大男にBATTOLERを襲撃させるつもりでいるのだろう。
勇騎さんが、ナイメアを睨む。
怒りに震える目。奴への怒りは勇騎さんの方が明らかに上だ。
しかし………
「わりぃ………勇騎さん、将さん。手を出さないでくれ。
アイツだけは……俺が………!」
《リヒト!》《ドゥンケル!》
「…………絶対に倒す!!変身!!」
《デュアルフュージョン!ヴァルツ!ベーシック!》
《光と闇のマリアージュ!今こそ目覚めよ最強のライダー!!》
光と闇が俺の体を包む。
そしてそれらが鎧に変われば、インナースーツにエネルギーが蓄積され、赤く輝く。
こうして完了される“変身”。
黒き鎧に燃える赤き瞳の戦士こそが俺が最初に変身したヴァルツの姿。
そして………これが奴への死刑宣の合図。
そして………第二ラウンドの幕開けだ。
「…………オォォォォォォォ!!」
拳を握りしめると俺は、奴目掛けて走り出していった。