完結編
「「「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"……………!」」」
「なんだよ、これ…………ッ!」
………それは、吐き気を催すものであった。
眼前に飛び込んできたものは、“肉塊”。
スライムのようにドロドロに溶けた体に、ギョロっと剥いた目玉、口のようなものからは歯のようなものが覗いている。
そんな肉塊が、強化ガラス越しに何体も何体も蠢いているのだ。
「………アンゲロスの“なりそこない”といえばいいのでしょうか。
我々、無悼財団は姫矢グループから受け取ったノエル・ロックディールの血液を元に、より強力なアンゲロスを産み出すための薬品を作り上げた。
理論上、人間をアークアンゲロス以上のアンゲロスに変貌させることも、既存のアンゲロスを進化させることも可能でした。
そして、適合することができれば、ハルシオンの力の全てを受け止めるだけの体を手に入れることができるはずだったのです。
しかし………彼らは適合しなかった。
その結果がこの醜い姿です。
ですが……それも2年前にハルシオンの不死性を受け継いだものが現れたことで全てが実を結んだのですが」
まるで商品のプレゼンでもするかのように事務的に話し終え、そのおぞましい光景を見るとナイメアは薄ら笑みを浮かべた。
将さんも、勇騎さんも……そして俺もその光景に戦慄するばかり。
「てめぇ!!」
俺は立ち上がると奴の胸ぐらを掴み殴りかかる。
しかし、奴はいとも簡単に俺の拳を受け止めた。
………ていうか、待てよ。
俺の仲間って、なんだよ…………?
この目の前の肉の塊と俺が…………
仲間の、はず……………なんて、
あり、え………………ない…………。
握りしめた拳が震えると、奴の口角がつり上がる。
「おやおや……まさかご機嫌を損ねてしまうとは。
ご安心ください。
もちろん私自らの体にも同様の実験を施しましたよ。
しかし、私ひとりの体ではどうしても効率が悪かったのです……。
何せ、人間ひとりぶんの体ですからね。
ですが………幸いにも、血の聖誕祭後の姫矢の街には都合のいい被験体には困らなかったァ……!」
邪悪な笑みに歪む奴の顔。
妖しく光るヴァイトップ。
寒気がする。
体が震え、歯がガチガチと音を立てる。
急に吹き出した冷や汗がシャツをびっしょりと濡らしていった。
そして奴は俺を嘲笑うかのように俺の髪を掴み、ぐっと顔を近づける。
奴の顔は、この世の人間とは思えないほど不気味で恐ろしい笑みに歪んでいた。
────わかってしまった。
だって俺だって………!
「椿 勝利ィ………!
元々『駅の子』として過ごしていた君には分かる筈だァ…………!
ここにいる肉塊共は………二束三文の命。
汚らわしい子供。
卑しい嫌われもの。姫矢の“恥”。
根絶やしにされたどころで誰も困らない、そんな無価値な存在………!」
「あ…………あぁ……………っ!」
あり得ない。
あり得ない………
そんなこと、あってたまるかよ!
だってそうだろ?
俺たちはあの災害で家族を失って、ドブネズミのように暮らしてきた。
盗みもやって、体も売って………それでも生きていくしかなかった。
身勝手な連中の暴力に怯えて、『駅の子』『汚い子』と罵られて………それでも必死に生きてきたんだ。
病気で死んだ奴もいた。
理不尽に殺された奴だって。
それでもいつか報われるって……
希望はあるって信じて生きてきたのに、こんな最期なんて………あんまりだろ。
「そう………君の“仲間”。
あの災害で家族を失った孤児………俗に言う『駅の子』たちですよォ……………!
フハハハハハハハハ………フハハハハハハハハ!!」
目の前が真っ暗になった。
腰から力が抜けて地面に崩れ落ちた。
「勝利!!」
「椿!!」
ふたりが駆け寄ってくる。
でも、もう立ち上がれやしない。
…………そう、あの肉塊たちは確かに“俺の仲間”だったのだ。
「なんだよ、これ…………ッ!」
………それは、吐き気を催すものであった。
眼前に飛び込んできたものは、“肉塊”。
スライムのようにドロドロに溶けた体に、ギョロっと剥いた目玉、口のようなものからは歯のようなものが覗いている。
そんな肉塊が、強化ガラス越しに何体も何体も蠢いているのだ。
「………アンゲロスの“なりそこない”といえばいいのでしょうか。
我々、無悼財団は姫矢グループから受け取ったノエル・ロックディールの血液を元に、より強力なアンゲロスを産み出すための薬品を作り上げた。
理論上、人間をアークアンゲロス以上のアンゲロスに変貌させることも、既存のアンゲロスを進化させることも可能でした。
そして、適合することができれば、ハルシオンの力の全てを受け止めるだけの体を手に入れることができるはずだったのです。
しかし………彼らは適合しなかった。
その結果がこの醜い姿です。
ですが……それも2年前にハルシオンの不死性を受け継いだものが現れたことで全てが実を結んだのですが」
まるで商品のプレゼンでもするかのように事務的に話し終え、そのおぞましい光景を見るとナイメアは薄ら笑みを浮かべた。
将さんも、勇騎さんも……そして俺もその光景に戦慄するばかり。
「てめぇ!!」
俺は立ち上がると奴の胸ぐらを掴み殴りかかる。
しかし、奴はいとも簡単に俺の拳を受け止めた。
………ていうか、待てよ。
俺の仲間って、なんだよ…………?
この目の前の肉の塊と俺が…………
仲間の、はず……………なんて、
あり、え………………ない…………。
握りしめた拳が震えると、奴の口角がつり上がる。
「おやおや……まさかご機嫌を損ねてしまうとは。
ご安心ください。
もちろん私自らの体にも同様の実験を施しましたよ。
しかし、私ひとりの体ではどうしても効率が悪かったのです……。
何せ、人間ひとりぶんの体ですからね。
ですが………幸いにも、血の聖誕祭後の姫矢の街には都合のいい被験体には困らなかったァ……!」
邪悪な笑みに歪む奴の顔。
妖しく光るヴァイトップ。
寒気がする。
体が震え、歯がガチガチと音を立てる。
急に吹き出した冷や汗がシャツをびっしょりと濡らしていった。
そして奴は俺を嘲笑うかのように俺の髪を掴み、ぐっと顔を近づける。
奴の顔は、この世の人間とは思えないほど不気味で恐ろしい笑みに歪んでいた。
────わかってしまった。
だって俺だって………!
「椿 勝利ィ………!
元々『駅の子』として過ごしていた君には分かる筈だァ…………!
ここにいる肉塊共は………二束三文の命。
汚らわしい子供。
卑しい嫌われもの。姫矢の“恥”。
根絶やしにされたどころで誰も困らない、そんな無価値な存在………!」
「あ…………あぁ……………っ!」
あり得ない。
あり得ない………
そんなこと、あってたまるかよ!
だってそうだろ?
俺たちはあの災害で家族を失って、ドブネズミのように暮らしてきた。
盗みもやって、体も売って………それでも生きていくしかなかった。
身勝手な連中の暴力に怯えて、『駅の子』『汚い子』と罵られて………それでも必死に生きてきたんだ。
病気で死んだ奴もいた。
理不尽に殺された奴だって。
それでもいつか報われるって……
希望はあるって信じて生きてきたのに、こんな最期なんて………あんまりだろ。
「そう………君の“仲間”。
あの災害で家族を失った孤児………俗に言う『駅の子』たちですよォ……………!
フハハハハハハハハ………フハハハハハハハハ!!」
目の前が真っ暗になった。
腰から力が抜けて地面に崩れ落ちた。
「勝利!!」
「椿!!」
ふたりが駆け寄ってくる。
でも、もう立ち上がれやしない。
…………そう、あの肉塊たちは確かに“俺の仲間”だったのだ。