完結編

「……で、なんでそのアンゲロスのお前が俺たちをここに誘ったんだよ?」


将さんは奴を見据えると静かに訪ねる。

俺にだってナイメアなる男がフツーにお茶に誘ったわけではないことくらい想像がつく。



「目的はただひとつ。
貴方たち……特に椿勝利、貴方にとても良い商談が……単刀直入に言いましょう。

我々に貴方たちがこれまで手に入れてきたライダーカプセルを売っていただきたい。


貴方たちが満足するだけの資金は用意しましょう」


そういうと側近であろう仮面の大男がアタッシュケースを開く。

そこにはテレビや映画でしか見たこともないような量の札束。


相手が相手なら金に目がくらんで喜んでカプセルを渡していただろう。

だが………今は条件が違う。



「…………そのカプセルを、何に使うんだよ?」


相手はアンゲロス。

しかも沢山人を斬り殺している奴だ。


どれだけ金を積まれても、そんな奴にライダーカプセルを渡すことなど不可能だ。



「『ハルシオン』にたどり着き、私が新たなハルシオンとなる………その足掛かりとなって頂きます」


「………!」


「『夢幻龍ハルシオン』と『創世龍ジェネシス』。

この世界で語り継がれる2人の原初の神。

その存在はまさに、陰と陽。
鏡合わせの虚像と実像………。
常にその力は拮抗している。


ハルシオンの力は、この世に住む人間の数だけあるとされる並行世界を文字通り全て食い尽くし、更に力を蓄える途方もない力を秘めている。


私はハルシオンの力を手に入れ、創世龍を打ち倒す。

その時初めて私の餓えは満たされる」



「………狂ってる」



───やっぱりだ。


やっぱりアンゲロスはどいつもこいつも狂ってる。


自分の渇望を叶える為なら手段は選ばない。

その過程でどれだけの被害が出ようとも意に介さない。



『胸糞悪い』。

その一言でコイツを殺すには十分だ。



「………ですが、貴方は私の商談を断れませんよ。

貴方にたどり着くまでに貴方の仲間たちがその礎となったが故に」


「は…………?」


『交渉は決裂』。

その言葉を告げるより先に、奴が口を開く。


こんな無茶苦茶な要求を突きつけておいて、到底信じられない言葉を投げ掛ける。




「「「なっ…………!?」」」


───その瞬間であった。


俺たちの目の前の壁が展開し、俺たちの目の前に“ソレ”が飛び込んできたのは…………。
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